一番を目指して躍起になるチームのアイデアは大して面白くならない

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。今日は、一番を目指しているチームのアイデアは面白くならない、というテーマでブログを書きます。

きのうワークショップが目指す成果物は「正解」よりも「納得解」という記事を書いている最中、そう言えばこっちも書いておきたいなあと思ったのです。

目次

合宿などではコンテストの開催が定番

学生向けの合宿など時間が潤沢にあるワークショップでは、ラストにチーム発表の時間を設けて、審査員が順位をつけるコンテスト形式で運営をすることがよくあります。けっこう盛り上がりますし、参加者も本気でアウトプットを出そうと取り組んでくれることが多いものです。良質な協働体験が生まれて、チームメンバーとの距離がぐっと近づくという好作用もよく起こります。

チームでの発表は、とてもわかりやすい形で参加者の学びが披露されるため、主催者にとっても有り難い時間です。ワークショップの依頼主が見てくれたら、即座にワークショップの成果を感じていただくことができます。また、動画を撮っておけば、良い広報素材にもなってくれます。

コンテスト形式でワークショップを進めるにあたり、参加者の学び、依頼主の満足という2軸を両立するためには、各チームがテーマに対しての深い洞察を持ち、示唆に富むユニークなアイデアを考えられているかどうかがポイントです。

ワークショップデザイナーは、こうした状態へと参加者がたどり着けるようにワークショップをデザインし、適切なファシリテーションを通じて多様な視点・広い視野・高い視座を垣間見せていくことが求められます。

ところが、こうした積み重ねを台無しにしてくる事象もまた、ワークショップにはつきものなのです。そのうちのひとつが、記事の冒頭に書かせていただいた「一番を取るゾ!」という意欲が過度に高すぎるチームの出現です。

この一番至上主義チーム、やる気はめっぽう高いのですが、結果が伴わないことが多いのですよね。

一番になりたいチームは浅い対話に囚われがち

というのも、一番になりたいチームは、何かとボタンを掛け違えてしまっているのです。

先に書かせていただいたように、良い発表に欠かせないのは、テーマに対する深い洞察です。これは加者それぞれが自分の意見を共有し、お互いの違いや類似点を整理して、チームとしての共通了解を作り出していく対話の過程によって、徐々に深度を増していきます。時には対立構造に陥ったり、簡単には答えの出せない状況に直面したりもしますが、そのカオス状態を突き抜けた瞬間、良い発想の跳躍や新結合が生まれるものです。この点については、以前にこのような記事を書いていますので、興味があればご一読ください。

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ところが一番になりたいチームは、こうした対話を回避しがちで、ただただ面白いアイデアを生み出すことに躍起になってしまいます。洞察を深める対話は時間がかかるうえに、このやりとりから何が生まれるのかが、対話の最中には決して分かりません。

ワークショップは時間が限られているので、一番を獲る発表を作るためには、遠回りを避け、最短距離で進みたくなるのでしょう。アイデアを考えるスタンスもイマイチで、会場の他チームよりも優れているかどうかが意思決定の基準になってしまうため、ごく浅い深度で、人の耳目を集めやすいアイデア探しだけに奔走してしまうのです。その結果、外見だけが美しい、ハリボテのアイデアが完成します。

また、こうしたチームの発表は寸劇を用意してみたり、ポーズを統一してみたりと、極めてパフォーマンス的です。それがアイデアの底の浅さを助長し、逆に評価を下げてしまうことを、当事者たちはあまり気づけていないように見えます。

もちろん一番を目指すチームが全部このような状況に突っ込んでしまうわけではありませんが、体感としては、かなりの確率です。

一番を獲りたい欲求を加熱させ過ぎないスタンスとデザインが重要

誤解のないように書いておくと、参加者それぞれが良い発表を目指して切磋琢磨することはウェルカムです。この相互作用によって、投げ出したくなっても土俵際で踏み止まれたり、より一歩踏み込んだ工夫が生まれたりすることは、あえて詳しく書くまでもありません。

ただ、せっかく長い時間をかけてアイデアを作るための下準備をしてきたのに、一番を獲りたいがためだけにまるで本質的ではないアウトプットが出てきてしまうのは、私はワークショップ全体にとっての損失だと思っています。

深く思考する機会を失ってしまった参加者にとってもそうですし、身の無い発表を聞かされる聴講者にとってもメリットがありません。そのためワークショップでコンテストを開催する際は、参加者の「一番を取りたい承認欲求」を加熱させ過ぎない匙加減や動機づけが大切です。

中には「優勝チームは東京に招待」などの魅力的な商品が設定されていることもあり、参加者の欲求が駆り立てられる真っ当な理由が存在する場もありますが、どのような状況においても、ワークショップの目的は協働体験を通じた学びの創出です。

小さなことですが、この点を参加者へメッセージし続けることができているかどうかは、大きな差を生みます

そのうえで、どのような姿勢で取り組んだチーム、どのような項目が練りこまれているチームが評価されるかを明示しておくことが、暴走を防ぐガードレールになります。これらが曖昧な場ほど、表面だけの奇抜なパフォーマンスが横行します。

中にはただただ参加者を煽ってパフォーマンス競争をさせている方もいるなあと感じますが、その経験って、参加者の今後の人生にどう活きるのでしょう。

私は、参加者が自然と深くまで考えたくなる場をデザインしておくことが、ワークショップデザイナーの責務だと思うんですよね。なぜなら、意見や価値観が違う他者と協働して、お互いを理解しあい、深く思考し、アウトプットを共創できた成功体験は、いつの時代でも活かすことができる、普遍的な営みだと思うからです。

ということでなかなか偉そうなことを書いてしまったので、最後に恥ずかしい過去を書いておきますと、私は一番を獲りたくて暴走する側の人間でした(苦笑) 私がワークショップで想定する最悪の参加者は、だいたいが「過去の私」か「今の私」なんですよねぇ。

この話は、いつか違う記事で書いてみたいと思います。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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