知らない町でワークショップを開催する際の貴重な情報源「町の100年史」

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。昨日は出張で北海道美唄市に初訪問でした! 11月にも関わらず何十センチもの雪が積もる大寒波で、子どものようにはしゃいでしまいました。北海道の自然はスケールが違いますね! 今から次回の美唄訪問がとても楽しみです。

さて、以前知らない土地でワークショップを開催する日は「町歩き」から情報を感じるという記事を書いたのですが、こちらに補足でもう1つご紹介しておきたい情報収集手段があります。表題に掲げた「町の100年史」を読むことです。

ほとんどの自治体では発足からの年表や地域の100年史、人口など各種データの推移史などを編纂していて、公民館などで閲覧することができます。パンフレット等では現在のことしか知り得ないのですが、これらの資料からは町の成り立ちが良くわかり、脈々と受け継がれてきたであろう地域固有のメンタリティを類推することや、何を誇りとしてきたか、あるいは恥じてきたかを感じることに大変有効なのです。そのため私は行く先々の自治体で100年史を読んでいます。

目次

数百年前の出来事も地域のメンタリティへ根強く影響している

美唄市の年表は「1669年 シャクシャインの戦い」から始まっていました。400〜500年も前の、教科書でしか見たことがない出来事ですが、思わず好奇心が湧きました。なぜなら私は、当時の人々にとってインパクトが大きかった史実は、後の人々へ与える影響もまた大きく、かつ持続効果が長いと感じているからです。

こう感じているのは、東北地方で暮らしている中で、このようなケースを何度も目の当たりにしてきたからです。例えば戊辰戦争によって生じた勝者と敗者の圧倒的な差は、今でも東北の人々の感情を沸き立たせ、パラダイムの形成につながっていると感じることがよくあります。

シャクシャインの戦いは、最終的にシャクシャインがだまし討ちされて幕を閉じたそうなのですが、上記の観点から見ると、美唄に住んでいてる方がこのことをどう捉えているかは興味深いポイントだなと思いました。アイヌ側の感情が濃く反映されているとしたら、だましや裏切り、約束違反などに強く嫌悪感を示すメンタリティを受け継いで来られているのかもしれませんし、松前藩側の立場が強ければ、戦って勝ち取ることを賛美する傾向などが残っていることも考えられます。

こうした歴史上の争乱や制度改革等が地域に与えた影響、それによって「どんな感情」がどの程度生まれたか、その出来事から「どんなメンタリティ」が地域のメジャーとなっていったかを類推するのは、ワークショップの設計やファシリテーションにおいてとても役立ちます

いいワークショップをご提供するには、まず相手がどんな価値観や考えを持っている方々なのかを知ることが重要です。

地域の悲しい歴史はデリケートに扱うことが重要

明治から昭和にかけては、ブラックダイヤモンドとして町の中有事業であった炭鉱開発に関する記載が目立ちました。炭鉱は町の発展を支えていた一方、2~3年毎に爆発や崩落によって100人単位の死傷者が出ていた他、太平洋戦争を契機とした強制労働、学徒動員の歴史などが垣間見られ、町史のハイライトとローライトが同居している印象を受けました。

こうした基幹産業と、それにまつわる悲喜交々の歴史もまた、地域の方々のメンタリティ形成に大きな影響を与え続けてきたのだろうと推測します。現在では「黒いダイヤから白いダイヤへ」というキャッチコピーのもと、雪の利活用を町の施策として取り組まれていることからも、その影響力が残っていることが伺い知れました。

このトピックスについてはもう少し現地の方々と交流をさせていただかないと、どんな思考や精神性を受け継いでいるのか見えてこないだろうなと感じましたが、史実を知っておくだけでも、ワークショップ運営には大きなプラスになります。

例えば爆発を想起させるようなワークショップ名にしない、爆発という言葉をファシリテーション中は使わない、爆発の画像を投影資料に使わないなど、過去の悲しい出来事を繊細に扱おうとする配慮はとても重要です。人口がさほど多くない町でありながら、炭鉱事故での死傷者数が多いということは、自分の先祖親戚や知人が被害に遭った、という方がワークショップに参加してくださる確率は低くありません。そうした方々の心の痛みを、無自覚のうちに呼び起こさせてしまうことは、できるだけ避けたほうがスマートだと思うんです。

これは近年に起こった痛ましい事故や災害に関しても同様です。中でもファシリテーションにおいては、その土地土地に合わせた言葉の選択を意識してください。極端な例かもしれませんが、津波被害の大きかった東北の沿岸で、「アイデアが津波のように押し寄せてきていますね!」とは言えないと思うし、もし言ってしまったら深い後悔に襲われることでしょう。その一言だけで、ワークショップの価値がゼロになることだってあり得ます。

地域史の読み解きは矛にも盾にもなる

整理すると、100年史を通じて地域史におけるハイライト・ローライトを探すこと、それらの体験からどんな「価値観」や「メンタリティ」が生まれて、現在に引き継がれているのかを探ることは、ワークショップ運営の大ヒントになります。

時にはポジティブな軸が見つかり、その流れに沿ってワークショップが素晴らしくパワフルな場になることもあるでしょう。あるいはネガティブな出来事への配慮の気持ちが芽生えて、ガードを固めることに専念する瞬間もまたあるでしょう。

つまり地域史の読み解きは、矛にもなれば、盾にもなるのです。地域の誇りと悲しみを大事に扱うことができたら、それだけでワークショップの空間は深まります。

ちなみに、わざわざ地域の100年史を現地で開かなくても、Wikipediaや市役所のホームページなどを見れば、大まかな出来事は掲載されています。事前に現地の町を歩いたり、歴史書を開く時間が取れない時は、Webで拾える情報だけでも確実に収集しておきましょう。このほんの一手間が、ワークショップの成功確率を中長期的に高めてくれると私は思っております。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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