良質なワーク案は「たくさんの駄作」から生まれる

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。先日、仙台青葉学院短期大学さまから、参加者が150名を超える大規模なワークショップのご依頼をいただきました!

ご依頼の内容にお応えするためには、既存のワークに頼らず、ゼロから企画する必要を感じまして、今回は新しいワークを創作しました。かなり気合を入れて頑張りました。

にもかかわらず、真っ先に浮かんだ最初のワーク案は悲しいくらい、全く使いものになりませんでした…!(苦笑) 盛大な空振りです。残念。

でも最終的にはこの駄作がトリガーとなって、しっくりくるワーク案を創作することができました。私はよく、非常勤講師を務めている東北芸術工科大学で、「最初はくだらない案でいいから、完璧を目指さずに考えてみよう」と学生に伝えているのですが、ラフでもいいからある程度目鼻立ちをしっかりさせてみると、ワークの良し悪しが見えてきて、次の一手を考えることができるようになります。完璧なワークを目指してアウトプットをしないと、いつまで経っても完成しません。

目次

最初に思いついた失敗策のアイデア

今回のご依頼には目的が複数あったのですが、そのうちの一つが「入学した新入生どうしの仲を深める」でした。ただ、普通に自己紹介をしても面白くないなあと思ったんですよ。ワークショップとして開催するなら、予想を超えた自己紹介をご提供したい! と思ったわけです。

そこでどんな仕掛けを作れるか考えてみて、五感を通じた自己紹介はどうかな? と最初のアイデアを思いつきました。それぞれの高校時代に関して、視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚がよく覚えていることをリストアップし紹介しあったら、エモーショナルな記憶が開きやすく、そこに触発が生まれるのではないかと想像したんですね。かつ、多様な自分をお披露目できるのではないかと。企画が生まれた段階では、なんとなく筋が良さそうな気がしました。

ところが! 自分で試してみたら、あまり芳しくない結果になりました。

実際に試してみて分かったこと

これが実際にパッと考えてみた自分の高校時代なんですが、予想していたこととは違う点が2つ見つかったんですよね。

一つは大して面白い記憶が開かないこと。「視覚」の項目で一番最初に浮かんが光景が「教室の黒板」だったのは、かなりの誤算でした。多くの高校生は、同じような時間軸・環境下で生活しているので、このフレームだと、みんな似たようなことを書いてしまうリスクがあると気づいたのです。これでは良質な相互理解にはつながりません。

もう一つは、どの五感からも「野球」の思い出が引き出されてしまうこと。私は野球部だったのですが、わざわざ五感の全てを使って「野球部でした!」と伝えたいほど好きだったわけではないので、こんなに頻出されても困るなと思ったんですね。これでは多様な自分を披露するどころか、野球バカまっしぐらです…。この事象は、他の部活に置き換えても、容易に同じことが起こってしまいそうですよね。

縛りを設ける、つまり「一度使った対象は使わない」等のルールを提示したら回避できる可能性もありますが、それだと時間がかかりすぎるし、自己紹介という最初のワークのギミックとしては重すぎます。

よって、ボツになりました。

良質なアイデアは、ダメなアイデアから生まれる

私はよくアイデア共創のワークショップで、おもちゃクリエイター高橋晋平さんのお言葉を引用し伝えているんですが、『アイデアが枯れない頭のつくり方』には、ダメなアイデアについてこんなことが書かれています。3大原則その3:ダメなアイデアから出すという章です。

【メリット2】ダメなアイデアが踏み台になる

 仮にアイデアが100個、目の前にあるとします。その中には当然いいアイデアもあれば、ダメなアイデアもあります。

 ビジネスの現場では、実にたくさんのアイデアが出て、そのほとんどが使えないアイデアとして消えていくわけですが、ダメなアイデアを出さないようにして、いいアイデアだけ用意しようとするなんて、ムシのいい話です。

  ダメなアイデアを土台にせずして、いいアイデアは生まれません。 ダメなアイデアがダメだとわかり、その理由づけもできているから、それと比較して、いいアイデアは「いい」と認知されるのです。 つまり、タメなアイデアは必ず用意しなければならないのです。

 たくさんのダメなアイデアがあって、それと比較できるから、いいアイデアに確信も持てるし、説得もできます。いずれにせよ、誰しもがダメなアイデアも出さなければいけない運命にあるのです。カッコつけて、「私ほどの人間は、いいアイデアしか口にしてはいけない」などと思ってしまうと、もうダメです。

アイデアが枯れない頭のつくり方

最初からいいアイデアを作り出せるなら、それに越したことはないんですけど、そうならなくて当たり前なんですよね。そして意外に、ダメなアイデアを出し続けていると、まさにそれらが踏み台になって、いいアイデアの輪郭が明確になっていくのです。

今回のケースでは、多様な自分をお披露目していただけるようにするためには、五感という切り口だと不確実すぎることが判明しました。案としてはボツなんですが、ワークショップデザインの精度を高めるためには大発見です!

なぜなら、このフレームに頼るよりは「これまでにハマったもの」「すごく苦手なこと」「どんな学生生活を過ごしたいか」などのテーマを設けておいた方が機能しそうだ、ということがわかったから。昔、ライオンのごきげんようという、サイコロの出た目によってトークテーマが決まるテレビ番組がありましたが、あんなイメージのほうがフィットするだろうなと。

ワークショップデザインの手順

私はワークショップをデザインする際は、上記のようなシミュレーションを何回も繰り返しています。だいたい1回のワークショップでは3~4個のワークを配置することが多いのですが、①パッと思いついた案を試す ②メリットとデメリットを明確にする ③マイナス点を改善できるアイデアを探す という思考手順で、各ワークを最終化しているのです。

そのうえで、以前に「ワークショップの設計は「仮組み」して全体を見渡そう」という記事を書きましたが、全体の流れの中で各ワークのつながりを整えていくと、自ずとベストな流れが見えてきます。

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ということで、今日お伝えしたかったのは「ワークショップづくりは駄作を恐るな!」という一点に尽きます。ダメな案があればこそ、欲しているものの輪郭が明確になり、必要なアイデアを創造できるようになるのです。失敗は成功の母という言葉があるように、始めから完璧を目指さず、ぜひ大量のダメなアイデアを生み出してみてください。

余談ですが、私はワークショップデザイナーとして独立する前に、1年間毎日ワークショップのワーク案を2個作ることを自分に課したことがあります。想像を遥かに超えて大変だったため、クオリティになんて拘っていられませんでした。とにかく、絞り出す。。。

でも、こうした練習が、今のワーク設計力につながっていると思うんですよね。本当に、ダメな案を大量生成するのは大切なことです。どんなことを考えたのかは、スプレッドシートにまとまっています。もしご興味ある方がいらしたら、こちらを覗いてみてください。恥ずかしい質のアイデアばかりなので、できれば笑わずに見ていただきたいです(笑)

独立前に練習したワークショップのアイデア作り

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1g6JnNtfoS5OrNnWmOaYGKJOMDvjY8oQS_ceZ9_GlGF8/edit#gid=0

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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