ワークショップ中に「困っていそうな方」へ声をかけるコツ

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私が住んでいる仙台市は、秋の気配がだいぶ濃くなってきました。ひんやりとした空気に包まれて、とても心地が良い朝です。

さて、今回の記事では「ワークショップ中に困っていそうな方への声のかけ方」について書いていきます。もし仮に、抜け漏れのない完璧な投影資料を作れて、過不足のないファシリテーションを行えたとしても、運営者の指示が100%参加者に理解されることは稀です。

そもそも人の理解力には個人差がありますし、携帯の通知に気を取られてしまったり、何か気がかりなことに気持ちを奪われてしまっていたりすると、ファシリテーターの指示がとっても遠くに聞こえるものです。

参加者の立場からすると、ファシリテーターの説明に問題があるケースは「こういう解釈で合っていますか?」と確認しやすいのですが、自分が指示を聞き漏らしてしまった時はそうもいきません。

後ろめたさもありますし、どこまで理解できていて、どこから理解できていないのかが分からないことが多いので、尋ねようがないという側面もあります。

つまり、何をしたら良いか曖昧なまま、ワークに取り組まなければならないということです。こうした時のバツの悪さや、心細さと言ったら…。

目次

(しまった…)という気持ちに絆創膏を差し出す

上述した通り、指示を聞き漏らしてしまった参加者は、申し訳ない気持ちを抱えていらっしゃることがほとんどです。だからまずは「大丈夫だよ!」というメッセージを伝えることが重要になります。参加者それぞれの心理状態は場のムードに直結するので、不安な気持ちは早々に取り除くのが吉です。不安から生じるザワザワって、驚くほど蔓延するスピードが早いんですよね。

私は困っていそうな参加者を見かけたら、「説明が分かりづらいところありました?」とか「いま何かお困りでしたか?」と、こちらから早々にコミュニケーションを起こすようにしています。そのうえで、再度ワークの内容をご説明し、心の曇りが晴れるまで寄り添います。

この時(あなた私の説明を聞いてなかったよね!?)といった態度を見せるのはNGです。間違っても「さっき言ったんですけど」などと嫌味を交えてはいけません。なぜなら聞きたくないから聞かなかったのではなく、ちょっと気を取られて聞けなかった、という方が大半だからです。傷口に塩を塗り込むような振る舞いは自重しましょう。

このシーンで求められているのは絆創膏です。(しまった、どうしよう…)とびくびく、そわそわしている参加者の気持ちを、そっと癒して差し上げる。そうするとワークショップの空間には、自然と陽の空気が広がっていくものです。

この点に付言しておくと、どのような立ち方で声をかけるかも大事なポイントです。座っている参加者に対してファシリテーターが立ったままだと、威圧的なムードになってしまうことがあります。このため、自分も座って同じ目線から話しかける、膝を追って下から話しかけるなど、バリエーションを持っておくといいでしょう。

ただし、例外もあります。例えば悪ふざけしをていて聞いていないケースなどはこの筆頭です。こういうムードをほうっておくと場が弛緩してしまうので、ビシッと空気を引き締める介入が求められます。同じ「聞いていなかった」という状態でも、その背景が違えば、介入の仕方も変わるのです。

全体にアナウンスするという選択肢

先の章では、困っている方に直接声がけする際のスタンスについて触れました。対してこちらの章では、困っている方を見かけたら、全体にアナウンスするという選択肢について書き添えておきます。

というのも、参加者の中には、直接介入するとマイナス効果になる方もいらっしゃるのです。例えば自尊心がとても強い方だと「分かっていないヤツとして扱われ、皆の前で恥をかかされた!!」と憤慨させてしまったり。あるいは自己肯定感が低い方だと、「私ってやっぱり、ダメな人と思われているんだ…」と落ち込ませてしまったりすることがあります。これでは全く逆効果です。

このためワークショップのファシリテーターは、個人に介入するコミュニケーションと、全体に介入するアナウンスのどちらが有効かを見極め、使い分けられるとGoodです。

もし困っていそうな方を見つけて、直接介入しない方が良さそうな雰囲気を察したら、全体に向けて「改めてお伝えしたいのですが〜」「ちょっと混乱させてしまったかもしれないのでもういちどお伝えしておくと〜」などの枕詞をつけて、再度ワークの説明をしましょう。この時、既に順調に取り組んでいる方々の邪魔にならないような配慮があるとなお良しです。

場づくりに熟達している方ほど、こうした一連の気遣いが自然とできています。

また、困っている方がお一人ではなく、いくつかのグループに複数人散らばっているケースもあります。こうしたケースでは、さっと全体にアナウンスする機敏さが求められます。全体の手を止めてでも再度ご説明をするほうが、躍動感のあるワークショップになりやすいものです。

タイプの異なる参加者が、それぞれ楽しく過ごせる気遣いを

余談ですが、私は自分ができていないことを人前で指摘されると、とても恥ずかしい気持ちと、全体にさらされたことへの苛立ちとが同時に湧いてくるタイプでした。そして攻撃的な性格が勝り、相手を批判したり、不貞腐れてしまったりと、場の空気を壊す振る舞いをしがちでした。一方で私の妻は、こうした指摘に心が乱されることはありません。

つまり何が言いたいかというと、介入を全く気にしない方もいれば、どうしようもなくアップセットしてしまい、正常な自分ではいられなくなってしまう方もいるということです。ワークショップデザイナーはまず、この点をしっかりと理解しておく必要があります。そして、それぞれのタイプが心地よく過ごせる空間づくりを意図してほしいと思います。

多様な参加者それぞれの心地よさに気を配るのは、大変なことではあります。でも、とてもやり甲斐がある。私は、私のような荒くれ者でも楽しく過ごせるワークショップの場が、世の中にたくさん増えるといいなと思っているんですよね。そのためのに、このブログを書いています。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内洋輔

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