ワークショップで失敗しないタイムテーブルの作り方とは?

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。

皆さんはワークショップのタイムテーブルをどのように作成していますか? 時間ぴったりで組み立てる方もいれば、余裕を持たせて設計する方もいると思います。あるいは、どうしていいか分からないという方や、いつも悩んでいるという方もいるでしょう。

私がタイムスケジュールを作る上で大切にしていることはとてもシンプルで、ゆとりをデザインする。この一点に尽きます。

隙間なく敷き詰めた薪に火をつけようとしても、なかなかうまくいきません。薪に火を付けようと思ったら、風の通り道となるゆとりが生まれるよう木を組み上げる必要があります。

ワークショップもこれと同じで、予定をぎゅうぎゅうに詰め込むと機能しないからです。

今日はワークショップのタイムテーブル作りに自信が無いという方、いつもワークショップが遅れがちになって全体を消化できないという方に向けて、私が普段実践しているタイムテーブルの作り方をご紹介させていただきます。

目次

ワークショップ運営でありがちな失敗「時間が足りない」

私は仕事柄、ワークショップの運営だけではなく、ワークショップに参加する機会も数多くあります。素敵だなと感じる場もあれば、ガッカリすることもよくあります。そしてガッカリするワークショップの大半は、「時間が足りない」ことが主な理由です。

「ワークが長引いたから」と休憩時間が大幅にカットされたり、「本当は15分時間を取ってたんですけど、今日は5分でアイディアを作ってください!」と無茶振りをされたり、じっくり考えたいのに「さっさと次へ進んでください、時間ないんで!」と急かされたり、成果の共有やまとめがすごく適当になったり……etc

皆さんもこうしたシーンに遭遇したことはありませんか?

時間にゆとりが無いワークショップは、宿題が終わってない小学生の夏休み最終日に似ています。夏休みの最終日にバタバタと宿題へ取り組むと、どうしてもやっつけになりますよね。記憶が定着することや、創造性溢れる傑作が完成することはほぼありません。

ワークショップの場も同じで、次々とタスクをこなさなければならない混乱状態で、素晴らしいアイディアが浮かぶ人、実りが深い対話を行える人は果たしてどれくらいいるでしょう。ワークショップにおいて時間が足りないという状況は、百害あって一利なしです。

ワークショップの空間には「喫茶店」のようなゆとりが重要

私は、対話が盛んで、ゆとりのあるワークショップを運営するために、いつも意識しているモチーフがあります。それは、「陽射しが揺れる午後の喫茶店」です。

喫茶店ってソファーがふかふかと心地良かったり、ゆったりした音楽が流れていたりと、すごくのんびりしながらも深い対話ができる空間だと私は考えています。

また、喫茶店には、サラリーマンが集うお昼時の吉野家のように、ご飯を流し込んだらすぐに席を立たなければならないプレッシャーもありません店外に並ぶサラリーマンたちから「早く食べて去れ」と無言の圧力を感じるお昼時の吉野家と、ふかふかのソファーにお日さまの陽射しが注ぐ喫茶店と、どちらが対話が深まりやすいかは言うまでもないですよね。

せっかくワークショップを開催するのだから! クライアントからの期待に応えたいから! とワークでびっしり埋まったタイムテーブルを作りたくなる気持ちは分かります。私も状況によっては、お昼の吉野家状態となるタイトなワークショップを設計することもあります。ですが上述した理由から、時間に余裕の無いタイムテーブルを作成するのは、例外中の例外と考えておく方が無難です。

特にワークショップのデザインやファシリテーションに不安がある方ほど、時間にゆとりが無いワークショップは、運営の難易度が急上昇することに加えて、参加者の心が開きにくくなり、結局は目標達成から遠ざかる可能性が高くなるということを念頭に置いておきましょう。

決して内容がびっしり詰まったワークショップが効果を生み出すわけではないのです。

ワークショップの場にゆとりを生み出す具体的な3つのテクニック

なぜ私がワークショップの場でゆとりを大切にしているか、お感じいただけましたでしょうか?

ここからは私がワークショップを設計する際に実践している具体的な3つのテクニックご紹介します。

各ワーク毎にバッファの時間を設ける

まず最も基本となるのが、各ワーク毎にバッファの時間を設けることです。例えばアイスブレイクを実施するとしたら、「説明が2分で、練習が3分くらい必要だと思う。本番は10分かかかると見込んで、合計15分だな!」と考え、15分ぴったりの時間で設計する方が多いのではないかと思うのですが、私はここに3~5分程度のバッファを盛り込み、20分でタイムテーブルを設計します。

ワークショップは生き物なので、タイムテーブル通りに場が進行することはほとんどありません。冒頭に挨拶をお願いした方が予定を遥かに超えてスピーチをすることもあれば、ディスカッションが盛り上がり過ぎて元々の予定よりも遥かに長い時間を差し上げることもあります。

もし設計にゆとりを持っていないと、こうしてワークショップの進行が遅延した場合、以降のワークで参加者を追い立てないとなりません。ワークショップは後半に進むほど、実施テーマの核心に触れる重要なパートが連続します。文字通り、会の成否を分ける時間です。その重要なパートで、「時間が無いから!」と追い立てられるワークショップは、良い会になるでしょうか?

私の感覚としては、2時間のワークショップであれば10~15分、3時間のワークショップであれば20分くらいはバッファを設けておくことをオススメします。これくらい余裕があると、進行にトラブルが起こったとしても、参加者を焦らせることなくワークショップを完了できる確率がぐっと高くなります。

休憩時間をケチらない

次に意識しているのが、休憩時間の長さです。結論から書くと、私は10~15分の休憩を基本線としてワークショップを設計しています。2時間以内のワークショップであれば、スタートから休憩なしで実施することも多いのですが、2時間半以上のワークショップをするなら休憩は必須です。

人間の集中力には限界があるため適度に休憩を入れた方が対話が深まりますし、2時間半を超えるとトイレに行きたい方が激増するからです。フィナーレとなるまとめの時間へ進むにつれ、トイレへ行きたくて上の空になる人が増えたのでは、せっかくの会が台無しです。

ところが、多くのワークショップでは休憩が軽視されています。3時間ぶっ通しで実施する会もあれば、休憩はあっても3~5分程度なこともザラです。数分の休憩ではトイレに行くだけでもギリギリ。

でも多くの参加者は「携帯の通知をチェックして、トイレに行って、自動販売機でコーヒーを買おう」とか、「まずは一服して、それから少しぼーっと外の景色を眺めて気分を変えよう」とか、複数のやりたいことを持っています。ワークショップに来たのだから、それ以外のことは一切考えていないという参加者はとても稀です。

そうした大半の参加者の気持ちを無視して、ほんの僅かな時間しか休憩を取らないと、満たされなかった参加者の願望がストレスや不満へと変わっていき場の空気が悪化します。これは参加を強制されている方が多い場ほど、その傾向が強くなります。

だから私は、15分ほど思い切って休憩を設計するようにしています。15分あれば、トイレに行って一本電話対応を済ませる余裕がありますし、前のワークが押してしまった際の調整も容易になります。(5分短くして10分休憩にする等)

カットしても良いワークを想定しておく

上記2つを軸にプログラムを設計した後は、当日に急遽カットしてもワークショップの骨組みが瓦解しないパートはどこかを明確にしておきます。各ワークにバッファの時間を設け、休憩時間を長めに取っていても、時間が足りなくなる時は足りなくなるからです。

例えば交通機関や悪天候の影響で開始時間が大幅に遅れてしまう日などは、ワーク内にどれだけバッファを設けていてもどうしようもありません。時間通りに始まっても、議論が想像以上に白熱したり、反対に全く対話が深まらないこともしばしばあります。

だから事前のシュミレーションを通じて、カットしても大勢に影響が無いワークはどこなのか、時間を短縮しても狙い通りの効果を得られそうなワークはどこなのかを明確にしておくことが非常に重要です。そして、各パートの最短時間を想定しておきましょう。そうすると、ワークショップの進行が遅くなってしまった際にも、フレキシブルに流れを変えることができます。

これはあくまで感覚的な話しですし、どんな流れでワークショップを設計しているかにもよりますが、時間が足りなくなってきている場合は、残っているワークの時間を均等に短縮して実施するより、ドラスティックに一部分を丸ごとカットしてしまった方が良い結果につながりやすいと感じます。言い換えると、「全部残さなきゃ」と熱くなるより、「どの部分は残さないとならないか?」をクールに見極めるほうが価値を創造しやすいです。

対話が深まり成果につながるワークショップを開催するために

いかがでしたでしょうか。せっかくのワークショップなので、達成したい目標に向かって様々なワークを詰め込みたくなる衝動は誰しも持っていると思います。ですがその気持ちをグッと押さえて、プログラム全体にゆとりが生まれるよう設計すること。そこから皆さんが創り出す空間に違いが生まれたら、とても幸いです。

とは言え、ワークショップにゆとりを作ることが必ずしも良いかと問われると、それはまた違うかもしれません。ファシリテーションをされる方の性質や、その時々の参加者との相性も重要だと感じるためです。ヨーイドンで駆け抜ける設計のほうが得意という方は必ずいます。そのため、自分にはどちらが合いそうか、参加者はどちらが喜びそうかも加味して、いろいろなパターンを試してみてください。

ただ、冒頭に書いたように、ワークショップのタイムテーブル作りに自信が無いという方、いつもワークショップが遅れがちになって全体を消化できないという方には、ぜひゆとりあるワークショップデザインを実践いただければと思います! きっと、ワークショップで起こることが変わるはずです。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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