社内研修にワークショップを取り入れたい人が、最初に確認すべき5つのこと

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。

「今度、社内研修にワークショップを取り入れてみようと思っています」

人事や研修担当の方から、こういったご相談をいただくことが増えました。以前に比べて、ワークショップという言葉が広く知られるようになってきたこともあるのか、「参加者が能動的に動く形式にしたい」というニーズを感じる機会が多くなっています。

とても良いことだと思っています。ただ、その一方で「なんとなくワークショップにしてみたけれど、うまくいかなかった」という声もよく耳にします。盛り上がったように見えたのに、現場に戻ったら何も変わっていなかった。参加者の反応が薄くて、場が沈んでしまった。そういった経験をされた方もいるのではないでしょうか。

ワークショップは、設計の段階でいくつかのことを丁寧に確認しておくだけで、成果が大きく変わります。今回は、私がご相談を受けたときに必ずお聞きする「5つの確認事項」をご紹介します。どれも難しいことではありませんが、事前に整理されているかどうかで、当日の場の質がまったく違ってきます。

目次

① 「なぜワークショップなのか?」という必然性

まず最初に確認したいのが、「なぜ講義形式ではなく、ワークショップなのか」という必然性です。

ワークショップは、参加者が対話し、自分の頭で考え、何かを生み出す形式です。そのぶん時間もエネルギーも使います。「知識を正確に伝えたい」という目的であれば、実は座学のほうが効率的なことも多い。

ワークショップが力を発揮するのは、意識変革・合意形成・スキル習得など、「参加者が自分ごととして動くこと」が必要な場面です。たとえば、新しい行動習慣を身につけてほしいとき、チームとして方向性を揃えたいとき、互いの価値観を理解し合ってほしいとき——こうした目的には、一方的に聞くだけの形式では限界があります。

「この研修、ワークショップにする理由はなんだろう?」という問いに答えられると、設計の方向性が一気に定まります。もし答えに迷うようであれば、まずその目的の整理から始めることをおすすめします。形式は、目的が決まってから選ぶものです。

② 参加者の「心理的安全」の現状

ワークショップは、参加者が発言することで成り立ちます。そのため、「その職場で、人は自分の意見を言える状態にあるか」を事前に把握しておくことがとても重要です。

役職の壁が厚い組織、失敗を許容しない文化の職場では、参加者が本音を出しにくいことがあります。それ自体は珍しいことではありませんが、そのままワークショップを始めると、表面的な発言しか出てこない場になってしまいます。上の人の顔色をうかがいながら無難なことだけを言い合う——そんな場にしないための準備が必要です。

心理的安全に不安がある場合は、アイスブレイクやグランドルール(「否定しない」「肩書きを外す」「ここで話したことはここだけに留める」など)の設計をより手厚くすることで、場を整えることができます。「うちの職場はちょっと発言しづらい雰囲気があって…」という情報を事前に教えていただけると、それだけ設計の精度が上がります。現状を正直に共有してもらえることが、良い場づくりへの一番の近道です。

③ ゴール(着地点)の具体的イメージ

「研修が終わったとき、参加者にどんな状態になっていてほしいか」を、できるだけ具体的にイメージしておくことが大切です。

「チームの仲が良くなった」「モチベーションが上がった」という感覚的なゴールも大切ですが、それだけだと設計が難しくなります。ゴールが抽象的なままだと、プログラムのどこに時間をかければいいかが定まらず、結果として「なんとなく楽しかった」で終わってしまいやすくなります。

「明日からこのアクションを始める人が増えている」「この課題について、チームで共通認識が持てている」「自分の強みを言語化できるようになっている」——そんなふうに、目に見える変化として言語化できると、プログラムの設計がぐっと具体的になります。

ゴールが明確であればあるほど、ワークショップの成果も測りやすくなります。研修後に「効果があったのかどうか分からない」という状況を防ぐためにも、この「着地点の言語化」は最初に時間をかけて取り組む価値があります。

④ 現場(上司・周囲)の理解とサポート

研修の場でどれだけ気づきが生まれても、職場に戻った瞬間に「そんなことより仕事しろ」という空気に包まれてしまっては、変化は定着しません。

研修の内容が現場の課題と結びついているか、そして参加者が研修後に新しい行動を起こそうとしたとき、上司や周囲がそれを応援できる体制にあるか。この「現場との接続」を事前に確認しておくことが、研修の効果を長続きさせる鍵になります。

ワークショップは「非日常の場」です。だからこそ、日常に戻ったときの受け皿を準備しておく必要があります。上司層への事前説明や、研修後のフォローアップの仕組みづくりは、研修担当者として取り組む価値が十分にあります。「研修当日さえよければいい」ではなく、「研修後に何が起きるか」まで視野に入れて設計できると、研修全体の効果がぐっと変わってきます。

⑤ リソースの制約(時間・空間・道具)

最後は、物理的な環境の確認です。ワークショップは、場の設計に左右される部分が大きいからです。どれだけ良いプログラムを設計しても、環境が合っていなければその力を発揮できません。

時間: 対話やワークには、思っている以上に時間がかかります。「30分でグループワーク」は、実際にやってみると非常にタイトです。グループの人数が多ければ多いほど、一人ひとりが発言する時間は短くなります。余白のある時間設計が、参加者の思考の深さに直結します。「詰め込みすぎない」ことも、設計者の大切な仕事です。

空間: 机を島型に並び替えられるか、壁に模造紙を貼れるか。固定席の講義室しか使えない場合は、それに合った設計が必要になります。空間の制約は、早めに把握しておくほど対応の選択肢が広がります。

道具: 付箋・ペン・模造紙・プロジェクターなど、ワークショップでよく使う道具が揃っているかも確認しておきましょう。当日になって「付箋がない」「ペンが薄くて見えない」となると、意外と場の雰囲気に影響します。小さなことのようですが、道具が整っているかどうかは、参加者の集中力にも関わってきます。

おわりに

5つの確認事項を並べてみると、どれも「当たり前のこと」に見えるかもしれません。ただ、実際のご相談の場では、このうちのいくつかが曖昧なまま「とりあえずワークショップをやろう」と進んでしまっているケースが少なくありません。

逆に言えば、これらが整理されている状態でスタートできると、ワークショップの成果は格段に上がります。「確認事項が多くて大変そう」と感じるかもしれませんが、これらは不安を煽るためのリストではありません。せっかくの研修を、参加者にとっても組織にとっても意味あるものにするための、準備の地図です。

もし「整理したいけど、一人では難しい」「プロの視点から一緒に考えてほしい」と感じたときは、ぜひお気軽にご相談ください。目的の言語化から、プログラム設計、当日のファシリテーションまで、一緒に考えるところからお手伝いします。

対話をもっとおもしろく。

相内洋輔

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