「なんでもOK」は意外と不親切。思考はフレームで深まる。

ワークショップでは、頻繁に「新しいアイデア」や「今日の気づき」などをまとめていただく場面があります。せっかくの対話ですから、できるだけ自由に、既存の思考に縛られずに考えていただきたいと思っています。

しかし、だからと言って、何の制限もない方が機能するかというと、実はそうではないのです。思考の形式をまったく指定しないより、ある程度の構造を共有したほうが、参加者は考えやすくなる。つまり「フレームを渡す」ほうが、結果的に自由さが発揮されるのです。

今日はこの点について書きます。

目次

思考には「枠組み」が必要である

人は、まったく白紙の状態で考えることが意外と苦手です。手探りで思考を深めていけるだけのストレス耐性を持っている人は、実はそう多くありません。だからこそ、私たちは普段から「フレーム」を使って物事を整理しています。

たとえば、「よかったこと/困ったこと」という2軸。あるいは、「現状」「課題」「解決策」というステップ。こうした簡単なフレームがあるだけで、思考はぐっと容易になります。ビジネス現場でフレームワークが多用されているのも、思考に伴う苦痛や時間を削減できるからですよね。

これはワークショップでも同じです。「なんでも自由に考えてOK」と言われるより、「この順番で書いてみましょう」と構造や手順を示されるほうが、多くの人にとって安心なのです。

「フレーム」と聞くと、発想を制限するものだと感じる方もいるかもしれません。でも実際はその逆です。思考の枠組みが決まっていることで、かえって“考える余白”が生まれるのです。なぜなら、どこまで考えればいいのか、どこを掘り下げればいいのかが見えてくるから。その結果、思考は深まります。

「考え方を助ける技術」としてのフレーム

ワークショップにおいて大切なのは、「構造のある自由」です。多くのワークショップは、2~3時間程度。効率よく進めないと、目的を達成できません。

つまり「視点をどう整理するか」「どういう順番で言葉にすればいいか」をあらかじめデザインしておく必要があるのです。この部分を参加者任せにしてしまうと、糸の切れた凧のように、対話もコントロールを失います。

また、極端に言えば、私がワークショップを通じて求めているのは「発表のうまさ」ではなく、「考えるプロセス」を身につけていただくことです。見栄えのいい発表は気持ちがいいですが、それが必ずしも未来を切り開くとは限りません。それよりも、グループ全体として思考の質を上げていくことのほうが、中長期的にみて価値が高い。

だから私は、思考の技術としてのフレームを大切にしています。なぜなら、これほど再現性が高いツールは他にないからです。

ワークショップにおける自由な発想や、参加者それぞれの個性ある表現。それらは決して、「好き勝手にやっていい」という状況から生まれるものではありません。むしろ、構造があるからこそ、自由になれる。

こうした感覚を持って、ワークショップをデザインできる方が増えると嬉しいなあと思います。今日はここまで。

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