ワークショップデザイナーの相内洋輔です。
先日、ある企業の人事担当の方から、こんな相談をいただきました。「ワークショップをお願いしたいんですが、正直、何をどう伝えればいいのかわからなくて……」。電話口の声には、申し訳なさと不安が入り混じっていました。私はその言葉を聞いて、むしろ嬉しくなったんです。「わからない」と正直に言ってくださる方との仕事は、たいていうまくいくからです。
今日は「ワークショップを外注する」ことについて書きます。
外注する一番のメリットは「中立な第三者」
ワークショップを外部のプロに頼むメリットというと、設計のノウハウや進行の技術を思い浮かべる方が多いと思います。もちろんそれもあります。でも私は、一番のメリットは別のところにあると考えています。
それは、ファシリテーター(進行役・対話の促進者)が「社内の力学から自由な存在」でいられることです。
社内の人が進行役を務めると、どうしても役職や部署の関係が場に持ち込まれます。部長が仕切る会議で、若手が本音を言えるでしょうか。逆に、進行役を任された若手が、役員の発言を遮って軌道修正できるでしょうか。外部の人間だからこそ、誰に対しても同じ距離感で問いを投げられるのです。
もうひとつ見落とされがちなのが、「企画した本人も参加者になれる」ことです。社内で場を回す人は、その場に参加できません。一番テーマに思い入れのある人が、対話の輪の外にいる。これは実はとてももったいないことなんです。
依頼の前に、整理してほしいたったひとつのこと
では、プロに依頼するとき、何を伝えればいいのでしょうか。
詳細な企画書は要りません。タイムテーブルの案も要りません。整理してほしいのは、たったひとつ。「その場が終わったとき、参加者がどんな状態になっていてほしいか」です。
「チームビルディングをやってほしい」という依頼と、「会議で発言するのが特定の3人に偏っていて、他のメンバーが諦めている空気を変えたい」という依頼。どちらが良いワークショップにつながるか、もうおわかりですよね。
前者は手法の指定で、後者は状態の描写です。手法はプロが考えます。だから依頼する側は、現状への違和感と、望む変化を、自分の言葉で語ってくれればいい。冒頭の人事担当の方にもそうお伝えしたら、「それなら話せます」と声が明るくなりました。そこから出てきた現場の描写は、どんな企画書よりも雄弁でした。
良い発注は「丸投げ」でも「指示書」でもない
失敗する発注には、ふたつのパターンがあると感じています。
ひとつは丸投げ。「いい感じにやってください」と任せきりにすると、たとえプロでも一般論で設計するしかなくなります。その組織固有の文脈が抜け落ちた場は、どこか他人事の時間になってしまいます。
もうひとつは、細かすぎる指示書。進行も問いも全部決めてあって、「この通りにやってください」という依頼です。これではプロの専門性を使えません。料理人に完成したレシピを渡して、計量だけを頼むようなものです。
良い発注は、その中間にあります。つまり、発注そのものが対話なんです。依頼する側は現場の事実と願いを語り、プロは問いを返しながら設計の選択肢を示す。この往復が丁寧にできた案件は、当日を迎える前から半分成功しています。
だからこそ私たちの仕事は、提案書を書く前のヒアリングから始まっているのだと思います。クライアントの「うまく言えないモヤモヤ」を一緒に言葉にする時間こそ、最初のファシリテーションなのです。
ワークショップの外注とは、進行を肩代わりしてもらうことではなく、組織の外に「対話の伴走者」を持つことです。そして良い発注者と良いファシリテーターの関係は、発注の段階からすでに対話的なのです。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
