ワークショップの良し悪しは、終わった瞬間の光景が教えてくれる

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。

少し前のことになりますが、ある企業の対話ワークショップを終えた直後のことが、今も頭に残っています。

終了の声かけをして、「では以上です」と締めたにもかかわらず、参加者の方々がなかなか帰ろうとしないのです。隣の席の人とまだ話し込んでいる人、さっき話した相手に追いかけるように声をかけている人、ぼんやりと余韻に浸っているような人。気がつけば、予定終了時刻から20分以上が経っていました。

正直に言うと、私はその光景を見てほっとしたんです。「ああ、うまくいったな」と。

ワークショップの良し悪しって、どうやって測ればいいのかが難しいんですよね。アンケートの満足度は高いに越したことはないけれど、5点満点で4.8点だったからといって「いい場だった」と言い切れるかというと、何かが違う気がする。数字には表れない何かが、あの場にはあったと思うんです。

目次

終わってすぐ帰る場と、留まる場

あなたは、終わった瞬間にさっと荷物をまとめて出ていく人が多いワークショップに、立ち会ったことはありませんか?

私はあります。しかも、自分が設計した場で、何度も。

2年前に担当した企業研修で、プログラムとしては「完璧に回った」と思っていた回がありました。時間通りに進んで、グループワークも盛り上がって、最後の発表もきれいにまとまった。でも終了の瞬間、会場がすっと静かになって、みんながさっと帰っていったんです。誰かが誰かに声をかける様子もなく、余韻もなく。

帰り際に一人の参加者が「おもしろかったです」と言ってくれたのですが、なんだかその言葉が空虚に聞こえてしまって。「おもしろかった」のに、なぜこんなにあっさり終わるんだろう、と。

その経験と、冒頭の「帰りたくない場」を並べて考えたとき、ひとつのことに気がつきました。前者は「コンテンツを消費した場」で、後者は「人と出会った場」だったのではないか、ということです。

「人と出会う」とはどういうことか

ワークショップの中で「対話が生まれた」という感覚、ありますよね。でも対話って、テーマについて話し合うことと、少し違うと私は思っています。

テーマについて話し合うのは、あくまで「情報や意見の交換」です。それはそれで大切なのですが、人が場に留まりたくなるのは、もう少し深いところで何かが動いたときではないでしょうか。

たとえば、「この人はこんなことを考えていたんだ」という発見。自分の話を、真剣に聞いてもらえたという感触。うまく言葉にできなかったことが、誰かの発言によってすっとほどけた瞬間。そういう体験が積み重なると、人は「まだここにいたい」という気持ちになるのだと思います。

帰りたくないのは、まだその人と話し足りないからです。あるいは、今日起きたことを誰かと一緒に確かめたいからです。

帰りたくない場をつくるために、設計できることがある

「そういう場は、偶然生まれるものじゃないの?」と思われるかもしれません。でも私は、ある程度は設計できると考えています。

ひとつは、自己開示(じこかいじ)のハードルを序盤に下げることです。最初に「あなたはこの問いについてどう思いますか」といきなり意見を求めても、人はなかなか本音では動きません。まず「自分のことを少し話してみる」という体験を、安全な形で積んでもらう。それが後の対話の深さに直結します。

もうひとつは、終わり方を丁寧に設計することです。「では以上で終わります」と事務的に締めるのか、「今日の場で印象に残ったことを、一言ずつ聞かせてください」と場を閉じるのかで、終わった後の空気はまったく変わります。ワークショップは最後の数分が、その場全体の余韻をつくるんです。

そして、もしかすると一番大切なのは、ファシリテーター(場の進行役)自身が場を楽しんでいるかどうかではないかと思っています。参加者は、場の空気をとても敏感に読んでいます。設計者が「うまく回すこと」に必死になっているとき、それは意外なほど伝わってしまう。私自身、「今日はいい場だったな」と感じる日は、たいてい自分自身がその対話を楽しんでいた日です。

帰りたくない、という感覚を信じてみる

ワークショップの評価指標として、「参加者が帰り際に何をしているか」を見てみてほしいのです。アンケートの数字よりも、その光景が正直なことを教えてくれるかもしれません。

帰り際に立ち話が生まれているか。「また話しましょう」という言葉が自然と出てきているか。誰かが誰かの連絡先を聞いているか。

そういう場面が生まれているとき、その日の場には「人と出会えた」という体験があったのだと、私は思っています。

終わってすぐ帰りたくなる場ではなく、もう少しここにいたいと思える場を。そのために何ができるかを考え続けることが、ワークショップデザインの醍醐味だと感じています。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

スポンサーリンク




記事が気に入ったらシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次