WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。2024年内にご依頼をいただいたワークショップも残り数回になってきました。毎年たくさんのご依頼をいただきありがとうございます。おかげさまでこのブログもネタに困ることがありません!
さて、今日の記事では短すぎるグループ共有について書いてみようと思います。詳しくは後述しますが、10分のグループ共有がたったの2分で終わってしまう、といった事象のことです。
参加者の意欲が高い場では起こりにくいのですが(むしろ共有時間を終えても話し続けている人が多い)、参加者の意欲が低い時には頻発します。そして、熟練のファシリテーターでもなかなか対処が難しいのです。
自分がこうした状況に直面したらどう介入するか、シミュレーションしておいて損はないテーマだなと思います。
共有が盛り上がらないグループを放置するのはNG!
まず大前提ですが、私はワークショップでは「相互理解」が深まり「触発」が起こることが重要だと考えています。これらが無いワークショップは気の抜けた炭酸のようなものです。そのため個人ワークの成果をグループで共有し、どんな発見があったのかをわかちあうことを大切にしてきました。
同じお題を扱っていても思考のプロセスや結論は人それぞれです。だからそれらを開示しあった時、お互いの間に新たな理解が生まれ、関係が深化するのです。こうした効能はまさにワークショップの醍醐味だと思います。
ところが多くのワークショップを扱っていると、しばしばグループ共有が盛り上がらない会に遭遇します。特に「参加者意欲が著しく低い企業研修」はこの筆頭で、十中八九ダメです。「とてもシャイな中学生男子が偶然何人も同じグループになってしまった」というケースなどもかなり手強いですね。
こうした場合には5人で10分間のグループ共有が2分で完了したりします…。それでもグループで雑談していてくれたらまだ良いのですが、残りの8分はぼーっとしているか、スマホをいじっているか、ソワソワと周囲を見渡している方が大半です。
手持ち無沙汰の参加者がいる場はあっという間に空気が弛緩します。ダラダラと淀んだ感じが漂ってしまうのです。こうした悪いムードって他にも伝染しやすいので、ワークショップ全体にとって良い影響がありません。
本来ワークショップとは「主体的な参加者が他者との協働を通じて何かを学んだり、作ったりする場」です。この定義から考えれば後ろ向きな参加者がワークショップにいるのはおかしいのですが、実際には参加意欲に濃淡があるのは仕方ないこと。特に「誰かに参加を強いられている会」だとモチベーションが無い人もたくさんお越しになります。こんな会はファシリテーターの腕の見せどころです。
ガマンの前半 まずは参加者の場慣れを目指す
グループ共有が短く終わってしまった時、ファシリテーターは「このまま先に進めるべきか」「もう少し時間をかけて共有を深めるか」の2択で悩むものです。ワークショップの場は一期一会ですから、その日の参加者の様子や、扱うテーマに合わせて柔軟に運営することがとても重要です。答えはいつも、参加者の中にあります。
とはいえ毎回ゼロから対処を考えていたのでは心労が尽きません。大きな方針くらいは持っておいた方が悩む時間も少なくなります。私は「ガマンの前半・リズムの後半」を介入方針として定めており、これを皆さんにもオススメしたいと思っています。
まず前半はジタバタせず参加者の様子を見守ることにしています。具体的には、グループ共有が異常に早く終わってしまうグループがあっても、告げた通りの時間で運営するのです。そしてあまり大きな介入はせず「あと5分残っていますよ。もう少し話してみませんか?」と一声かけます。これには狙いが2つあります。
1つは共有の長さに慣れていただくことです。対話に不慣れな参加者が多いと、話し合いにかかる時間をうまく見積もれないことがあります。その結果として、とても早く話が終わってしまったというケースが見られるのです。また、日常的に必要最低限な会話しか行われていない部門から参加されている方が大半を占めるケースなどもあります。こうした方々には、どうにかこうにか時間いっぱい話し続けていただく練習が必要です。
もう1つは参加者の主体性アップです。グループワークがさっぱり盛り上がらないという状況は、参加者それぞれにとっても大変苦痛なものです。特に他のグループが盛り上がっている場合はなおさら。こうした状況に置かれた時、皆で協力して不快感を打破しようとする方々が一定います。その奮起を待つのです。早く介入しすぎると、自分たちでなんとかしようという気概を挫いてしまうことになりかねません。
だから前半は見に徹するのです。
リズムの後半 アップテンポでサクサク進める
一転して、ワークショップの後半ではリズムに乗ることを大切にします。上記のような関わりを経てもなおグループ共有が早く終わってしまう場合、そこから劇的に状況が改善するケースは見たことがありません。そのため予定より短い分数で共有を行っていただいたり、途中で切り上げてしまって、アップテンポでサクサクと進めることに意識を切り替えます。その方が場のムードを保ちやすいからです。
会の後半まで我慢を続けて「沈黙の共有」を体験いただく回数が増えるほど、多くの参加者が目に見えて墜落します。そしてもう二度と飛び立ちません。
いくら意欲が低かったとしても、ワークショップに来てくださっている以上は、何か少しでも学びや気づきを得ていただきたいものです。そのためにはどんな低空飛行でもいいから飛び続けていられる場づくりを志向することが必要です。
それはつまり、「テンポの良さ」に尽きるのです。あまり対話が盛り上がらなくても、場のテンポが苦痛でなければ、参加者はなんとかその場に踏みとどまってくれます。
実際のワークショップでは、「Aグループは盛り上がっているが、Bグループは盛り上がっていない」といったグループ間格差が生まれていることも珍しくありません。こうした際は、両方のグループがギリギリ満足できる時間配分を探り続けます。Aグループにとっては少し短いけれど、Bグループにとってはやや長い。ここが落とし所です。
サブファシリテーターとの連携はよく機能する
参加者の意欲が低いことが事前に分かっている場合はサブファシリテーターを集め、2~3グループをサポートいただけるよう調整しておくとGoodです。
私が観察してきた「意欲の低い参加者」の大半は、積極的に取り組むヤル気は持っていないながらも、誰かに問われたら反応してくださる傾向にありました。つまり適切なサポートがあれば、持っている意欲以上の参加を引き出せる確率が高いのです。
そこでサブファシリテーターの出番です! 主体的に話を展開したり、真っ先に口を開いたり、テーマを深堀りして考えることが億劫でも、誰かが助けてくれるなら取り組める方は意外と多いものです。こういうことって、日常にもよくありますよね。例えば自分一人ではキッチンに立てないけれど、パートナーが横であれこれ教えてくれたら気が楽になったりですとか。
また、対話の深め方をあまり知らない参加者にもサブファシリテーターの存在がよく効きます。話をどう展開して良いか分からなくなった時、人はそっと口をつぐみます。こうした瞬間にサブファシリテーターが道筋を示してあげられると、詰まりが取れたパイプのように、ざざーっと対話が流れ出すものです。
参加者が15名以内のワークショップであれば、メインファシリテーター1名の体制でも対応可能かなと思います。一方で参加者が20名を超えてくると、なかなか一人では見切れない部分が増えてきます。
もしクライアントとの打ち合わせで「参加者の意欲が低い」「口下手な人が多い」「参加人数が20名以上」などの情報を仕入れることができたら、サブファシリテーターを配置できないか検討してみてください。
グループ共有の回数はワークショップの時間に比例するから
今日の記事はかなりニッチな話になってしまったのですが、4~5時間以上のワークショップをリードする際は念頭に置いておいた方が良い内容だと思います。なぜなら時間の長さに比例してグループ共有の回数が増えるからです。
実際2時間くらいのワークショップだとグループ共有の時間も限られるため、あまり問題にならないことが多いものです。
ということで、今日は短すぎるグループ共有をどうリードするかについて書かせていただきました。あなたのワークショップ運営に、何かひとつでも参考になることがあれば幸いです。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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