ワークショップ設計力とファシリテーション力 より重要なのはどっち??

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。きのう上田信行さん・中原淳さん著の『プレイフル・ラーニング ワークショップの源流と学びの未来』を再読していました。

「準備した学びの場・学びの機会」を「完成系」としてとらえるのではなく、むしろ、ファシリテーターやオーガナイザーである人々が、「今、この場で起こっている出来事、参加者の反応」を見ながら、適切にファシリテーションを行なっていく。そうしたオンゴーイングな働きかけ、介入、揺さぶりの果てに「プレイフル・ラーニング」が生まれるのではないかと思います。

という一文がステキで、あらためて、自分自身もこうあり続けたいと思いました。

同時に一つの問いが浮かびました。敢えて順位をつけるとしたら、ークショップデザイナーにとって、完成度の高いワークショップを仕立てられる設計力と、臨機応変なファシリテーション力は、どちらがより重要度が高いだろう??

シャワーを浴びながら考えてみました。

目次

ワークショップ設計力とファシリテーション力は両輪

まずワークショップの設計力が低いパターンから想像を広げてみました。

たとえば、もともとが美味しくない食材は、どれだけ味付けに趣向を凝らしても、そんなに美味しくないですよね。ワークショップの設計力が低いというのはこれと同じで、設計時点でイマイチなワークショップは、どれだけファシリテーションを頑張ったとしても伸び代がありません

次に、ファシリテーション力が低いパターン。こちらはハイオク車にガソリンを入れるようなもので、いくら素敵なワークショップを設計できていたとしても、それを下回る効果しか発揮できません

ですから結論としては、どちらも重要であり、順位付けは難しいと感じました。卓越した設計力と、臨機応変なファシリテーションを兼ね備えていることが、ワークショップデザイナーには求められる、と。

どちらから優先して伸ばすと良いのだろう?

ここまで考えてみたら、新たな問いが湧いてきました。

プロのワークショップデザイナーを目指す人にとって、完成度の高いワークショップを仕立てられる設計力と、臨機応変なファシリテーション力の獲得は、どちらから取り掛かると良いだろう??

という問いです。これは人によって答えが違うかもしれませんが、私は先に完成度の高いワークショップをデザインする力の獲得をオススメしたいと思いました。理由は、臨機応変なファシリテーション力の獲得のほうが、より長い時間がかかると考えているからです。

唐突ですが、私は世阿弥が書き残した能の秘訣は、ファシリテーションに通ずると思っています。代表作のひとつ『花鏡』には、こんな一節があります。小西甚一さん編訳の本から引用させていただきます。

能舞台に登場して、サシなしイッセイなりを謡い出すには、微妙な呼吸があるものだ。早すぎてもいけないし、遅くなってもよくあるまい。まず楽屋から出て、橋掛かりに歩み止まり、観客の様子を感じ取り、一同が、「さあ、謡い出すぞ」と待ち構えているその瞬間をはずさず謡い出すようにすべきである。これすなわち、観客の心が向いたところを受けて声を出すこと、つまり時節感当である。

また、『風姿花伝』には

まず、その日の観客を見ると、今日は能がうまく成功するか、失敗しそうであるかの「きざし」が、きっと有るものだ。

(中略)

何と言っても、観客席がちゃんと静まって、自然に落ち着いてきたときの能には、失敗はないものである。だから、観客席がその気分になってきているか、まだまとまっていないかを察知することは、よほど能の道に通じた人でなくては、なかなかできない

と書かれています。こうした場の空気を察知する力は、一朝一夕には身に付かず、経験を重ねていく他に身につけようがありません。

ファシリテーションの機微もこれと同じで、場を観察するためのアンテナを、時間をかけて増やし続けていく必要があるのです。

ワークショップの設計は型化ができ、1人で反復できる

それに対して、ワークショップの設計はある程度型化することができます。型化ができるということは、習得にかかる時間が短縮できるということです。

また、ワークショップの設計は、個人でできる作業であることもアドバンテージです。ファシリテーションは場に集う人がいないと練習できませんが、ワークショップデザインは個人で反復することができます。

ですから、ファシリテーションの完成は2年や3年では難しいのですが、ワークショップの設計は、適切なフィードバックをもらえる環境があれば、数年間で相当習熟度を高められると思います。

肝心なのはとにかく量をこなすことです。数個程度のワークショップを作るのではなく、50個、100個と大量に作ってみることからセンスが磨かれます。

私自身も「毎日2個のワーク案を考える」という修行を1年間続けた経験があります。これによって、アイデアを発想する力、ワークの良し悪しを見極める力が鍛えられました。

という背景から、もし私が「どちらの能力から伸ばすといいですか?」と誰かに問われたら、まず集中してワークショップデザインを習得したほうがいいよ、とお伝えするだろうなあと思った次第です。今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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