高齢者向けワークショップ の運営ガイド「8つの注意点」

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。先日、70歳以上の参加者に向けたワークショップを複数回開催しました。

私は普段10代〜60代くらいまでの方々へワークショップを提供しているので、いわゆる「高齢者」へ向けたワークショップは初めてでした。この経験からの学びは、高齢者に向けてワークショップを実施する際には、参加者の特性やニーズに配慮することが不可欠という点でした。通常のワークショップと同様に考えるとケガをします。

そのためこの記事では、私が実践から感じた8つの注意点をご紹介させていただきます。以下の8つのポイントに留意いただくことで、高齢者の方へ向けたワークショップをより効果的かつ満足度の高いものにすることができると思います。ぜひ実践の参考にしてください。

目次

投影資料の文字は大きく!

高齢者の視力は年齢とともに低下するため、投影資料やスライドの文字は大きくしましょう。文字が見やすくなることで、参加者は内容を追いやすくなります。特に、後ろの席に座る参加者や視力に課題のある方々にも配慮するために、文字はできるだけ大きく表示しましょう。

実際、私は通常のワークショップよりもフォントサイズを大きくし、万全な状態で望んだのですが、それでも「読みづらい」「見えない」というご意見をいただき、2回目以降はより大きなサイズにしました。具体的には40以上のフォントサイズだと読みやすそうでした。大きすぎるかな? と感じるくらいでちょうど良いと思います。

また、字体にも意識を向けることが重要です。読みやすい太さ、シンプルなデザインのフォントを選ぶことで、可読性を高めましょう。

投影資料はシンプルな装飾にする

高齢者は情報の過多や複雑なデザインについていくのが難しい場合があります。そのため投影資料はシンプルで明快なデザインにして、内容の理解を阻害させないことが重要です。

余計な装飾や派手な色使いは避け、シンプルな背景と、明瞭な図やグラフなどを使用することで、情報の整理と理解をサポートすると良いでしょう。

私は、特に若者向けの投影資料にはイラストなどをたくさん盛り込んで明るい雰囲気を作ることが多いのですが、高齢者の方々には白背景のスライドに文字だけ掲載する程度の簡素さでも十分だと感じました。

音が響きすぎる会場を避ける

聴力は高齢になると低下することが一般的です。そのため会場選びの際には、音が響きすぎる場所や背景騒音の多い場所は避けるようにしましょう。

また、ワークショップの途中での他のグループや参加者の音声が聞こえることにも注意し、集中力を損なわないように配慮しましょう。適切な距離を設けることが重要です。

私がワークショップを開催したのはコンサートなども行われる小ホールだったのですが、音の跳ね返りが良すぎて、逆に参加者の皆さんには聞きづらい状況になってしまっていました。マイクのエコーも良好だったため「反響しすぎて聞き取れない」と困惑される方が多数いらっしゃいました。

音響が良すぎるがために聞こえない、という現象は予想もしていませんでした。結局マイクの音量をギリギリまで下げ、なほぼ地声で乗り越えました。

ワーク中に音楽をかける時は静かな音量で

音楽は人々の気分やエネルギーを変化させる効果があるので、多くのワークショップで使われていると思います。しかし、高齢者にとっては集中力や注意力を乱す要因となります。補聴器をおつけになっている方などは、ワークショップ中に大きな音楽がかかっていると、参加者の発言をうまく聞き取ることができません。

若者の場合は、ノリノリな音楽につられて対話も盛り上がるということがありますが、高齢者の場合は、静粛な環境のほうが集中してワークに取り組むことができます。

もし音楽をかけたい場合は、ギリギリ聞こえるかどうかくらいの、静かなボリュームをオススメします。

1回で説明をしきれると思わず、丁寧に複数回説明する

高齢者の中には会話の聞き取りや、情報の理解に課題を抱えている方もいます。内容の理解を深めるために、説明や指示を1回だけでなく、複数回繰り返しましょう。また、分かりやすい言葉や表現を使うこと、端的にご説明することも大切です。

全体に向けて説明をした後は、各グループを回って、混乱や誤認が無いかを個別に確認しましょう。この際、ワークの内容を復唱しながら回るとより効果的です。実際、1/3程度のグループは指示の理解が曖昧で、個別にお話しすることでしっかりご理解をいただきました。

ワークの指示・説明は、ワークショップの成果を最大化するために不可欠です。参加者が自身のペースで理解できるよう、いつも以上に丁寧なコミュニケーションを心がけてください。

簡単な日本語で伝える(カタカナ語・専門用語はNG)

高齢者の方々には、外来語やカタカナ語を理解するのが難しい場合や、アレルギーが強い場合があります。そのため、普段使っている言葉だからとカタカナ語を乱発するのはNGと思っていたほうが良いです。できるだけ日本語で話すようにし、参加者がスムーズに内容を理解できるよう配慮しましょう。

日本語の基本的な表現や一般的な言葉を使用することで、誤解や混乱を避けることができます。参加者全員が共通の言語で意思疎通できるよう、いつも以上に繊細な言葉遣いを意識しましょう。

専門用語やマニアックな言葉もなるべく使わず、高学年の小学生でも理解できるような平易な表現を心掛けることが重要です。

動作で注目を集める

耳からの情報伝達だけではなく、視覚情報も活用することで、高齢者の方々はワークの内容を理解しやすくなります。ワークショップでの説明やデモンストレーションにおいては、可能な限り身振りやジェスチャーを活用し、参加者の理解を手助けしましょう。

また、グループでの対話が盛り上がっている時は、ファシリテーターの声が聞き取れなくなってしまうことがあります。実際に私は、グループ対話中にどれだけ呼びかけても、こちらへの注目が得られませんでした。こうした時には大声を張り上げるのではなく、手を振るなどして注目を集めることが効果的です。

私は普段あまり使わないのですが「手上げルール」などを導入して、ワークの切り替えを容易にするようなデザインも一考の価値があります。

通常のワークショップより長くワークの時間を取る、休憩時間も長めに

ワークショップの時間設定では、通常よりも長めにワークの時間を確保し、参加者が作業や活動に集中できるようにしましょう。まず説明を理解していただくのに、少し時間がかかります。その後のレスポンスも、2~3テンポゆったりしています。そのため通常の時間配分よりも、1.2~1.5倍程度の時間を見込んでおくほうが安心して進めます。

また、高齢者は疲れやすい傾向があります。歩行のスピードがゆっくりな方も多く、お手洗いへの移動なども時間がかかります。休憩時間も長めに設けて、参加者がしっかりリフレッシュできるよう配慮することが大切です。

ゆっくりとしたペース、十分な休憩を軸にコンテンツを設計してみてください。

まとめ

高齢者向けワークショップを成功させるためには、参加者の特性とニーズに合わせた配慮が不可欠です。

高齢者の方々に向けワークショップを成功させるためには、これらのポイントを心に留めながら準備し、参加者の皆様が充実した経験を得られるよう、思いやりと配慮を持ってサポートしましょう。

ワークショップの目的を達成し、参加者全員が満足する貴重な時間となることを願っています。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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