「相手を待つ」はファシリテーションの基本動作

ファシリテーターには参加者を信じて発話を待つ姿勢と、相手の状態を見極める目が必須

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私は年に何回かオープンなファシリテーション研修を開催しています。講座内の質問コーナーでは毎回のように「参加者が答えに詰まっている時、どうしたら良いですか?」というご相談をいただきます。話を振ったり、質問を投げかけた時に、なかなか答えが返ってこないと焦ってしまいますよね。ましてやワークショップや会議では時間に余裕がないことのほうが多いでしょうから、ファシリテーターとして、チャッチャと進行させたい気持ちはとてもよく分かります。

目次

参加者の内省をしっかり待つことが重要

ですが、この「焦りの気持ち」がトリガーとなることで、陥りやすい罠があるのです。それが、相手が考えている最中に、違う質問を重ねてしまうこと。これによって、参加者がどの質問にも答えられなくなってしまうような場合があります。例えばこんな調子です。

ファシリ

「Aさん、来期の売り上げを20%アップするためには、何に注力したらいいと思いますか?」

Aさん

「あ、はい。そうですねえ…(腕を組んで考えている)」

ファシリ

「………。Aさんは、売り上げ20%アップは可能だと思いますか?」

Aさん

「ん? ああ、ええと、そうですね…」

ファシリ

「………。達成に向けて何か課題はありますか?」

Aさん

「え、課題?(どの質問に答えたらいいんだ…?)」

ファシリテーターとしては良かれと思って質問を継いでいるのですが、このように矢継ぎ早に質問を重ねてしまうと、参加者を混乱させてしまうだけに留まらず、相手を叱責しているようなムードになってしまうことがあります。こうなると穴の開いた風船から空気が抜けていくように、場のエネルギーが一気に萎んでいきます。

こうした状態を回避するためにとても重要なのが、参加者の回答を「信じて待つ姿勢」です。これまでに一度も考えたことがないような難題でない限り、参加者は問いかけに対して何らかの回答をできるはずです。だからじっと待つんです。

考えがまとまり言葉が生まれるまでの時間は人それぞれ

というのも、自分の考えがしっかり言語化されるまでの時間や、論拠を探索するための時間は、状況や個々人ごとにまちまち。こうした最中に他の質問を連続で差し込まれると、やっとつながりかけていた思考がぶつ切りにされ、頭がショートしてしまいます。そうして、どの質問への回答も曖昧なままになってしまい、最終的にはどの質問に答えたらいいのかも分からなくなってしまうのです。こうなると、参加意欲もだだ下がりです。

ですのでファシリテーションをする方には、問いかけた相手が思考を深めているように見える場合は、ぜひその人のタイミングで話し出すことができるまで、相手を信じてじっくり待つことを声を大にしてオススメしたい! これは、どんなに時間が押していても、です。なぜなら発話までの時間を丁寧に待つことができるかどうかは、対話の質と、参加者の満足度に直結するからです。

ただし、参加者が本当に答えに窮している場合は別。問いかけが難しすぎて何も思いつかないようなケースではどれだけ待っていても答えは返ってきませんし、相手を苦しめるばかりです。なのでこうしたケースでは、参加者自身の体験から意見ができるよう質問の切り口を変えたり、Yes or No で答えられるようなクローズド・クエスチョンから段階を踏んだりするなど、何かしらの介入をすることになります。

つまりファシリテーターには、参加者から問いかけに対しての意見が出てこない時、参加者は思考を整理するのに時間がかかっているのか、それとも問いかけが難しすぎて回答不可能なのかを、しっかり見極める目が必要なのです。

ただ、どうしても参加者の状況が読み取れない時もありますよね。そういう時に便利なのが「いまどんなことを考えていました?」という質問です。これを聞くと、その方がいまどんなことを考え、何に悩んでいたかがつまびらかになりますので、対応が容易になります!

まとめると

  • ファシリテーターは相手が発言できると信じて待つことが大切
  • 参加者が答えに窮している場合のみ問いかけを変える
  • 参加者が思考を整理しているのか、困っているのか分からない時は「いまどんなことを考えていました?」と尋ねてみる

ということです。

こういう姿勢を身につけ対応ができるようになると、実はファシリテーター自身も場に臨むのが楽になります。ぜひ試してみていただければ幸いです。今日はここまで!

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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