ワークショップ運営を即興的に楽しめるようになるまでの3ステップ

ワークショップを場の状況に合わせて即興で進行できるようになると成果の次元が変わる

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私は年間で50~60回のワークショップをご提供しています。そのうち20回くらいは終日のワークショップなのですが、こうしたロングのワークショップでは特に、もともと準備していた内容を即興的にリメイクして、予定変更をすることがよくあります。

堀 公俊さんが『ワークショップ・デザイン 知をつむぐ対話の場づくり』で

ワークショップで最も大切なのは、今(Now)、ここ(Here)で起こったことです。 その時その場に「新たに生まれてくるもの」、すなわち創発性こそがワークショップの命です。

と書かれているように、ワークショップの進行中は、常に新しい出来事が生まれ続けています。

これを無視して場を進めるのは、ワークショップの成果や、参加者の満足度を著しく損ねてしまう結果になりかねません。ですから主催者には、最初の予定を手放して、場にフィットするコンテンツを即興で更新し続ける度胸と柔軟性が求められるのです。これは正直簡単ではないです。

時間をかけて準備をしてきたコンテンツを捨てるのは抵抗感が湧きますし、瞬時の判断でワークを組み立て直すためには経験も欠かせません。また、新たな流れでの進行は全てアドリブとなりますから、当然緊張感が伴います。

もう少し突っ込んで言えば、もともと設定していたゴールの先まで到達できるようにリードしていくこと、が場全体から要請されているように感じられるケースすらあります。大変です。

ですがやっぱり、ワークショップの醍醐味は、即興によって想像もしていなかった世界が開くことであると私は思っているのですよね。そして、こうした機会を提供してこそプロ!

なので私は、超積極的に予定変更するスタイルでワークショップのファシリテーションをしています。先日、一緒に場を作っていた同僚から「相内さんは予定変更を心から楽しんでますよね!」と話しかけられたのですが、まさにその通りだなあと思います。

ただ当然ですが、こんな私も最初から即興を楽しめていたわけではありません。長い下積みがあってこそ即興を扱えるようになった自覚があるので、今日はその点について書いてみたいと思います。

目次

ステップ1 「予定通りに、時間ぴったりに」

私が本格的にワークショップを始めたのは大学生の頃で、社会人になってからは27〜28歳がデビュー戦でした。大学時代は比較的タイムキープ緩めでもなんとかなりましたが、社会人になってからはそうもいきません。社会人の参加者はみんな次の予定を抱えているのです。だからまず最初に徹底したのは、しっかりと予定の通りに遅滞なくプログラムを運営することでした。

この頃はワークショップに臨むに当たって、いつ何を喋るか「台本」を作ったりしていたので、とにかく余計なことは挟まず用意した文章を読み上げていたのです。それでも最初のうちはなかなか時間通りに進まないんですよね〜。当たり前ですが、人は自分の想像の通りには動いてくれないんです。駆け出しの頃は、これを理解するまでに少し時間がかかりました。また、私の説明が不十分で、参加者を混乱させてしまった時もありました。

こういう体験を何回も重ねたことで、1年も経った頃には「このワークには15分は必要だな」「これは20分だと時間が余るな」等の勘が働くようになり、ワークショップの時間配分の精度が上がりました。並行して、端的に誤認なく指示を伝えるファシリテーション力が向上し、これらの双方を持って、ワークショップを予定通りに、時間ぴったりに進行できるようになったのです。振り返れば、これが即興に向けた第一歩でした。

ステップ2 「共催者との協働」で即興の予定変更経験を蓄積

ワークショップを予定通りに進行できるようになってくると、(次はどうしよう?)(うまくできるかな?)など、ベクトルが自分へ向いた思考が減って、参加者の様子をじっくり観察できるようになりました。そうすると参加者がもっと盛り上がりたい瞬間や、魚の小骨が喉に刺さったような苛立ちを抱えている瞬間などを捉えられるようになりました。

一度それらを捕捉できるようになってしてしまうと、このままワークショップを進めていいのか? という疑問が湧いてきて、居ても立ってもいられなくなりました。

とは言えこの頃はまだまだ実力が伴っていなかったので、いきなり自分一人の考えでワークショップを変更する能力もなければ、勇気もありませんでした。周囲の納得ーーあの人のアドリブなら絶対間違いないだろう、という信頼感も勝ち得ていませんでした。こういう状態で突っ走ってしまっては危険です。

そこで、何かを変更したほうが良いのではないか、と私がファシリテーション中に感じた時は、共催メンバーとの意見交換を徹底しました。参加者にワークをしていただいている間に感触を確認し合うとか、メッセージグループに変更のアイデアを投げかけて意見を書き込んでもらうとか、こうしたすり合わせを徹底した上で、変更したほうが良いポイントは即興で変えてみる。こういう体験を繰り返しました。

ステップ3 「自分の感性に従って」自由自在にアレンジ

ステップ2を3年ほど過ごした頃だったでしょうか。この頃にはもう、予定変更に対する恐れや不安はほぼなくなりました。むしろ予定変更による成功体験を多く手にしていたので、計画と実際の違いを察知して、即興で場にフィットする内容へとアレンジしていくことが楽しくて仕方なかったように思います。

内容変更の決め手は「感性」でした。もっとこうした方がうまくいくはずだ、という自分の心の内側から湧き上がってくる思いを感じた時は、そのサインに従い、内容の変更を模索したものです。

この頃はちょうどワークショップデザインに燃えていた時期だったこともあり、私はよく、一つの合宿に対して100通りの ワーク案を考えるといった準備をしていました。

合宿本番で使うのは7~8個のワークです。残りのはワーク案は無駄だったのかと言うと全然そうではなくて、計画段階から相当の幅出しをしていたからこそ、現場の状況に合わせて「やっぱりこっちに切り替えてみよう」という判断が容易に行えました。自分の手の中に無限のアレンジ可能性を持てていたのです。

「何かうまくいっていないな」ということは察知できたとしても、新しい球の数が少なければ、適切な軌道修正はできません。その点において、この取り組みは私の自力を高めてくれたと感じます。

長くなったので、今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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