WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。
2020年は自分がワークショップを開催するだけでなく、ワークショップや社内研修などに対しての助言を求められる機会が10回ほどありました。
私は機能するワークショップがもっと日本中に増えたら嬉しいと思っているので、気が置けない仲間からの相談はいつでもウェルカムです。毎回自分のワークショップのように思案を巡らせ、惜しみなくノウハウを提供しています。
そうした中で、ふと気づいたことがありました。毎回必ず「ワークショップのゴールは?」という質問をしている自分がいたのです。付随して「このワークはゴールへ向かうためにどう関係があるの?」「このワークで何を感じることでゴールへつながるの?」といった質問も頻度高く相手に投げかけていました。
私はワークショップをデザインする際、必ず「ゴールを設定すること」から始めます。そのゴールに到達できたら参加者の日常に大きな変化が生まれるだろう! と思える、魅力的でワクワクするゴールを設定できれば、ワークショップのデザインは半分ほど完了したと言っても過言ではありません。
ですが、様々な理由で、そうできていない方が多いということもまた事実です。ゴール設定のない(乏しい)ワークショップは、カーナビも入力せずに見知らぬ目的地へ車を走らせるようなものです。
そこでこの記事では、ゴール設定の重要性について私が感じていることを記載したいと思います。ワークショップ設計の参考になれば幸いです。
ゴール設定の無いワークショップは、目的の無い休日と一緒
ワークショップをデザインする際、まず始めにしなければならないのがゴールの設定です。
簡単に言うと、ワークショップを終えた時に、「誰に」「どんな状態になっていて欲しいか」を明確にすること。なぜなら、ゴール設定が無いワークショップや、設定はしたけれども曖昧になってしまっているワークショップは、かなりの高確率で破綻するからです。
そうしたワークショップでは、楽しいだけで持ち帰れる物がない、やった意味が感じられない、何のために実施したのか理解できないなど、参加者からの辛辣な感想が多くなりがちです。せっかく時間もお金も使ってワークショップを運営したのに、こんな感想をもらったら心が折れそうになってしまいますよね。
でも、この問題は、ゴールを設定するだけで相当緩和されます。中には、「面白いワークや、今話さなければならないトピックを盛り込んだワークをつなげたら良いワークショップを作れるでしょ? ゴールを設定したり、コンセプトを定めたりすることに時間をかけるより、ワークを考える方が大切じゃん」とお考えになる方もいます。その気持ちも分かりますし、一理あると思います。ワクワクを感じないワークや、自分たちが扱うべき議題から逸れたワークからは、イノベーティブなアイディアは生まれません。
とは言え、ゴールをしっかりデザインしないままどんどんワークをつなげていくと、芯が無く、ふにゃふにゃしたワークショップが生まれる可能性が高まります。この状態は「目的の無い休日」と似ています。目が覚めたからとりあえずテレビをつけて、午後はのんびり昼寝して、夜はとりあえず放送されている映画などを見て、気づいたらもう深夜12時近くみたいな、「今日ってなんか、のんびりはしたけど実りはなかったなあ」って1日を、誰しも過ごしたことがあると思います。
それ自体は悪いことではありませんが、「もっと目的を決めて時間を使えば充実したのに」と、ちょっともったいなく感じることもありますよね。ワークショップにおいては、これは致命的な展開だと思うのです。休日はまたやってきますが、ワークショップの機会は基本的に1回のみで、やり直しができません。そのためワークショップの設計においては、しっかりとゴールを定めることが何より大切です。
また、ワークショップはゴールに対して一貫性を持ってワークを配置していくことで、その効果が深まります。面白そうなワークを積み上げていくのではなく、ゴールから引き戻して必要なワークを配置する、つまりゴールまでのプロセスをデザインしていくことが機能するワークショップを作成するコツです。
そのためにぜひ、何のためにワークショップを開催するのか、ワークショップの終了時には参加者にどんな状態になっていて欲しいのかを丁寧に言葉にしてみてください。ワークショップの全ては、この作業から始まります!
余談ですが、私は設計したゴールを、ワークショップの開始時に参加者の皆さんに共有しています。場に集っている全員で一緒に目的地を目指そうとする意識を持っていただくと、ワークの狙いから脱線する確率が軽減されるからです。この時に押し付けがましい物言いをしてしまっては逆効果だし、「そんなゴールじゃ面白くない」とか「これ意味あんのかな」と参加者に思わせてしまうと、そのワークショップは機能せず終わってしまいます。
裏を返せば「そのゴールのためだったら協力したい!」と思ってもらえる魅力的なゴールを示せたら、ファシリテーターと参加者の結びつきが強固になり、場が一気に前進します。
「二兎を追うものは一兎をも得ず」はワークショップ設計にも言える
ワークショップで一番マズいのはゴール設定が無いこと、ゴール設定が乏しいことだと言うことは、先の章でお伝えさせていただきました。この状態をクリアーにするのはとても簡単です。ゴールを設定するだけなので。
実際ワークショップの相談を受けていると、ゴールが無い案件はあまり多くありません。また、少し文言がぼやっとしていても、話しているうちに明確になっていくことが多いです。
ワークショップの相談を受けていて圧倒的に多いのはワークショップのゴールが複数存在するパターンで、実はこれを整理するのがとても厄介だったりします。先ほども書いたように、ワークショップはゴールに対して一貫性を持ってワークを配置していくことで、その効果が深まります。ですがワークショップのゴールが複数存在している場合は、どのゴールに対してワークを配置すると良いかが曖昧になってしまい、中途半端な企画になりがちです。
ゴールが複数存在する状態とは、例えばこんな感じです。
- 社員が自己開示をしあって仲が良くなる
- 現状を打開するイノベーティブなアイディアが生まれている
- 中長期計画を自分事として捉えられるようになっている
- 今後の具体的な行動を各自が描けるようになる
確かにどれも大切です。ワークショップに時間と予算を費やすのですから、一気にまとめてしまいたくなる気持ちは分かります。ですが、これらが並列になってしまっている場合、どの項目に対してプログラムを配置することが適切なのか判断ができなくなってしまいます。社員が自己開示をしあって仲良くなるためのワークと、今後の具体的な行動を各自が描けるようになるためのワークは、全く内容が異なるからです。
氷が溶け切った後のカルピスのような、薄〜いワークショップは本当に面白くないので、私は複数のゴールがあるワークショップ設計の相談を受けた際には、必ず「どのゴールが最も重要ですか?」「優先順位をつけるとしたら?」と尋ねています。そして、一本筋の通ったワークショップを設計できるようお手伝いをしています。
ワークショップの設計に慣れないうちは、二兎も三兎も追わずに、まずは確実に1つのゴールを達成する気持ちでワークを配置するのが吉です。それがしっかりできるようになったら、他のゴールも達成するためにできる工夫はないか、ワークの内容や進行をアレンジできることはないかを思案し、徐々に複数のゴールにも効くワークショップデザインを意識してみると良いでしょう。
ちなみに、私自身が依頼を受けた場合は出来るだけオーダーに沿ってワークショップを設計しますが、やはりゴールが多すぎると感じた時や、同時に達成するのは困難だと感じた時には、腹を割ってクライアントに打ち明けています。上記のような例だと、半日〜1日ほどお時間をいただけたならやり切れると思いますが、2~3時間のショートなワークショップで達成を目指すのは現実的ではありません。この調整こそ、ワークショップデザイナーの腕の見せ所になります。
ゴールに対して一本筋が通ったワーク配置を!
いかがでしたでしょうか。改めてになりますが、ワークショップはゴールに対して一貫性を持ってワークを配置していくことで、その効果が深まります。だからワークショップを設計する際は、まず真っ先にゴールを設定してください。それがワークショップ成功へ向けての第一歩になります。
また、ゴールが複数思いつく場合は、勇気を出して絞るか、優先順位を明確にしてください。いくつものゴールに対してワークを配置すると、ワークショップ全体がぼんやりとしてしまい、機能しない場になる可能性が高まります。
これらの原則さえ守っていればワークショップの土台がしっかりと作られ、そうそう大外れすることはありません。ぜひお試しください。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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