妄想を膨らませるために思いついたことは全部書き出そう
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私は一般社団法人妄想からアイデアを共創する協会の理事として、妄想アイデアトレーニング「モウトレ」という、アイデア発想とコミュニケーションを学んでいただくワークショップをご提供しています。
モウトレでは参加者に「妄想」を楽しんでいただくのですが、妄想が盛り上がるためには様々な仕掛けや要素が必要です。
そこでこのシリーズでは、妄想を盛り上げるために必要なファシリテーターの役割や、ワークショップデザインについて紐解いていこうと思います。今回のテーマは「妄想を膨らませる可視化の力」についてです。
妄想は連想ゲーム
モウトレの中で私がよくお伝えしているのは、妄想アイデア出しは連想ゲームだということです。
たとえば、ペットボトルはどんなことに使えるかを妄想するのがお題で、ペットボトルをバットに見立てたら野球ができる、と閃いたとしましょう。これが連想ゲームの起点になります。
他に野球で使えるとしたら、メガホンの代わりになるかもしれない。応援の打楽器としても良さそう!
他のスポーツにも使えるとしたら、ボウリングのピンはいけそうだぞ。砂を詰めて砲丸投げの球にできないかな。それならダンベルにもなりそう。
振り回すという行動に着目したら、ハエ叩きなんてどう!?
ハエと言えば虫だよな。虫かごにも使えるんじゃない。カメムシを捕獲するのにも便利なんだよね。
このように、ペットボトルが持つ本質的な機能や形状から要素を取り出したり、野球というスポーツの特徴を抜き出し、他のシーンで使えないかを考えてみること、いわばアナロジー(類比)による連想が、妄想をどんどん膨らませてくれるのです。そして、この効果を最大限に発揮するためには、思いついたことを可視化することが極めて重要なのです。
可視化するからインスピレーションが湧く
妄想アイデア出しをしている間、人の思考は次々と飛び回ります。順調に連想が続いている時はそれでいいのですが、問題は連想が止まった瞬間です。
これ以上頭の中だけでは考えられなさそう、と感じる瞬間は誰にも必ずやってきます。その時に、妄想が可視化されているかどうかが、ブレイクスルーを生むか、そこでスタックしてしまうかの成否を分けます。
人間の短期記憶は「マジカルナンバー4±1」だとネルソン・コーワン教授の論文で発表されているように、人は短期的には3~5個程度のことしか覚えておくことができないと言われており、妄想した過程を精緻に留めておける人は稀です。これはせっかくの妄想の起点を水に流してしまっているようなものです。
たとえばアイデア出しのツールのひとつにマインドマップという手法があります。アイデアを出したいテーマを紙の中心に記載し、関連する項目を自由に書き加え、放射状に思考を伸ばしていく手法です。
マインドマップの効能は、書き出したキーワードを俯瞰して眺めているうちに、思いも寄らない結合が生まれて、新たなインスピレーションが生まれることです。これは考えたことが全て紙の上に書かれているから、つまり思考の可視化ができている状態であるからこそ起こります。
同じように、可視化された妄想のアイデアは、限界と思われた地点からさらに妄想の飛距離を伸ばすための足がかりとなります。もうこれ以上アイデアが出せそうにないと思っても、それまでに出されたアイデアを眺めているうちにアナロジーが起動して、思いも寄らない飛躍を遂げることはよくあります。
そして、もう限界かもしれないと思った以降に生まれるアイデアは、既存の思考から遥かに離れていることが多く、とてもユニークであることが多いものです。この事実を知っておくと、アイデア創作はさらに面白くなります。
妄想アイデアトレーニング「モウトレ」では、こうした背景から、浮かんだアイデアをMouma.bizというサイトに全て入力していただき、一覧で眺めることができる仕立てにしました。
妄想に行き詰まったら紙とペン
ここまで、妄想を膨らませる可視化の力について書かせていただきました。
私は毎年50個以上のワークショップを創作してきたのですが、スラスラとアイデアが出る回もあれば、全くインスピレーションが湧かずに苦戦する回もあります。そうした時には頭を抱えウンウン唸っていてもダメで、紙とペンを使ってとにかく思いついたこと、自分の中に湧いてきたことを書き続けるに限ります。
そうすると自分の思考が整理され、アイデアがまとまり、短時間で良い構想を練ることができるものです。ぜひ皆さんも、可視化の力を最大限に活用してみてください。
妄想が膨らむ場作りに必要な要素をご紹介するシリーズ、第六弾はここまでとなります。次回は「量は質に転化する」というアイデア出しの鉄の掟について書いていこうと思います。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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