ワークショップデザインの精度を高める「健全な疑いの姿勢」

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。お盆休みをささるアイディア なぜ彼らは「新しい答え」を思いつけるのかを読みながら過ごしています。クリエイティブ書籍編集家の松永光弘さんが、トップクリエイター15人から、アイデア出しのノウハウや、哲学を聞き出している本です。私も毎週新しいワークショップをクリエイトしているので、語り手と自分とを比較しながら、とても勉強になっています!

今日はこちらの本の中で、思わず膝を打ったポイントをご紹介したいと思いました。川村真司さんが語り手の第2章です。

まずやるのは、クライアントからの課題を疑うことです。たとえば広告なら、こういうメッセージで、こういうCMをやりたい……といった課題があるわけですが、本当にそれで抱えている問題を解決できるのか、ということを考えます。自分なりに納得がいけば、そのままアイディアを考えはじめますが、もしそこで疑問があれば、クライアントに投げかけて確認したり、プレゼンのなかで別方向の案として提案したりもします。

この点がワークショップをデザインするプロセスとピタリと一致していると思ったのです。

目次

依頼主の声に全力で耳を傾けつつ、問いかけを通じて理解を深める

ワークショップデザインにおいて欠かせない「参加者情報」の最大提供者は、ワークショップの依頼主です。そのため、ワークショップデザイナーは依頼主の声に耳を傾け、参加者にとっては何が課題で、何が実現できたら望ましいか、何が現実に違いを作るか等をしっかりとつかむことが重要です。

ただし、依頼主の現状認識がいつも絶対に正しいと盲信することは、残念ながらNGです。というのも、依頼主が認識できている範囲、見えている事象は全体のごく一部に過ぎないからです。

また、どんな人でも大なり小なりのアンコンシャス・バイアスを持っており、それによって認知が歪められている部分が必ず存在してしまうものです。そのためワークショップデザイナーには、「問いかけ」を駆使して、依頼主の現状認識を健全に疑ってみることから、一つ一つ状況を整理していく姿勢が求められます。

私は、中でも組織開発のワークショップはとりわけ集中して現状認識に努めています。

例えば「とても静かで意見を言わないんです」と聞いていた若手社員たちが、ワークショップではものすごく饒舌だったとか、

「あのオジサンたちは熱意なんてないんですよ」と聞いていた役職者が、涙を滲ませながら会社の未来を語ってくださったりとか、

組織開発の案件では、依頼主からお聞きしていた状況と違うなあ、と思わされるケースが他のワークショップに比べ多いと感じるからです。

対象者との距離感・人間関係の状態が「現状認識」に直結している

依頼主の現状認識がズレる理由は大きく2つあります。

1つ目は依頼主と対象者との距離感です。依頼主が日頃から接している方が参加者の場合は、あまり現状認識がズレません。「私の部にワークショップを提供して欲しい」などのご依頼は、高確率で参加者の様子を精緻に把握することができます。

ですが隣の部署であるとか、県外のメンバーであるとか、依頼主との距離が遠い方や、日常的な接点に乏しい方が対象となる場合は現状認識のハードルが高くなります。こういうケースでは、依頼主の現状認識が「伝聞」に寄りすぎている可能性があります。ですから「〜〜〜らしいんですよ」という伝聞系の共有には注意して話を進めなければばりません。

もう1つは、依頼主と対象者の人間関係です。お互いの関係が良好である場合は比較的フラットな情報が手に入りやすいのですが、敵対関係になってしまっている場合は困難を極めます。

まず依頼主が現実以上に参加者を「悪化」させて語りがちです。あの人たちは意識が低いとか、いつも足を引っ張るとか、やや抽象的なワードと結びつく場合が多く、こういう類の悪口・愚痴・自己正当化が見られた際は警戒しましょう。本当はそこまで酷くない、ということがよくあります。

また、参加者と敵対関係にある依頼主は、参加者の「本当の顔」を見せてもらえていないケースが圧倒的に多いです。私も経験がありますが、人は嫌悪感のある相手には攻撃的に接したり、感情を殺した機械的なコミュニケーションに徹っしたりと、何らかの防衛手段を取るものです。そのため「参加者の今の姿」を正しくつかむことが余計にできなくなるのです。

「本当の状況」をつかむアンテナの精度が成否を分ける

ワークショップは、依頼主のバイアスを差し引いた「フラットな現実」を見つけられるかどうかが成果を分けます。フラットな現実を見つけることができれば、ワークショップのコンセプトがはっきりしますし、ゴール設定もズレません。場合によっては、全く別の案をご提案することも可能になります。当然ワークショップの空間は素晴らしいものになるので、依頼主にも、参加者にも大変喜ばれます。

参加者の置かれている本当の状況を正しくつかめるかどうかは、ワークショップデザイナーが備えているアンテナの精度に大きく左右されます。

この感受力を磨くためには、依頼主から共有いただくお話に耳を傾け全肯定するマインドと、もう片方で「本当にそうかな?」「この手段で解決できるかな?」と鵜呑みにしないマインドを健全に同居させておくことが必要です。

そして、違和感を覚えたポイントをスルーしないで、なぜ疑問に感じたのか、おかしいと思ったのか、もやっとしたのかを言語化しきること。これの繰り返しによって、アンテナは感度を増していきます。ワークショップデザイナーとしての活躍を目指されている方には、ぜひ何度もトライしていいただきたいトレーニングです。

長くなってきたので、今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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