「相互承認」と「触発」の体験がワークショップデザイナーとしての原点

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。先日、大学時代に「ラボ蔵王キャンプ」を運営してきた仲間と連れ立って、久しぶりに蔵王高原を訪れました。

私は小学校1年生からこのサマーキャンプに参加し始め、大学4年生までの約15年間、毎夏蔵王に通ってきました。高校2年生からはリーダーとしてグループの運営を、大学生からはキャンプ全体の運営を担当。文字通り、蔵王に育てていただきました。

キャンプの運営からは、ワークショップデザイナーとしての仕事に直結する「ファシリテーション力」や「企画力」が身についたのはもちろんなのですが、とりわけ得難い経験だったなと感じているのが、数え切れないほどの「相互承認」と「触発」を体験したことです。

ワークショップデザイナーには、①場に良好な人間関係を紡ぎ出し ②活発な相互作用を通じて ③予想もできなかった成果を生み出すこと が期待されますが、このプロセスって、私がキャンプで味わってきたことそのものなんですね。

ビル・ゲイツは幸運にも、若いうちから最新のコンピューターにアクセスできる環境があったことで、マイクロソフトという一大企業を作り上げることができた、とこの本で読んだ記憶があるのですが、

私もこうしたワークショップに欠かせない要素を幼少期から何年も続けて経験できたことは、ワークショップデザイナーとしての自分にとって、とても大きなアドバンテージになっていると感じます。

なぜなら、私の「場作りの価値観」と、「場が持つ力を信じるマインド」などは、これらの経験によって、自然と醸成されたと思うからです。

今日はワークショップを感動的な場にするための重要な観点を2つ取り出して、キャンプの思い出と重ねてみようと思います。

目次

お互いのありのままを認め合える空間

まずは相互承認についてです。ワークショップでは、お互いの背景や価値観を尊重し、互恵的に学び合う姿勢を場に浸透させることがとても重要です。

私はこうした場のムードをとても大切にしたいと感じているのですが、その源には、キャンプを通じて見知らぬ人どうしが短時間で家族や恋人のように深くつながる瞬間を何度も味わってきたことがあります。

ラボでは、お互いのありのままを承認しあうコミュニケーションが前提で、ごく普通に個性が受け入れられていました。敬語は禁止というルールに代表されるように、年齢の上下を問わず、それぞれを尊重する文化が根付いていました。フラットインポータンス(重要性の平板化)を常に感じてきたのです。

キャンプという特殊な環境は、これらの点を更に増幅させます。会ったばかりのキャンパーどうしが、年齢も性別も国籍も一瞬で飛び越え、10年来の友人のように仲良くなってしまうのです。しかも、どのキャンプでも、どのグループでも!

私は蔵王キャンプに15回、黒姫のキャンプに10回ほど参加したのですが、不仲だったグループは記憶にありません。最終日のキャンプファイヤーや、各グループ毎に行う別れの集いでは、キャンパーのほとんどが大粒の涙を流して別れを惜しむことが普通の光景でした。

こんな奇跡みたいなことが起き続ける空間は、学校や部活、バイトなど、私が生きてきた他の場所には存在していませんでした。

この強烈な原体験が、私に「お互いが心から繋がりあえる空間を私のワークショップの当たり前にしたい」という思いを呼び起こさせるのです。

純粋なシェアが生み出す触発の連鎖

次に触発についてです。ワークショップの重要なパートである「わかちあい」の時間は、参加者それぞれが純粋な思いを語ることによって深まります。純粋な思いは聞き手の心を動かし、よりオープンなシェアを促してくれるものです。

誰かのピュアな思いに触れることで、場に触発が生まれ、予想を遥かに超えた感動が生まれることを、私はワークショップの醍醐味だと思っています。こう思うに至った原体験も、キャンプの中にありました。最後の夜、グループ毎に開かれる「別れの集い」で味わった感動体験が、私のコアになっているのです。

別れの集いは、30人ほどのキャンパーが活動部屋で一重の円になり、それぞれ感想をシェアしていきます。ゆうに1時間はかかりましたが、夜の静けさと相まって、それぞれの思いにじっくり耳を傾けられる、とても素敵な時間でした。

自分の腑甲斐なさ・至らなさを悔いるリーダー、黙っていたけれどこれが最後のキャンプだとカミングアウトする年長者、緊張して来たくなかったけれど友達が出き嬉しかったと吐露する初参加者など、夜の活動部屋には、嘘偽りのないシェアが溢れていました。

こうしたクリアーなシェアは、場に大きな変化を生み出します。次の話者へと影響を与えて、元々話そう/話せると思っていたことを超えた、より繊細な思いが口を突き、その勇気に胸を打たれた次の話者が、また自分を打ち明けるという触発が起こるのです。その後には、純度の高い感謝や感動だけが残りました。

私は、こういう素敵な時間を、自分のワークショップの中に再現したいなぁと思うのです。

濃い体験を自分の真ん中に持とう

こうした体験が自分の中に存在していることによって、私のワークショップの「あるべき姿」が規定されていて、それがクオリティの担保に直結しています。

だから、もしワークショップデザイナーを目指す若者と出会ったら、「規範となる理想の場」と出会い、それを再現するにはどうしたら良いかを考え尽くすことをおススメしたいです。

そのためには、たくさん外に出て、自分の五感を通して場を味わい尽くすことが欠かせないので、ぜひ若いうちは、様々な体験を自分に積ませてあげて欲しいと思います。

コロナの期間はこうした貴重な機会が奪われてしまっていただけに、下火になってきた今を好機と捉えて、感動体験を味わってきてほしいなあと思うのです。

久しぶりに蔵王の記憶が開いて、こんなことを書きたくなりました。今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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