ワークショップでの閉塞感を打破しブレストを促進する『ペア対話』

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。

先日、ワークショップの参加者7~8人でブレストを行う時間があったのですが、さっぱり盛り上がりませんでした……

2時間ほど時間をかけ、大量のポストイットを使ってアイディアを出してきたのにも関わらず、みんながお互いの顔色を窺ってしまい、積極的な発言が生まれなかったのです。

(ふむ。これは介入が必要だな)

閉塞感のある場を打破するため、私の頭に浮かんでいたのはペア対話に切り替えるというシンプルな方法でした。状況によっては意見が出るまでじっと待つ姿勢も大切ですが、今回の場合は対話のデザインが参加者とマッチしていなかったと感じられたからです。

機能しない対話のデザインを引き伸ばしても、あまり良いことはありません。この判断が奏功して、各ペアからたくさんの意見が共有され、無事に素晴らしい成果を生み出すことがでました!

全体で意見を出し合うと盛り上がらないという状況は、ワークショップに携わったことがある方だったら誰しも体験したことがあるかと思います。

私は事前に設計した流れを参加者に合わせてその場で繋ぎ直すことが多く、アドリブで修正を行うスタイルを5~6年続けてきたため、知見の蓄積が相当数あり、状況を打破するクリエイティブなアイディアが感覚的に浮かんできます。また、私は普段はあまり気が大きくないタイプですが、ワークショップの運営に関しては大胆に、ドラスティックに流れを変えることに抵抗がありません。

でもそういうタイプではない人、あるいはワークショップを始めたばかりの方が運営していて、対話が盛り上がらない時間に直面したら、冷や汗でシャツがびしょ濡れになってしまうくらいにドキドキするだろうなと思いました。そして、こうした状況が続けば、もうワークショップの運営をしたくなくなるだろうとも……。

ですので今日は、ワークショップ運営の参考になればと思い、全体ブレストが行き詰まった時は、ペア対話に切り替えることで意見交換が活発になる時がある、ということを書いていきたいと思います。全てのシーンで万能なテクニックではないのですが、状況を転換するための武器の一つとして持っておくと便利ですし、ワークショップだけに留まらず、日常の会議などでも使えると思いますよ。

目次

全体でのディスカッションが盛り上がらないケースと、ペア対話への切り替え時

始めにですが、全体での対話が盛り上がらない状況にはいくつかパターンがあります。

運営者側の要因としては、場に緊張感がある、参加者がどこに向かっていいかわからず迷子にさせている、意味を感じさせない進行になってしまった、ワークがつまらなくて白けさせてしまった、前提となる対話が不十分で共有すべきことが生まれていないなどの場合が考えられます。

参加者側の要因としては、参加意欲が著しく低い、チームコンディションが悪い、聞かれるまで意見を言わない受け身な傾向、自信が無いなどが挙げられます。

そのため、場の状況を転換しようとする時は、まずどんな理由で閉塞感が漂っているのかを見極めることが重要です。

例えば(このワークショップはどこに向かっているんだ? 今私たちは何をしたらいいんだ?)と参加者が不安になってしまっているような状況でペア対話に切り替えても、状況は好転しません。

ペアでの対話は、良くも悪くも素直に自分が感じていることを言いやすくなるため、「このワークショップは全然ダメですね。そう思いませんか?」な〜んて、火に油を注ぐように、ペア対話が批判大会に変質してしまう危険すらあリます。

私の感覚を図にしてみるとこんな感じです。

このように、既に話せる材料があるはずの状態で、参加者が緊張しているとか、自信がなさそうな場合は、ペア対話に舵を切ることが多いです。

ペア対話のメリット・デメリット

次にペア対話のメリットとデメリットです。まずメリットですが、ペアでの対話は、全体では言いにくかった素直な気持ちを吐露しやすくなります。また、一人に与えられる発言時間が多いため、しっかりと考えを伝え合うことができ、それによって満足感が向上するということが起こります。

デメリットとしては、ファシリテーターが会話の内容を把握したり、脱線した会話を続けないように介入するのが難しくなるということがあります。グループ単位で会話をしている場合は、それぞれのグループの雰囲気が掴みやすく、なんかまずいかも、と感じたグループのやりとりを横で聞いていてもそう邪魔にならないのですが、ペアの横に立ってじーっと話を聞いているのはかなり無粋です。そのためペア対話の成果は、フタを開けてみないと分かりにくいです。

また、使い時を間違えると、更に場が沈みます。グループ対話は参加人数が多い分、うまく盛り上がっていない時に「みんなで頑張ろう!」とリーダシップを発揮してくれる参加者が現れる可能性も高いのですが、ペアの場合、2人が(まあいっか)と思った時点で終了です(笑) シャイな人どうしがペアになると、お互いにモジモジしている間にタイムアップということもあります。

だからペア対話って全然万能なわけじゃないです。でも適切な使いどころで起用すると、すごく大きなパワーを発揮してくれます。

参加者の状況にマッチした対話のデザインが重要!

「なんだ、結局どうしたらいいんだ?」と思わせてしまうような、歯切れの悪い記事になってしまった自覚があるのですが、お伝えしたいことは一貫しています。全体ブレストが行き詰まった時は、ペア対話に切り替えることで意見交換が活発になる時があるということです。

「その時」を見極め場を転換するためには、どんな理由で全体が盛り上がっていないのかを感じること、そしてペア対話のメリットとデメリットを理解している必要があります。例えば火や薬などは、適切に使えばとても素晴らしい効果を発揮してくれる一方、使用を誤ると大変な損害につながってしまいます。私はワークショップで選ぶワークや、対話のデザインも、それと全く同じだと思うのです。そこで、この記事では私が感じているペアワークの効能と、リスクについて描いてみました。

ワークショップの流れをアドリブで修正していくことは、最初は勇気が要ると思いますが、うまく行けば病みつきになりますし、ワークショップをリードすることが更に楽しくなると思います。ワークショップデザインの各効能を理解した上で、参加者の状況にマッチした方法へアドリブで切り替えることができる方が増えたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。あなたのファシリテーションに、何か役立てば幸いです。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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