難しいテーマを扱うワークショップは「身近な問い」から始める

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私が小さかった頃の仙台はエアコンを使わなくても過ごせる日が普通にあり、登米の祖母の家には扇風機しかありませんでした。団扇と扇風機で十分だった記憶がありますが、今はもうエアコンなしでは生きていかれないですね。この顕著な気候変動は、人類全体にとってとても深刻な課題だと考えざるを得ない毎日です。

最近はSDGsが声高に叫ばれているので、こういう「地球温暖化」とか「男女共同参画」といったような類の社会課題に関する大きなテーマって、しばしばワークショップで扱うことがあるんですよね。

社会全体をアップデートしていくためには、一人ひとりのアップデートが欠かせません。ですからこうしたテーマをワークショップで扱う意義はとても大きいと思うのですが、梯子の掛け方を間違うと、まったく思考が深まりません

大事なのが「問い」のデザインです。

目次

社会課題がテーマなだけで参加者は身構える

どういうことかと言うと、社会課題の解決って、個人が背負うにはとても大きすぎるテーマなので、いきなり解決策を考え始めようとしてもうまくいかないんですね。

参加者も当然「解決がムズカシイ」という認識で対話の場に来られます。そうした方々にいきなり大上段の問いから切り込むと、一気に場が萎んでしまいます。

大上段の問いというのは、「どうしたらこの社会課題が解決できますか?」という問いです。

これを参加者にいきなり問うと「それが分かれば苦労しないよ…」と気持ちが冷めてしまったり、「私なんかが考えられることなんてたかが知れているよ…」とネガティブな感情を誘発してしまいがちです。

もし冒頭でこれをやっちゃうと、その日のワークショップの成果はほとんど見込めないですね。

(※まずは「全く考えられない」ということを実感していただき、情報をインプットし、マインドの変化を仕掛けて、もう一度考えていただく等の流れを意図的にデザインしているのであれば別ですが)

扱うテーマと参加者の心の距離を縮める

多くの人は、社会課題と自分の間に、けっこうな心の距離感を持っています。温暖化も男女共同参画もニュースや会社の中で頻繁に扱われるので、その存在や背景はもちろん認識されていますが、それらを本気で自分事としてと向き合っている方は稀です。

そのためワークショップの冒頭では、まず始めに「扱う社会課題と参加者の心の距離」を縮めていく必要があります。

たとえば、温暖化の深刻さを再確認できる動画を見ていただくとか、課題の解決に従事されている第一人者をお招きしてお話をしていただくなどの手段があります。動画や生語りのパワーはとても強く、短い時間でも瞬時に参加者と課題の心の距離感を縮めてくれます。

ただし、時間と予算がかかりますから、毎回実現できるわけではありません。

だからこそ「問い」です。問いを自在に操ることができると、参加者の興味関心を社会課題へと繋ぐことが容易になります。

知っていること 感じていること 身の回りで起こっていること

具体的には、①自分が知っていること ②自分が感じていること ③自分の身の回りで起こっていること を尋ねる問いを立て、参加者に身近な範囲のことを探索していただくことがよく機能します。

これらは自身の半径5mくらいを集中的に見渡すため、とても楽に考えることができ、また開示もしやすいのです。

以下に、地球温暖化をテーマにした問いの例を書いてみます。

知っていること

  • 地球温暖化について知っていることは?
  • 最近見聞きした温暖化が関係するニュースは?
  • 温暖化によって誰が困っている?
  • 温暖化の影響を最も受けそうな食べ物は?
  • このまま温暖化が進むと何が起こる?

感じていること

  • 温暖化について感じていることは?
  • 温暖化についてのあなたの気持ちを漢字1文字で表すなら?
  • 温暖化の深刻さを10段階で表すとしたら?
  • 10年後の夏はどんな世界になっていると思う?
  • このまま温暖化が進むとどんなことが心配?

身の回りで起こっていること

  • さいきん地球温暖化を実感した出来事は?
  • 温暖化によって変わった自分の行動・思考は?
  • 温暖化によってあなたが困っていることは?
  • 温暖化はあなたの仕事や家族にどんな影響を与えている?
  • 酷暑を乗り切るために工夫していることは?

    丁寧な問いづくり〜プロセス設計が対話を盛り上げる

    こうした問いを駆使することによって、参加者自身の記憶が開き、興味関心の対象が明確になり、自分の身近にも様々な課題が存在していることに意識を向けられるようになります。

    また、難しいテーマだ…、と身構えて参加している方々の緊張をほぐし、ガードを緩める効果もあります。立派なことを言わなければならない感覚に囚われたままだと対話はなかなか弾みませんが、こうして自己開示をしあうことで共感が生まれ、場の心理的安全性が高まります。

    ですから、このような問いから対話を始めていくことは一見すると遠回りに感じますが、機能する対話を作るためには欠かせないプロセスなのです。

    これは社会課題をテーマとして扱う時だけに留まらず、参加者にとって扱いが難しいテーマ、心理的な距離が遠いテーマでも同じです。焚き火は少しずつ薪をくべて火を大きくしていくように、対話も急には盛り上がらないのです。

    今日はここまで。

    対話をもっとおもしろく。

    相内 洋輔

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