参加者の不満を遠ざけるワーク選び 5つのポイント

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。

私は東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科でワークショップやファシリテーションについて講義をしているのですが、先日学生から「こんなワークは避けている、というポイントがあれば教えてください」という質問をいただきました。

とても良い観点だなと思いましたので、この記事では私が避けているワークの特徴をご紹介します。少し抽象的に思われるかもしれませんが、判断軸としてご活用いただけましたら幸いです。

目次

新鮮味が無い(使い古されている)ワーク

まず真っ先に浮かんだのが、新鮮味が無いワークです。ワークショップの参加者は大なり小なり「今日はどんなことをするんだろう」と楽しみな気持ちで会場に来てくださっていると思います。

フレッシュな発見は、フレッシュな体験からこそ。そのため私は、ネットで検索したら上位に掲載されているようなアイスブレイク、ワークなどは、使い所や割合をよくよく考えるようにしています。出来る限り、前に参加したワークショップと変わらなかった、というこがないようにしたいのです。

特に震災後の東北では、町づくりの対話が頻繁に行われてきました。これは正直に言って玉石混交で、粗悪なワークショップも乱発されていました。ここでよく使われていたのが、ワールドカフェやポストイットを用いたブレストです。その結果、東北では未だに、これらの手法にアレルギー反応を示される方もいらっしゃいます。

私はこうした背景に立ってワークショップをご提供しているので、過去の焼き増しの場になることがないよう、かなり気を遣っています。

ただ、中には当然、オーソドックスなワークを中心にしてワークショップをご提供する時もたくさんあります。ワールドカフェは参加者どうしが馴染みやすいですし、OSTは個別の対話ニーズに寄り添うにはピッタリな手法です。

こうしたオーソドックスなワークをご提供する時は、提示する「問い」の鮮度を高める工夫をして、フレッシュさが失われないように気をつけています。

経験済みの方がいる可能性が高いワーク

新鮮味が無いというポイントと近いのですが、経験済みの方がいる可能性が高いワークも慎重に使うようにしています。

アイスブレイクにしてもメインパートにしても何らかの狙いがあってワークを配置するわけですが、この狙いが未達に終わるパターンの一つが、そのワークを既に経験したことがある参加者の存在です。

例えば、みんなで真剣に考えないと答えが出ないようなワークなどは、みんなで頭に汗をかきながらワイワイ取り組んでいただくことに価値があるわけです。ですがこのワークを経験したことがある方が混じってしまうと、解法を知っているため協働体験が生まれない可能性があります。こうなってしまっては、答えを知っている方にとっても、知らなかった方にとっても、全く価値のない時間になってしまいます。

ワークショップは、協働体験を通じた合意形成や他者理解のエクササイズの場です。そうした場を担保するためには、参加者それぞれが、ほぼ同じ位置からのヨーイドンとなるような配慮が必要です。

理解するまでに時間がかかり過ぎるワーク

次いで避けているのが、内容やルールを理解するまでに時間がかかり過ぎるワークです。ワーク開始までの説明が長過ぎると、せっかちな方はイライラし始め、のんびりな方は心ここにあらずな状態に陥りがち。

人は他者のピリピリしたムードや、気持ちが離れた雰囲気にとても敏感です。しかもこういうムードって、会場内の空気を伝って様々な人にすぐ伝染します。つまり、会場全体を「結果の出ない空間」に劣化させてしまうのです。

また、人は一度の説明で理解できることには限りがあります。説明の時間が長ければ長いほど、ワークの内容を微妙に履き違えてしまう参加者が増え、体験の質が低下します。

もしどうしてもこのようなワークを扱いたいなら、いくつかのパートに分けて実演しながら伝えるなど、何らかの工夫を施しましょう。

能力や経験の差が出過ぎるワーク

能力や特性、経験の差などが顕著に現れ過ぎてしまうワークにも注意が必要です。話がシンプルになるよう、あえて身近な例を挙げてみますが、たとえば絵を描く、音階を当てる、リズムに乗るなどは、できるできないの個人差がかなりありますよね。ちなみに私は、どれもうまくできません。

こうした構図になりがちなワークを取り入れると、すごくできる人と、全くできない人の明暗がクッキリ分かれてしまいます。ここで問題なのは、うまくできない人のコンプレックスが刺激されてしまうことです。それによって自己効力感は下がり、心理的安全性を感じられなくなって、主体的な参加意欲が大きく減退してしまいます。百害あって一利なしです。

少し話が逸れますが、私のワークショップでは、個々人の解釈の違いを楽しむことを目的に絵を書いていただくことがあります。この時は絵を書いていただく明確な目的と、上手い下手は一切関係ないということを何度もお伝えしてからワークを始めています。

もし、能力や経験の差が強く出てしまうワークを盛り込む時は、実施目的(何を体感いただきたいか)と、巧拙は関係ないということをしっかり伝えることをオススメします。

※分かりやすい例示のために、絵を書く、リズムに乗るなどを挙げましたが、これらをワークショップで使うのはNGという意味では全くありません。

後味が悪くなる・誰かが傷つくワーク

最後に挙げたいのがこちらのポイントです。このポイントはかなり抽象的になってしまうのですが、私は「このワークをやっていただいて、後味が悪くならないかな? 誰かが傷ついたりしないかな?」という点をかなり気にしています。

ワークショップから新たな展開を生み出すためには、これまで抱えていて言えなかったネガティブな感情や、自分の価値観に沿った主張をお互いに言い合えることが重要です。

ですが、それが個人攻撃になってしまったり、責任転嫁になってしまったり、あるいは絶対に解決が不可能なことに話が終始してしまったりすると、対話の場の熱量はあっさりと失われます。そうならないような線引きが絶対に必要です。

このラインは、個人個人の感覚による部分がとても大きいと思うので、なかなか具体的なことを書くのが難しいのですが、一つのチェックポイントとして判断の材料にしていただけましたら嬉しいです。

どうしてこんなことを書くかと言うと、ポジティブに閉会していくワークショップの流れが、私は好きなんですよね。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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