『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』から考える傾聴の重要性

他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論

NEWS PICKS PUBLISHING 宇田川元一

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対人関係における悩みの大半は、突き詰めると、「他者は自分の思う通りには動いてくれない」という一点に尽きるのではないでしょうか。理解しがたい相手の行動は、心をざわつかせ、ストレスを一気に増大させます。でも、他人を変えることはできないので、やり場のないモヤモヤしだけが残りがちです。

『他者と働く』は、こうした課題を対話によって解決することの重要性と、具体的なプロセスを丁寧に教えてくれる一冊です。「HRアワード2020」書籍部門の最優秀賞を受賞されているので、ご存知の方も多いと思います。

著者の宇田川さんは、対話を「相手との間に新たな関係を生成させるべく橋を架けること」とご紹介されています。このプロセスは、自分の立場からは何が見えるか、相手の立場からは何が見えるかを、まず双方ともに受け入れてみることから始まります。

自分の中には自分の現実があり、相手の中には相手の現実があります。面倒に思うかもしれませんが、それらをテーブルの上に並べて、承認しあい、お互いにとっての意味を検討してみること。健全な信頼関係は、こうした土台の上に築かれます。

上記のような対話を機能させるためには、「心理的安全性」が欠かせません。私は感じていることを発言してもいいんだ、自分のままで存在していても大丈夫なんだと思えている時、人は心に根ざしたリアルな声を発露することができるようになります。そうした発言は、時に雷のように人の心を打って、周囲の人々に変化を促すものです。

心理的安全性を醸成するためのポイトは幾つもありますが、要となるのは「相手の話を聴くこと」です。相手を受け入れるだとか、相手の言い分を呑むとかいうことではなく、自らの主張や感情は脇に置いて、ただとことん聴くこと。自分のことをしっかり聴いてもらえたという体験は、大袈裟ではなく、人生そのものを変えるほどパワフルです。もちろん、聴き切った側にとっても、です。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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