「認識ずれを解消する対話」が組織を前に進める

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。

今年はiU情報経営専門職大学の客員教授に任命いただき、妄想アイデアトレーニング「モウトレ」を中心に、新規事業やイノベーションについてお話しすることが多くなってきました。

これらの分野に関して私はまだまだ知識不足。日々勉強している次第なのですが、先日ふらっと立ち寄った本屋で平積みされていた新規事業着工力を高めるという一冊、これがもう本当に良書でした!

私は本を読む際、大事なポイントが書いてあるページの右上を折り、再読する時の目印としているのですが、『新規事業着工力を高める』にはほぼ全ページに折り込みがついたくらいです。自分が学びたかったことの全てがここにありました。

大学以来ずっと『考具』と『センス・オブ・ワンダー』の2冊をバイブルとして抱えてきたのですが、きっと3冊目のバイブルとなるだろうと、感動に震えています。

組織で働くリーダー以上の役職者には必ずこの本を読んで欲しい! ぜひご興味があればご一読ください。

この記事では、ワークショップデザイナーとして同書に強く共感した点を起点に、ワークショップの持つ重要な役割について書いてみようと思います。

目次

人は同じ言葉を使っていても想起するものが違う

私が取り上げたいと思ったのは、著者の内田さんが書かれている「新規事業がうまくいかない原因」です。

こちらの章には新規事業が頓挫する理由がいくつも書かれているのですが、今日はその1番目、「新規事業に関しての理解が不十分、あるいは関係者間で理解にずれがある」という項目をご紹介します。

さらに、トップから現場までの関係者間で新規事業に関しての理解や認識が揃っておらず、同じ概念、単語でも異なるイメージを想起してしまう場合も少なくない。このような状態だと、新規事業に関しての適切なコミュニケーションや議論、正しい意思決定をするのは難しい。

『新規事業着工力を高める』より引用

こちらは同書からの引用になりますが、こうした前提の不一致からミスコミュニケーションが誘発され、プロジェクトの進行が阻害されている場所って、実はワークショップデザイナーの活躍しどころだと私は思っています。

対話が求められる背景には、何かしらの相互不理解が潜んでいることが多いのです。

組織では様々な認識が自然とずれていく

たとえば、よくご相談されるものの一つがミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。

MVMの理解が個人ごとにまちまちなので、パワーのかけどころ・目のつけどころが分散してしまい組織力を発揮できていない、とワークショップでの理念浸透をご依頼いただくことはとても多いです。

私は新卒でリクルートに、転職してソフトバンクにお世話になったのですが、両社ともミッションやビジョンの浸透にはかなり力を入れている会社でした。社員がみんな同じ方向を向き、同じ言葉で語り合えることから、強い突破力が備わっていた組織だったなと思います。

一方で、こうした状態を作れていない組織は、前述の通り、世の中にたくさん存在しています。また、新人育成の方針や役職者の役割などもいつの間にか個別に最適化されることが多く、認識のずれが根付きがちなので、よくご相談をいただくテーマです。

このように、「関係者間で理解にずれがある」「暗黙の前提が違う」という状況は、組織にワークショップを提供していると頻繁に遭遇することなんですね。

認識をすり合わせることで前進する力が生まれる

認識のずれが解消されたら、伴って組織の前進力も高まります

そのためにワークショップデザイナーは、上記のような既に顕在化されている認識のずれを扱うこともあれば

潜在的なずれが生まれている部分にアタリをつけ、まだ依頼主が気づいていない課題を炙り出すこともあります。

潜在的なずれを見つけるためには、情報収集と観察が欠かせません。そのあたりの要点は以前ファシリテーションは準備が8割!という記事に書いてみました。『ワークショップ・デザイン』参加者の状況把握の項にも詳しく記載があります。

潜在的なずれを見つけ出すのは簡単ではありませんが、適切な形でワークショップに盛り込むことができた時は、大きな成果に繋がります。そしてこれこそワークショップの醍醐味です。

ですから私は、ワークショップデザイナーを目指す人には「人々の認識のずれ、ずれがちなポイントに敏感になる」意識を日々高めていただきたいなあと常々思っています。

抽象度の高い一般用語も認識がバラツキがち

また、私はよく芸工大の学生への講義で、解釈が曖昧になりがちな言葉、個々人が勝手に解釈してしまいがちな抽象度の高い言葉には気をつけるように注意喚起しています。

『新規事業着工力を高める』の中でも取り上げられていましたが、その最たる例が「イノベーション」という言葉です。

イノベーションってなんとなく意味は想像できるし、だいたいの人が同じような範囲のことを思い浮かべられるのですが、具体的に説明してと言われるととても難しい

新しい商品、技術革新、これまでになかったもの全部、既存事業ではないサービス、世の中にすごい変化を生むもの… などなど、だいたいの人が同じ範囲のことを想像できているはずなのに、いざ説明をしてみると全く違うワードが使われ、微妙に異なる質が現れるのです。

これらがバラバラなまま議論をしたら、とうぜん話は噛み合いません。新しい商品ならなんでもイノベーションと思っている人と、技術革新が伴ってこそイノベーションと思っている人は、暗黙の前提が全く異なるからです。

お互いの認識のズレを整えることができる最良の手段は対話です。だから、私はもっともっと、機能するワークショップを日本中に広めたいと思っていて、このブログもそのために書き続けてきています。何か少しでもあなたのヒントになれば幸いです。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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