私は「ワークショップをより日本に広めた人」として憶えられたい

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。

先日とある仕事で対談させていただいた若者が「何者かになりたい」と素直な気持ちを話してくれました。でも、何をしたらいいのか、どこへ向かったらいいのかは、まだ分からないと。

私も大学時代から「何者かになりたい」けれど「何をしたいか」がずっと分からなかったので、その気持ちわかるなあとしみじみ思いました。

むしろ私が、何者かになりたい焦燥感とうまく付き合えるようになったのは、つい最近のことです。きっかけは『ドラッカー名著集4 非営利組織の経営』という本に書かれていた「問い」に触れたことでした。

目次

あなたは何によって憶えられたいか?

『非営利組織の経営』は、非営利組織の経営に関する世界で初めての本だそうで、NPOがどのようにミッションを定め、活動基盤を構築し、ファンドレイズを行うか等について体系的に書かれています。

こうした中に、ドラッカー自身のエピソードを交えた有名な問いがあります。

「私が13歳のとき、宗教の先生が、何によって憶えられたいかねと聞いた。誰も答えられなかった。すると、今答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよといった」

この一文との出会いは、雷に打たれたような感覚でした。自分は何によって憶えられたいかなんて、考えたことがなかったからです。そして、これを考えることによって、必ず新しい扉を開くことができると直感したからです。

答えが見つかるまで、そう時間はかかりませんでした。私の中ではワークショップへの熱意が既に沸騰していて、「何によって憶えられたいか?」と問われたら、それ以外のことが思い浮かばなかったのです。

「ずっと探していたのに、こんなに身近にあったのか」と呆気なくすら思いましたが、『アルケミスト』の主人公サンチャゴが旅を通じて様々な教訓をつかみ、宝物の存在にたどり着くことができたように、必要なプロセスだったのかもしれません。

それ以来「何者かにならなければ」という漠然とした欠乏感は徐々に薄れて、あまりこの欲求に振り回されなくなってきました。

登りたい山を明確にする

何者かにならなければと思っていた時は「富士山はとてもすてき! 鳥海山もいいなあ。羊蹄山にも憧れる。んー、どれにしよう?」と目移りしてしまっていました。

それどころか「宇宙も行ってみたいし、深海にもロマンがある!」といった感じで、ありとあらゆる方向に興味を広げていました。そしてその先々で「既に何者かになっている人」を見つけては嫉妬し、羨望の眼差しを向けてきました。

こうした心の挙動と必ずセットになっていたのが、「自分にもできるはずだ!」「いや…、できないかもしれない…」という自問自答です。これはアクセルを踏もうとしながら、ブレーキもかけっぱなしにしているような精神状態でしたから、随分エネルギーを浪費しました。

でも今は、「ワークショップをもっと日本に広めた人」として憶えてもらうことが最重要である、と定めることができたので、力の注ぎどころを明確にすることができ、燃焼効率がとてもよくなりました

孫正義さんの自伝『志高く』には、 “登りたい山を決める。これで人生の半分が決まる” という主旨のことが書かれていたように記憶しているのですが、まさに自分の登りたい山が決まったから、余計なことに煩わされなくなったのです

何者かになるより、何を続けようと志すか

そしてもう少し突っ込んで言うと、ワークショップを広めた人になることより(結果)、ワークショップを広めた人として憶えてもらえるよう振る舞い続けること(過程)に意識を向けることの方が、遥かに大事だと思えるようにもなりました。

良いワークショップを提供し続けること、ワークショップの情報を発信し続けること、ワークショップの担い手を育て続けることetc…

ワークショップの人として認知されるためには、こうした一つ一つを積み重ね続けることが重要で、時間がかかります。むしろ、終わりが無いと表現した方が適切かもしれません。

このブログの記事数は、そろそろ300記事が近づいてきました。自分でもよく書いて来たなあと感心しますが、ワークショップをより広めた人として憶えていただくには、まだまだ不十分です。

今後もたくさんワークショップをご依頼いただき、そこで得た学びや視点を書き続けて行けたら、とても幸せだなと思っています。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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