WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私はほぼ毎週何かしらのワークショップをご提供しながら、東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科で毎週ワークショップやファシリテーションについて講義をしています。
来週は懇意にさせていただいているNPO団体にファシリテーション研修をご提供するため、講義の資料を追加していました。資料を作っていると、ふと、ファシリテーションってペアでダンスを踊るようなものだよなぁという考えが湧いて来ました。
- 相手のテンポや呼吸に合わせないと上手に踊れない
- 時には自分がリードすることも大切
という要素が、ファシリテーターに必要な基本姿勢と似通っているのではと思ったのです。今日はこのメタファーから連想された、ファシリテーターに求められるペーシングについて書いてみます。
参加者の水に馴染むファシリテーションが没入を生む
ファシリテーションには色々な芸風があるので、あくまで私の芸風として読んでいただけたらと思いますが、私は参加者の状況に合わせて自分を調整しながらファシリテーションをするタイプです。普段の生活ではあまり空気を読まない派なのですが…、ファシリテーション中だけは、徹底的に参加者の空気を読みます。
具体的には、参加者のコンディションや属性、ご経験や目的などに応じて、下記の項目が場にちょうど良く場に馴染むよう意識しています。
- 声のトーン
- 声のボリューム
- 話すスピード
- 使う言葉
- 表情
- ジェスチャー
例えばですけれども、堅い企業の役員層に、体操のお兄さんみたいな元気満点のトーンでファシリテーションを始めたら滑りますし、
保育士の方々に、耳慣れない横文字のビジネス語を乱用したら嫌な顔されるでしょう?
私は、どの項目についてもその場におけるスタンダードな範囲に留まっていないと、参加者に余計な違和感を持たせてしまうと考えています。これらは嫌悪感情とつながりやすく、参加者の没入感を阻害するものです。
対話の序盤はこうした姿勢をベースにファシリテーションを始めて、まずはお互いの信頼関係を高めていくことが重要です。でないと、対話が深まる空間はなかなか生まれません。
良い関係が生まれたらアップダウンをリードする
関係づくりが奏功したら、中盤〜終盤では、ファシリテーター側が介入を意識すべきポイントがあります。何かと言うと、場のテンションの上げ下げです。
主体的に対話に取り組んでいる参加者は、前のめりになればなるほど、集中力が増していきます。そうした状況にいる参加者が、テーマへの意見交換だけに留まらず、自分たちで場のテンションまでをコントールするのは相当に困難です。そのため、ファシリテーターの舵取りが重要になります。
サッカーのDFリーダーのように、対話の状況に応じて参加者をアッパーに煽ってみたり、クールダウンを促してみたりと、テンションの上げ下げに気を配るのです。そうすることで、参加者が力を入れて取り組むべきポイントが際立ち、一連の対話の中にハイライトが生まれやすくなります。
また、ディスカッションをより明確にするための論点提示も欠かせません。対話の真っ只中にいる人々は、どうしてもテーマとの距離感が近いために、少し引いた視点から優先順位をつけたり、ポイントを再構築したりする方向に思考が向かないものです。
そのため、ファシリテーターが客観的な目線から攻め所をハッキリ指し示すことで風穴が開き、一気に対話が加速することがよくあります。
こうした背景から、ファシリテーションってペアでダンスを踊るようなもので、
- 相手のテンポや呼吸に合わせないと上手に踊れない
- 時には自分がリードすることも大切
と思ったわけでございます。
何か少しでもあなたの場づくりの参考になれば幸いです。今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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