心理的ハードルが下がればアウトプットが容易になる。
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私は年間50~60回のワークショップを提供しています。
これまで何百回もワークショップを実践してきたので、ほとんどのことには動揺しなくなってきていますが、今でもタイムキープにだけは毎回気を使います。
特に時間がなくなってきているのに、まだ参加者の考えがまとまっていない時はいつもヒヤヒヤです。安心安全で自由な対話を促進したい私としては、「早くしてください」の一言だけは言いたくないのですよね。
参加者は「正解」を探し求めたいもの
そもそもワークショップの運営者と参加者の間には、大きな意識差があります。
ワークショップの場は時間が限られているため、運営者はなるべく最低限の配分でワークを設計・進行したがるものです。当然、できる限り予定通りにプログラムが進むことを願っています。
しかし多くの参加者は、周囲からきちんと認められるクオリティまで発表を高めたいと考える場合が多く、どうしてもワークの時間を延ばして欲しいと主張したくなるものです。
特に、日本人は「正解」を探すことにハマってしまいがち。言い換えると、他者から見ておかしくないかを極端に気にしますので、けっこう強めのプレッシャーがかかっていることが多いです。
ファシリテーターはこうした参加者の心情を理解し、それらと適切に向き合いながら、場をホールドし続けることが重要です。
参加者の心のハードルを下げる声かけが場を進める
こんな時に私がよく使っていて、とても重宝しているのが「仮留めで放っちゃいましょう!」という一言です。この声がけだけで、参加者のマインドが深堀りモードから発表モードへとシフトすることがよくあるのです。
私が「仮留めで放つ」というワードと出会ったのは、ISIS編集学校での稽古中でした。師範代からいただいたメッセージの中に、この一言が添えられていたのです。
当時私は、クオリティの高いアウトプットを出そうという意欲が強すぎて、なかなか課題を提出する踏ん切りがつかずにいました。自分ではどこをどう直したらいいのか分からず、グルグルと同じ思考の繰り返し。まさにドツボにハマっていたのです。
そうしたタイミングでいただいた「仮留で放つ」という一言は、私の鎧をビューっと吹き飛ばしてくれました。現在地を許容していただいている感覚が湧き、とても安心した気持ちで送信ボタンを押すことができたのです。優しく懐の深い向き合い方だなと感動したことをよく覚えています。
以来私は、この言葉と姿勢に倣ってファシリテーションをしています。
急かすよりも、参加者の現状を承認すること
仮案でOKという共通了解を作れると、場の雰囲気がほぐれて、参加者のマインドが「発表しても大丈夫」という方向へ動き始めます。
一方で「時間がないので急いでください」という投げかけは、参加者のマインドを硬化させ、かえって作業が進まなくなるケースが多々あります。
これは『北風と太陽』の寓話と全く一緒だと思うのです。北風のように、力技でコートを脱がそうとしてもダメ!
太陽のようにぽかぽかと照らすこと。つまりこの場合では、参加者の現在の状態を承認することが最も参加者の心を開きます。
ですからファシリテーターは
「今できているところまででOKです!」
「現時点での仮案で構いませんので教えてください」
「短い時間の中でできる限り知恵を絞っていただき感謝です」
「時間があればもっと素晴らしい発表になるのは間違いないですね」
等の投げかけを通じて、参加者の安心感を高める役割を積極的に担いましょう。
この時に自分らしい言葉をひとつ携えておくと、場への影響力がぐっと高まります。私で言うところの「仮留で放つ」という言葉です。この一言には私の実体験が伴っているので、まさに切れ味が抜群なのです。
ぜひあなたも、そうした言葉を探してみてください。もしビビッとくるワードを見つけることができたら、ワークショップのファシリテーションはさらに面白くなるはずです。
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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