ブレインストーミングのリードは、ファシリテーターに欠かせない能力の開発にピッタリ!
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日知人から「ファシリテーションの腕前を上げたい。どういうシーンで練習するのが効果的か」といった相談を受けました。
確かにファシリテーションと一口に言っても、ワークショップや日常の会議まで様々。アイデアを発散する会もあれば、筋道を立てて論理的に収束をしていく会もあります。もちろん、どんな場面でも自信を持ってファシリテーションできようになるのが理想ですが、機会も限られますし、全方向に経験を積むのは大変ですよね。
そこで私としては、新米ファシリテーターが腕を磨いていくためには、まず「ブレインストーミング(ブレスト)」を初手とすることをおススメしたいなと思いました。なぜならブレストの場には、ファシリテーターが身につけておくべき基本スタンスやコミュニケーションスタイルを発揮する瞬間がたくさん詰まっているからです。
具体的には、以下の3点を意識して経験を積んでいただきたいなと思ったので、こちらでご紹介させていただきます。
参加者の意欲を高めるスタンスとスキルの習得
まずブレストは、参加者の意欲を高める心構えと技術を習得する絶好の機会だと私は思います。
対話の場では、どれだけアイデアパーソンが揃っていようと、「ここなら何を言っても大丈夫」と感じられる心理的安全性がなければ、人は積極的な発言を控えるものです。そのためブレストにおいては、ファシリテーターがどれだけ安心安全で、何かが生まれそうと期待を持てる空気感を作れるかが成否に直結します。参加者のノリが良くない場では、アイデア出しも加速しません。
場に心理的安全性を形成していくために欠かせないのが、ファシリテーター自身がYes, and のコミュニケーションスタンスを率先して実践することです。そして、そのコミュニケーションを参加者全員に浸透すること。こうした空気づくりが意図的にできるようになると、ブレストの場だけではなく、様々なシーンで対話が深まるようになります。
ブレストの場の特長ですが、ブレストを行う際は冒頭に「批判厳禁」「自由奔放」と言ったグランドルールを提示することが多く、他のシーンに比べると参加者の意識を統一しやすい点が初心者向きと言えます。これらによって、ルールに反した行動の制御も比較的容易です。
また、ブレストという拡散のフェーズでは、意見の対立を解消したり、複雑な情報や感情を丁寧に紐解き、合意形成を図らなければならないシーンもありません。この点も、初心者にとって優しい構造になっています。
参加者の意欲を高めるムードの作り方を習得してしまえば、他の機会でも応用が効きます。ぜひ色々と工夫を凝らして、まずは「場の雰囲気を盛り上げる」ことができるようになるよう、取り組んでみると良いと思います。
アイデアどうしの新結合を生み出す感覚の獲得
2つ目ですが、ブレストからはアイデアの結合が生まれる面白さをダイレクトに感じることができます。
ブレストの場では「便乗歓迎」というグランドルールが共有されることが多いのですが、体感として、ブレストの盛り上がりは「便乗数に比例」します。
自分ひとりで考えられるアイデアには限界がありますが、イノベーションを定義したシュンペーターが「新結合」の有効性を説いているように、経験や価値観が違う人同士のアイデアが結合すると、思いもよらないユニークな考えが生まれるものです。
ユニークなアイデアが生まれた瞬間は、参加者の体温が一気に上昇し、その興奮が場全体へと急速に伝播していきます。そしてそのワクワク感が、自然とさらなるアイデアを呼び込んでくれます。
これもブレストだけに限った話ではなく、ワークショップや対話全般に同じことが言えます。多様性の中から触発が生まれ、これまでになかった考え・アイデアが湧いてくると、「この対話は良かった! 価値があった!」と参加者の満足度がとても高くなります。
ファシリテーターはこうした場の挙動を身をもって体感しておくことで、同様の体験を他者へ再現できるようになります。そのため、ブレストを通じてアイデアの結合が生まれる感覚を養っておくと、自然と他の現場でも目線が変わっていくはずです。
思考の制限を取り払う投げかけの練習
3つ目ですが、ブレストではファシリテーターによる参加者の思考の枠組みを取り払う投げかけが絶対に欠かせません。つまり、投げかけを工夫する良い練習機会になるということです。
ブレストの最中は、勢いがついてくると、出されるアイデアの数が飛躍的に伸び始めます。ところがよくアイデアを眺めてみると、ほんの少しアレンジが加えられただけで、だいたい同じような内容に留まってしまっている時があるんですね。
例えばですが「お茶漬けに入れたら美味しい具」のアイデアを出す時に、
焼き鮭、焼きマグロ、焼きカツオ、炙った鯛、炙ったカワハギ…etc
とアイデアの数は増えているように見えても、よく考えたらぜんぶ魚じゃん! みたいなことがよく起こるのです。(もちろん、ここまで分かりやすいことは稀ですが)
こうした同質な意見が多いままだと発想が跳ねることがなく、結果として面白いアイデアが生まれにくいので、ファシリテーターが参加者の思考の枠を広げる手助けをする必要があります。
肉ならどうですか? 野菜ならどうですか? と常識的な視点の切り替えもいいですし、もしお菓子を入れるとしたら? 海外の料理と融合させたら? など意外な領域と接続してあげる投げかけも機能します。
対話の場において話が行き詰まる時は、参加者の視野が狭くなりすぎていることが多いものです。そのため、ブレストのファシリテーションを通じて参加者の思考の偏りをキャッチし、枠を広げる投げかけを習得しておくと、どんなシーンでも重宝します。
以上が、私が新米ファシリテーターが腕を磨いていくためにはまずブレストから! と考える理由です。
何より、ブレストは楽しいです! 楽しくないことはなかなか続きませんからね。これからファシリテーション力を高めていきたい方はぜひ、まずは自分自身が楽しいと思える場から積極的にチャレンジしてみてください。ファシリテーションは、場数をこなせばこなすほど上達しますから。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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