WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日、娘から「母さんがくれたあのまなざしって何?」と尋ねられました。天空の城ラピュタで有名な『君をのせて』の歌詞です。確かに、まなざしって小学校低学年の娘にはムズカシイ単語かもしれません。辞書を引くと、目つき。目の表情。目線。などの意味が書かれています。
前後の文脈から考えると、『君をのせて』におけるまなざしの意味は、目の表情と解釈するのが最も自然な気がいたします。もっとも、娘は「目の表情…??」と合点がいかない様子でしたが(笑)
話が少し飛躍してしまいますが、こんなやりとりから、「ファシリテーターのまなざしって大切だよな」と再認識したんですよね。
ファシリテーションを円滑に実践するためには、語りのテクニックや進行管理のスキル、場をホールドし参加者に寄り添うあり方などが重要であることは言うまでもありません。これらに対して「ファシリテーター目の表情」という要素はとても地味に思えますが、場への影響力は絶大なのです。なぜなら目の表情は、言葉以上に多くの情報や感情を伝えることができるからです。実際、コミュニケーションの約55%は非言語的な要素、すなわちボディーランゲージや目の表情などから成り立っているとも言われます。
今日のブログではまなざしが持つ力について解説します。
ファシリテーターのまなざしが生み出す様々な効果
まず大きな効果として、ファシリテーターの誠実なまなざしは参加者の安心感を高めます。例えば、参加者が発言している最中に、ファシリテーターがしっかりと目を見て頷くことで、「あなたの意見をしっかりと聞いている」というメッセージが伝わります。これは、参加者との信頼関係を築くうえでもとても重要です。
また、目を細めて考え込んだり、真剣なまなざしを向ければ、その意見について深く考えていることを示すサインとなります。これにより、話し手は安心感を持ち、自分の意見をさらに詳しく説明したり、新しい視点を提供する意欲が高まります。
難しいテーマや、議論が白熱している場面では、ファシリテーターの柔らかなまなざしが場の緊張感や対立姿勢を和らげる緩衝材となります。穏やかで落ち着いた目の表情を向けることで、参加者も冷静さを保ちやすくなり、建設的なディスカッションを続けることが可能となります。逆に、ファシリテーターが焦燥感や苛立ちを目に表すと、ネガティブな感情が参加者に伝播し、ワークショップ全体がトゲトゲとした空気に包まれてしまいます。
場にとって不適切なアウトプットが共有された際には、目に疑問を浮かべることで、参加者自身が脱線や悪ノリに気づいてくれます。言葉にして「会の趣旨に反するアイデアであること」をフィードバックすると、場の空気がしゅん…となることも多いものですが、目の表情だけで察してもらえると、切り替えのスピードが向上します。
最後は少しテクニックよりな話ですが、目線で対話やディスカッションの進行を促すこともできます。例えば、特定の参加者が話しすぎるような場合、ファシリテーターがその人と軽く目を合わせ、茶目っ気のあるまなざしで他の参加者に目を向ければ、自分から気づいて話の順番を譲ってくれたりするんですよね。
このように、目の表情によって場に作り出せる効果は実に多様なのです。
無意識な「目の表情」が引き起こしかねないトラブル
一方で、目が伝達する情報にはリスクもあります。一例として、不快感や偏見、先入観や疑問などを、反射的に目の表情に投影してしまうことが挙げられます。
ある発言に対して否定的な感情をまなざしで表してしまうと、参加者が萎縮し、今後の発言を躊躇するようになってしまうので、ファシリテーテーはよく自分を躾けておくことが大切です。
また、上の空で話を聞いているように見えてしまったら、「私の話には価値がないんだ」と思わせてしまいます。もし考え事をしている時でも、自分の目つきを緩めないよう意識しておきましょう。
他にも、ファシリテーターが特定の参加者にだけ好意の目線を向けているように受け取られてしまったら、その他の参加者のエンゲージメントが著しく低下してしまいます。依怙贔屓っぽい空気って、みんな嫌いなんですよね。ファシリテーターは中立的な立場を保つ必要がありますから、もしお気に入りの参加者がいたとしても、しっかり自制してくださいね。
もうひとつだけ付言しておくと、参加者をコントロールするために「目の表情」を使っているファシリテーターの場づくりは総じて低レベルです。ワークショップのファシリテーターには、場をコントロールするのではなく、場を支える関わり方が求められます。このためファシリテーターは、自分が浮かべたまなざしが「場の雰囲気をより良くする意図」だったか、「参加者を管理する意図」だったかに自覚的でありましょう。これはもちろん、ワークショップ当日の言動全てに当てはまります。
目は口ほどに物を言うから「目の力」を使いこなそう
総括すると、ファシリテーションにおける目の表情は、グループのダイナミクスを大きく左右する重要な要素となります。ファシリテータがは目の表情に意識を向け、適切に活用することができれば、参加者の安心感や意欲が高まり、対話の場がより開いていきます。
「目は口ほどに物を言う」という諺があるように、目の表情は良くも悪くも、私たちが感じていることをダイレクトに伝達してくれます。だからこそ、ファシリテーターは目の表情を意図的に組み合わせて、言外からもメッセージを届けられるようにトレーニングを積んでいくことが大切です。併せて、常に目の表情に気を配り、ネガティブな空気を発さないことを習慣化しましょう。
そのためには、常に意識的に自分の目の表情をコントロールし、適切なタイミングで視線を活用するスキルを磨く必要があります。これにより、ファシリテーションの質を一層高めることができるはずです。ぜひ実際に試してみてください!
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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