相手を変えようとしたり、自分の正しさを主張したりしようとはせず、そのままの形で扱う
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。東北芸術工科大学でワークショップとファシリテーションを教えていた際、学生から「対話では絶対にYes, andのコミュニケーションをしないとダメですか? 正直自分の考えとは全く違う意見には、いいねって言いづらいんです…」というご質問をいただきました。私はこの素朴でピュアな質問に「いいね」を100個差し上げたい!
Yes,andの適切な扱い方
この質問に込められた一連の思考を推察すると、
・良い対話の場を作るためには心理的安全性が大切
・そのためには相手を否定しないコミュニケーションが欠かせない
・でも、共感できない意見、肯定できない意見が出た場合はどうしたらいいのだろう
・自分を曲げて迎合するのもおかしいし、かと言って否定することもできない…?
・八方塞がりだ
といった葛藤が潜んでいて、様々な知識があるからこそ、余計に「肯定しなきゃ」「受け入れなきゃ」「でもできない」という気持ちが大きくなっていたのではないかと感じました。
こういう状況に直面した時のために覚えておいて欲しいのが、具体的な切り返しのテクニックと、場に臨むうえでのスタンスです。
深堀りの質問でYesできるポイントを探す
まず始めに具体的な切り返しのテクニックですが、自分が共感できない意見と出会ったら、ぜひ「どうしてそう思ったのですか?」と質問をして、その意見が出された背景を探ってみてください。なぜかというと、垂直方向に意見を深堀りしていくと、一見自分とは相容れないと思う考えの中に、実は共感できるポイントが見えてくる時が多々あるからです。
例えば「人間はもっと虫を食べるべきだ!」といった主張があったとしましょう。私はあんまり虫が得意ではないし、嫌悪感が先行して、虫を美味しく食べられる未来も想像できないので、正直気持ち悪いなあ、ムリだなあと感じます…。
この表面的なレイヤーに留まり続けると、相手の意見には共感できないままですよね。そこで前述の質問です。
「どうしてそう思うのですか?」と、相手の意見の土台となっている考えを尋ねてみると、「急激な人口増加で、世界は食糧不足の危機だと思うんです。だから何かを食用化しないとヤバイと思っていて」といったような感じで、違った景色が現れます。
このレイヤーだったらどうでしょう? そうだよね、何か手を打たないとマズイよね! と共感できそうじゃないですか?
リアルな対話はもっと複雑なので、一回の質問では共感できないこともあります。その時はさらに質問を投げかけ、共感できるポイントを探し続けると良いですよ。もちろん、ずっと質問し続けるとうざがられるので、加減は大事ですけれど!
相手を承認するあり方で場に臨む
もう一つは場に臨むうえでの基本的なスタンスです。テクニックはインスタントなので、うまく機能する時もあればそうではない時もあります。ですがスタンスはどのシーンにおいても汎用性が高く、いい結果を連れて来てくれる確率が高いものです。
私は対話の場に臨む際は、相手を変えようとしたり、自分の正しさを主張したりしようとはせず、意見をそのままの形で扱うことをオススメしています。無理な肯定も、否定もせず「あなたはそういう意見なんですね」と、ただ受け取ること。受け入れるのではなくて、受け取る。つまり、そこには何のジャッジも、感情も乗せなくていいのです。こうすると角も立たないですし、自分の素直な気持ちをないがしろにもせずにいられて、お互いにとって安心な場になります。
「こころの対話25のルール」には、
相手の話を聞くことを、最終的には、相手を受け入れることだとか、相手の希望をかなえることだと思っているから聞けないのです。相手が言いたいことについて、相手と同じビジョンをもっていくこと−それが、「聞く」ということです。両者が互いに、相手と同じビジョンを共有できたとき、ふたりははじめて同じ地点に立てるのですから。そして、たとえ、そのビジョンに自分は賛成できないとしても、相手と同じ「いまここ」という瞬間を共有していることの喜びを感じるのです。
という一節があるのですが、相手のことを、相手の意見をそのまま受け取り合えると、一気に心の繋がりが生まれます。そしてそこから、これまでには存在しなかった新しい気持ち、考え、アイデアが湧いてきて、現状に違いを作るエネルギーが勢いよく流れ出すのです。
こういう概念はいくら文字で読んでもわからないことが多いところですが、体験が伴った瞬間、ぱっと世界が開くものです。だから私は対話の場作りを通じて、相手を変えようとせずただ受け取り合う感覚を広めて行きたいと思っているんですよねー。
ということで、今日はここまで!
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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