ワークショップで共有された話は「その場限り」

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。先日お友達と3人で釣りに行ってきたのですが、同乗して1台の車で帰っていく2人を見送っていたら、ふと昔の記憶が開きました。

私が通った中学校は、根性焼やリンチが日常と隣接した、市内でも有名な荒れた学校でした。校庭や廊下は下を向きながら端っこを歩くのがデフォルト。決して怖い先輩の道をふさいだり、目を合わせてはいけません。こんな学校だったので、周囲から自分がどう思われているかは本当に死活問題でした。目をつけられてしまったら最後、どんな目に遭うかわからないからです。

殺伐とした学校生活において、友達の存在は文字通り砂漠のオアシスでした。だからこそ、私は友達と別れた後いつも、(みんなに自分の悪口とか言われていないといいなぁ…)って、不安でたまらなかったのですよね。もし嫌われたら学校に居場所がないし、最悪の場合は取り囲まれてリンチの可能性まであるんですから(笑)

2人で帰っていく友達を見ていたら、こんなことが思い出されました。そしてこの話は、「陰口を言われてしまうのではないか? という不安はとても居心地が悪い」という点において、ワークショップと無関係ではないなぁと繋がったのです。

というのもワークショップではかなりの本音が飛び交うので、こんなこと言って大丈夫だったかな? と後から不安になる方が多数存在します。

ちなみに、ワークショップで話されたことはその場限りとして扱うのがマナーです。もう少し具体的に言えば、ワークショップ終了後に、本人がいない場所で、本人の同意なしに何かを話したり、それをもとに批判や蔑みをするのはNG行為。重大な紳士協定違反です。

ワークショップの運営者は、この観点をしっかり参加者に周知して、ワークショップが終わってからの安心安全も担保することが重要だと思うのです。

目次

プライベートな話を外部に持ち出さない

まず大事なのが、プライベートな話を外部に流出させないことです。ワークショップでは個々人のライフシーンにまつわる様々なプライベート情報が共有されます。たとえばチェックインで「きのう彼氏と別れたばっかりで…、めちゃテンション低いです」なんて共有がされたとします。

これを聞いた同じグループの参加者が、ワークショップ終了後に「そう言えば〇〇さん、彼氏と別れたってよ」なーんて言い広めちゃったらどうでしょう。人の口に戸は立てられないので、こうしたゴシップネタはどんどん拡散されてしまいます。

すると、別れたことを教えていない人から「彼氏と別れたんだってー?」と尋ねられたり、「良い人だったのにもったいないねー」と謎の説教をされたりと、予期せぬ形で本人に還っていき、不快な思いをしたり、傷心が深まるということが起こりかねません。

「次の人生を考え始めています」といった、離職・転職・独立などにまつわる共有も要注意です。第三者が軽い気持ちで「■■さん、転職考えてるらしいよ?」と言ったことが発端となり、当事者の職場内で大きな波紋が起こるリスクは十分にあり得るのです。

ぽろっと吐露された「介護が大変で…」などの家庭に関する悩みなども同様です。こうした内容を第三者の口から話すと、その真意が伝わらないことが圧倒的に多く、言葉尻を捉えた都合の良い曲解が生じ、不和やトラブルの元になりかねません。

共有された話を攻撃の材料に使わせない

上記と同じくらい重要なのが、共有された話を、攻撃の材料に使わせないことです。こちらも例があった方がわかりやすいと思うので、ある商品の販売が思わしく無いため、戦略を練るためにワークショップを開催したとしましょう。

この時に営業成績がパッとしない若手社員が「この商品には◯◯という欠点があって、お客さんから支持を得られず、なかなかセールスがうまくいかないのです…」と普段感じている本音を教えてくれたとします。

本音の、しかも関係者のリアルな声を伴った意見ってとても有益で、商品改善の示唆に富んでいるのですが、世の中そんなにシンプルではなかったりもするわけで…。

こういう後ろ向きとも取れる発言をすると、「そんな弱気なことを言っているから売れないんだ。あいつはセールスが何たるかを全く分かっていない。自分の業績を商品力のせいにするなんて他責も甚だしい」なんて上司に思われてしまう可能性もあるんですよね…。

この結末の最悪なパターンは、「〇〇さん。この前のワークショップでは随分ネガティブな発言をしていたね。そんなスタンスだからね、君、ぜんぜん売れないってこと、分かってる?」などと、発言を相手の都合に合わせて切り取られ、ワークショップが終わった後に人格否定や叱責をされてしまうことです。

若手社員の方は全体のために良かれと思って言いにくいことを共有してくれたのに、後日、こうして自分の発言が攻撃材料に使われてしまったらどう感じるでしょうか。もう二度と、ワークショップで本当のことを語ろうとは思いませんよね。

グランドルールの周知を徹底しよう

こうした悲しい事態が起こらないように、ワークショップデザイナーは参加者へしっかりとグランドルールを周知徹底する姿勢が大切です。

私は「話されたことはこの場限り」をグランドルールに掲げてワークショップを進行することが多いですし、(この意見は否定の材料、攻撃の材料になってしまうかもしれない…!)という危険を感じたら、参加者の意図が正しく伝わるように言葉を足したり、リスクを取って共有してくれたことに感謝のメッセージを送ったりしています。

そして会の最後にもう一度念を押し、できるだけワークショップの中で共有されたプライベートな事項や、ネガティブな情報が後々暴れ出さないように注意してきました。

最近世の中では「心理的安全性」が流行っていて、このブログでも心理的安全性の作り方については何度か記事を書いてきましたが、当日だけではなく、事後の心理的安全性まで配慮した運営ができると、参加者にとても喜ばれる場になると思います。

これらのポイントについて、もし全く意識がなかったという方がいたら、ぜひこれからの場作りに活かしてみてください。なんとなく理解していたという方は、例をもって参加者にお伝えできると場の理解度がぐっと深まるので、ぜひ自分が語りやすい例を創作してみると良いと思います。みんなで優しい場作りを広めていきましょう!

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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