「参加意欲の差」がグループワークを盛り下げる

参加意欲の差をならしていくとグループワークがうまくいく

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私はよく「ファシリテーション中はどんなことを意識しているのですか?」というご質問をいただきます。

おそらく熟達したファシリテーターほど、自分なりのチェックポイントを数多く持っていて、それらを無意識のうちに観察しているように思います。

対してファシリテーションに不慣れな方は、参加者が楽しそうかどうか、などのやや抽象的で、単一のチェックポイントに留まっているのではないでしょうか。

そこでこの記事では、私が観察しているポイントの1つである「参加者の意欲差」についてご紹介します。あなたのファシリテーションのヒントになれば幸いです。

目次

グループ活動の成果は関係の質に起因する

私はこれまで500回以上のワークショップをリードしたり、運営してきました。ワークショップには、多くの場合グループワークが伴います。うまく進んだグループもあれば、停滞感が漂っているグループもありました。

グループでの作業がうまくいかないのはなぜなのか。何度も観察を重ねるうちに、グループのメンバーの人間関係の質こそが重要なファクターであると感じるようになりました。ダニエル・キムが提唱する成功循環モデルでは、組織の活動にグッドサイクルを起こすためには、まず関係性の質の向上に取り組むことが重要であると言われており、まさにこの観点です。

とはいえ、ファシリテーターは各グループ内の人間関係の質にどこまで関与できるでしょうか。「みんなで仲良くがんばろう」などと小学校の訓示のようなメッセージをしても、そう効果はありません。

そこで私は、あまり関係性がよく見えないグループをワークショップのたびに観察してみました。なぜ関係性が向上しないグループが存在するのかを解明することができれば、ファシリテーターとして介入する余地を見出せると思ったからです。

最初は、例えばトラブルメーカーが対話をひっかき回しているとか、意見対立をうまく解消できず敵対してしまっているとか、これでは人間関係の質は上がらないよね、と納得するに足る事象が起こっているのだろうと仮説を立てていました。ですが、このようなパニック状況はほとんど見られませんでした。

回を重ねるごとに見えて来たのは「参加意欲の差」に起因した見えないカベが生まれることによって引き起こされる分断でした。

極端な参加意欲の差は関係の質を悪化させる

極端に参加意欲の高い方がいるグループや、極端に意欲が低い方がいるグループでは、その周囲の参加者の顔が曇るシーンが散見されました。極端に意欲が高い方には周囲がついていけず引いてしまう、極端に低い方には周囲が気を遣って顔色を伺いリズムが生まれない、という構造が生じることによって、この人たちと繋がりたいという意欲が段々と挫かれ、心のカベが作られていくのです。

一方で、参加意欲が同じくらいの人々で形成されたグループは、一定したテンションでワークショップに取り組んでくださる様子が目立ち、大半は成果も上々。ワークショップ終了後に名刺やLINE交換などをしている数も、こちらの方が圧倒的でした。

これらの観察から私はグループ内での参加意欲の差が人間関係の形成に大きな影響を与えていると言えそうだと結論づけました。自分自身の活動を振り返ってみても確かにそうで、自分の意欲に近い人々と協働できている時ほど機能的です。

こうした背景から私は、冒頭に書かせていただいた「参加者の意欲差」を1 つのポイントとして意識し、ファシリテーションをしています。そして、これはと感じるグループがあればそっと介入をしています。

参加意欲が高すぎる方には、少しセーブしていただく方向で話しかける時、他の参加者の積極的な参加を促す方向で話しかける時、その両方を状況に応じて選んでいます。

参加意欲が高すぎるケースには、悪ノリや内輪ノリ、先輩風を吹かせたかったり、正義感が強すぎたりなど様々なタイプがありますが、皆を置いてけぼりにしないようにリードして欲しいとお願いすると、多くの方が粋に感じてグループの中心になってくれ、とても頼もしい存在です。

参加意欲が低すぎる方への介入も、もう少し積極的な参加を促す、周囲の参加者からの配慮が増すよう促す、その両方とが基本の選択肢になります。

ただし、こちらの場合は少し注意が必要で、どうして意欲が低いのか(低そうに見えるのか)を探り、寄り添う姿勢を強めに関わることが奏功します。なぜなら具合が悪いとか、ショッキングな出来事の直後とか、お昼ご飯を食べる時間がなかったとか、上司に無理やり連れて来られたとか、相応の理由をお持ちであることが多いからです。理由によっては、一時ワークショップの場から離脱していただき、起こっている問題を解消してから参加し直していただくという判断も機能します。

介入をする際は「無理やり」はNG

こうした介入をする際に重要なのは、人を人して尊重して扱うことです。ワークショップの参加者には様々な状況がありますから、意欲が高い時もあれば、低い時もあるのは当たり前です。それらを無理矢理変える必要は全くありません。相手を承認しながら関わることが何より大切です。

また意欲が高いから良い、低いから悪いということでもありませんので、ここは勘違いをしないでいただきたい点です。

誤解のないように繰り返しますが、ポイントは、意欲の差が大きい方どうしが集まってしまうと、関係の質が向上しにくい傾向があるので、ワークショップの成果も低下しがち、ということだけです。これは皆にとってもったいないじゃないですか!

そのためファシリテーターは、各グループにしっかり水をやり、対話が生まれやすい土壌づくりに努めることが重要だと思うのです。

参加意欲が高すぎるからと出る杭を打ったり、低すぎるからと叱咤したり、無理やりの力技に頼っても場は好転しません。ファシリテーターが、参加者それぞれが抱えている思いや悩み、不安などをつかみ、それらをそっと取り除くことに注力できれば、グループワークは自然と盛り上がっていきます。そのための観察点が多数であればあるほど、ファシリテーションの精度とキレは高まります。

ということで、今回は「参加者の意欲差」という観察点について書かせていただきました。今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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