参加者の妄想スイッチを入れる「程よい例示」の重要性

参加者の妄想は「程よい例示」に刺激を受け動き出す!

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私は一般社団法人妄想からアイデアを共創する協会の理事として、妄想アイデアトレーニング「モウトレ」という、アイデア発想とコミュニケーションを学んでいただくワークショップをご提供しています。

 

モウトレでは参加者に「妄想」を楽しんでいただくのですが、妄想が盛り上がるためには様々な仕掛けが必要です。

 

そこでこのシリーズでは、妄想を盛り上げるために必要なファシリテーターの役割や、ワークショップデザインについて紐解いていこうと思います。今回のテーマは程よい例示の重要性についてです。

妄想は外部刺激を起点に駆動する

まず始めに述べておきたいのは妄想の性質についてです。妄想は、思考の取っ掛かりとなる「何か」と触れた刺激で起動します。外部刺激がゼロの状態だと、妄想のスイッチは入りません。

 

一昔前に日本テレビ系列の番組『マジカル頭脳パワー!!』で一世を風靡したゲーム、マジカルバナナをご存知でしょうか?

 

バナナと言ったら? から始まるお決まりのフレーズとリズムは、1990年代の日本を席巻しました。

 

マジカルバナナでは、最初に「バナナと言ったら?」と問われることで、受け手の連想ネットワークが駆動します。

 

妄想の始まりもマジカルバナナの開幕と同じで、〇〇と言ったら? 〇〇って? と問われるからこそ思考が走り出すのです。

 

ただ、ワークショップや対話の場面での妄想がマジカルバナナと少しだけ違うのは、まだ見ぬ未来に向けて思考を進めていく、という点です。

知っているを扱うのが連想 まだここには無いを扱うのが妄想

マジカルバナナは既に世の中に存在している物体や概念が提示され、連想される機能や要素や特徴を答えるゲームです。つまり参加者には、自分の経験や知識を思い出すことが求められます。

 

言い換えれば、「過去」を扱うのがマジカルバナナです。そのため、自分が知らない物と出会った場合、参加者は回答を継ぐことができません。

 

一方で妄想は、まだ誰も知らない、まだこの世の中にない物にフォーカスし話を展開していくものです。いい意味で無責任に考えを膨らませていくことができるため、得意な人はどこまでもアイデアを発想し続けることが可能です。

ただ大半の人は、何の制約もない状態で「自由にアイデアを出していいですよ」と言われると、頭が真っ白になって発想できなくなってしまうものです。意外に思われるかもしれませんが、創造性は、一定の制約や条件があるほうが強く発揮されるのです。

 

そのため、妄想を扱うワークショップや対話の場では、テーマを絞ったり、範囲を定めたりすることを通じて、参加者の思考が一定の領域内で自由化されるようにデザインすることが重要です。

 

前置きが長くなりましたが、このための一つの方法が、今回の記事のタイトルである「程よい例示」をすることなのです。

妄想の始まりは「程よい例示」から

たとえば私が提供しているモウトレでは、リラックスした気持ちになるアイテムとは? というお題で妄想を楽しんでいただいていただく際、

 

「好きな香りを3つ持ち運べるキーホルダー、といった感じでアイデアを出してみてください」と必ず始まりの例示をご紹介しています。

 

この例示には、3つのヒントを盛り込んでいます。

 

1つは香りという要素です。リラックスするということと、人の五感とは密接な関係にあります。そのため五感のうちの1要素を提示することで、視覚・聴覚・触覚・味覚への連想が起こりやすくなるように意図しています。

 

2つ目はキーホルダーという商品カテゴリです。キーホルダーという商品からは、ストラップやお守りと言った類似製品を想像することができます。また、もしこれらが売られている場所にまで思いを馳せることができたら、お土産やさんや、神社などのスポットが浮かび上がり、その場で売っている他の商品まで着想を伸ばせる可能性があります。

 

3つ目はキーホルダーの機能です。キーホルダーは気軽に持ち運ぶことができたり、自分の持ち物の装飾品となったり、小物を収納できたりと、様々な機能を有しています。気軽に持ち運べるという機能からは薄くて軽いクリアファイルが想起されるかもしれませんし、装飾品という機能からはアクセサリーが思い浮かぶかもしれません。

 

このような多様な観点を含み、かつ誰にでも想像をしやすい例示を行うことで、参加者が「妄想モード」へと思考をシフトしやすくなるのです。

「程よい例示」は思考の枠組み外しにも欠かせない

程よい例示が有効なのは、アイデア出しの冒頭だけに限りません。程よい例示は、参加者の思考の枠組みを取り除くためにも機能します。

 

先日、気仙沼市役所様からご依頼をいただき、もし2030年代に「子どもがたくさん生まれる 幸せなまち気仙沼」が実現できているとしたら、どんな施策や活動が行われただろう? というお題でモウトレを開催しました。

 

このモウトレでは妄想の第2Rを「斜め上のアイデアを出すラウンド」として設計したのですが、その際に例示したのが「漁船で保育園」というアイデアです。

この例示では、場所の概念に着目をして、それを大きくズラして見せました

 

保育園とは陸地にある特定の施設で保育を行う場所であるという固定観念を手放し、違う場所で保育をしてみたら? と考えてみる可能性を提示したのです。この発想の構造は学校やスーパーなど、場所が定まっている他施設を対象にアイデアを考える際にそのまま転用できますし、物事の前提をズラすというアイデア発想においてとても重要な視点の獲得にもつながります。

 

また、この例示はシュンペーターが提唱したイノベーションの要「新結合」そのものです。新結合とは、既存の要素どうしの新しい組み合わせ、のことを指します。漁船という既存の要素と、保育園という既存の要素の結合が合わさると、これまでには存在しなかった新たな景色が、自然と立ち上がるのです。

 

例示からこうした感覚を受け取っていただけたら、もう、妄想は止まらなくなります。

例示を作る際の注意

ただし、あまりにも突拍子も無い例示や、実現不可すぎる例示は、逆に参加者のマインドを硬直させてしまうので注意が必要です。

 

例えば上記のケースでの例示が「宇宙で保育園」だったとしたらどうでしょう? これだと自由度が高すぎて、ほとんどアイデア出しの制約が無い状態と変わらないので、参加者はどこまでの範囲で考えたらいいか困惑してしまいます。また、現時点での技術力では実現が不可能すぎて、呆れられてしまう恐れも高いです。

 

そのため「程よい」例示が大切なのです。

 

具体的には下図のような、いつもの思考の少し外側へ飛び出せる例示を作り込みましょう。

「リラックスできるアイテム」での例示も同様です。ここで個人の嗜好に寄りすぎていたり、人を不快にするリスクをはらんだ例示をしてしまうと、参加者の想像意欲はたちまち萎んでしまいます。

 

ですので、例示の作り手には、こうした構造を理解しておくことと、高いバランス感覚が求められます。

場作りの担い手は例示づくりに全力を!

ここまで、妄想の場作りに重要な「例示づくり」について書かせていただきました。

 

ワークショップや対話の場では、手の込んだコンテンツを一生懸命考えることより、「ある問い」に出会った瞬間、参加者全員のパラダイムががらりとシフトするような、切れ味の鋭い問いを立てることに全力集中するほうが深い対話が生まれる、ということがよくあります。

 

妄想を膨らませるためには、これに加えて、適切な足がかりを設計することが必要です。その1つがこの記事でご紹介させていただいた例示なのです。

 

ぜひ、ご参考いただければ幸いです。

 

妄想が膨らむ場作りに必要な要素をご紹介するシリーズ、第二弾はここまでとなります。次回は面白がる」という参加態度について書いていこうと思います。

 

今日はここまで。

 

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

 

WORKSHOP LANDのHPはこちら

 

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