WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日は山形県山形市にお招きいただき、森林資源の活用を考えるをテーマに、アイデア共創ワークショップをご提供させていただきました。
ご依頼をくださった村山地域林業振興協議会さまでは、地域の豊かな森林資源を「森のエネルギー」、「森の恵み」として活かしていく『やまがた森林(モリ)ノミクス』を進めるために、これまで様々な活動の創出を行ってきたそうです。
ただ、一通りのアイデアを考えてしまった感があるため「一度思考の枠組みを外し、どんなビジネスの可能性があるかを改めて妄想したい」という意図でのご依頼でした。
ワークショップの会場はmont-bell 山形店。私は渓流釣りが好きで普段から山を歩き回っているのですが、アウトドアグッズは全てmont-bellなのです! 私にとっては最高の環境で、いつにも増して楽しくワークショップを進めることができました。
モウトレ Flashは瞬間発想を楽しむワークショップ
今回実施させていただいたのは、妄想アイデアトレーニング「モウトレ Flash」というワークショップです。
参加者には◯◯×□□というお題をお見せし、グループで3分間のブレストをしていただいた後、閃いたアイデアを各自が専用サイトに登録いただく仕立てです。いわゆる強制発想法的な手法ですね。
このワークショップのポイントは「お題づくり」にあります。シュンペーターがイノベーションを「新結合」と定義したように、ユニークな掛け合わせのお題をお渡しすることができれば、出てくるアイデアもまたユニークになる可能性が高まるからです。
むらやま森林ノミクスセミナーでは、「森林の資源×目的」「森林の資源×収益モデル」「森林の資源×トレンド」という3つのカテゴリーから、6個のお題を用意。
まず「森林の資源×目的」のカテゴリからは、森林の資源×癒しのひととき、森林の資源×親子関係の向上、というお題に取り組んでいただきました。「山」「癒し」というテーマは想像しやすいため、「モウトレ Flash」の進行手順を理解いただく練習問題としてピッタリだと思ったのです。期待に違わず50個以上のアイデアが誕生し、参加者の方々は「こんなにアイデアが出せるの!?」と驚いた様子でした。
親子関係の向上というテーマからは、「熊から子どもを守る体験」「流しそうめんレーンを協働制作」「子どもの木を植林」などなど、とてもハードな体験から、エモさや愛情を感じるプログラムまで、多彩なアイデアを共有いただきました。
森林の資源×収益モデル 森林の資源×トレンド
「森林の資源×収益モデル」というカテゴリからは、森林の資源×サブスクリプションというお題を楽しんでいただきました。もしかしたら需要があるのかもしれないと思ったのは、「拾った⿃の⽻を送る(アーティスト向け)」案。
私の友人は鳥の羽をボディに貼ってルアーを自作しています。そのため落ちている羽を見つけるたび、嬉々として採取しているんですよね。でも、毎回綺麗な羽が見つかるわけではないので、質の良い素材が定期的に届いたら、すごく喜ぶだろうなあと思ったのです。
渓流釣りを愛している私としては、「骨酒セット」という案も見逃せませんでした!
「森林の資源×トレンド」というカテゴリからは、最多となる3つのお題をご提示しました。森林の資源×自動運転化技術、森林の資源×AR(拡張現実)、森林の資源×火星への移住というお題たちです。
1つ目の自動運転については、近い未来で実現される可能性が確実視されており、世界中のプレイヤーがしのぎを削っている最中です。日本各地でも様々な実証実験が進んでいますよね。これを山の資源と掛け合わせ、人がより自由に町と山を行き交えるようになったら、あるいは山の資源を人手をかけずに運搬できるようになったら、どんな新ビジネスが生まれるだろうかを妄想いただきました。
このパートでは、「全自動炭焼き機」「無人渓流ガイド」「⾃動運転で⼭の中撮影→それをサブスク配信」「雪解け⽔運搬スノーモービル」「⾃動運転で獣を追う」などのアイデアが生まれました。
2つ目の森林の資源×ARというお題からは、実用価値が高そうなアイデアと、遊びに振り切ったアイデアが程よいバランスで生まれました。
たとえば「枝の伸び⽅のシミュレーション 枝打ちの予測に」「伐採危険体験」などは、林業の初学者が研修で使ったりしたら、技術の習得が早いかもしれないなと感じました。「この森の100年後は?シミュレーション」というアイデアも、長期的な視点での山づくりに活かせそうです。どんな木が生えているのかを瞬時に読み取り、それらが時間経過とともにどう変容していくのかを予測するのは、今の技術であれば実現できてしまいそうな気がします。
「ウッドボイス ⽊と会話するアプリ」というアイデアは、自然体験活動の人気ワークに躍り出る可能性があるのではないかと思いました。「ディズニーと森林コラボ」というアイデアも共有されていたのですが、「森林の資源×既存コンテンツ×AR」のテーマパークも、とてもウケが良さそうです!
人類の火星移住と森林資源の関わりを妄想
最後は森林の資源×火星への移住というお題をお渡ししました。このお題では、とにかく既存の思考から遠く離れていただくことを狙いました。
現実となるかはまだ誰にも分かりませんが、イーロン・マスクは2050年での火星移住実現に向けてプロジェクトを進めていますし、UAEでも2117年がターゲットになっています。つまり、早ければあと25年で人類が火星に暮らし始めるんですよね。木が成長するには同じくらい、あるいはそれ以上の年数がかかりますから、もし火星移住が始まったなら、木にはどんなビジネスチャンスがあるか、今から考えておいて損はないと思いませんか?
こうした空想を「意味がないよね」とお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんが、SFプロトタイピングという発想を紹介している『古びた未来をどう壊す?』という本には、こんな一節が書かれています。
今、時代の変化の速さに戸惑っている人は多いと思います。テクノロジーの進化に合わせてビジネススタイルも生活スタイルも変えなくてはいけないし、仮にコロナ禍が収束しても、別のウイルスがもたらす新たなパンデミックや、思いもよらない自然災害など、次なる危機に備えなくてはいけません。変化が激しい世界では、過去の勝ちパターンや既存のマニュアルは通用しなくなります。臨機応変に環境に適応して生き延びていかなくてはならないのです。
こうした環境では、過去の常識に縛られず、世界の「あり得るかもしれない別の姿」を常に考えられる人ほど有利です。
古びた未来をどう壊す? 世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方
私は特に最後の一文が気に入っていて、せっかくアイデア共創のワークショップをご提供するなら、考えることそのものがパラダイムシフトと言えるお題も忍ばせておきたいと思っているんですよね。
SF的な妄想から得られた示唆
それにいくら遠い宇宙と言えども、私には人類が木の温もりが全くない暮らしを好んで求めるとは思えないのです。「森の⾹りは故郷の⾹り〜アロマで地球を思い出す〜」「毎⽉地球から旬の⼭菜贈ります」などのアイデアは、まさに望郷の心理をガッチリと掴んでいるように思いました。
また「お墓には卒塔婆が必要」という意見も共有いただいたのですが、こちらは大切な文化は地球外においても普遍である可能性を示唆していて、とても興味深く感じました。
火星に移住するとなれば、きっと暮らしの何もかもが変わります。人が生きていくには過酷すぎる場所なので、地球とは異なるルールで生活することを余儀なくされるでしょう。伴って、様々な慣習や文化が改変されていくはずです。
でも、死者を弔うという特別な儀式だけは、地球と同じようにしてあげたい。
そう願う人がいたとして、何ら不思議ではないと思ったのです。
こうした視点から連想を膨らませていけば、火星においても求められる木製品の輪郭がかなり明確になっていきそう。そしてそこには、必ずビジネスチャンスが潜んでいる。
卒塔婆というアイデアから思考がつながって、私にとっても貴重な学びの時間でした。
自由で躍動的な妄想が未来をつくる
今回のモウトレ Flashでは、最終的に全体で240個ほどのアイデアが生まれました。今すぐ始められるサービスもあれば、10-50年のスパンで実現可能になっていきそうな案もあれば、多様な時間軸で妄想できたことがとても良かったと思います。足元だけのアイデアではすぐに行き詰まってしまいますし、遠すぎるアイデアだけでは先へと進むことが困難です。
参加者の方々からは、「いつもよりアイデア発想に熱中できた」「どんどん意見を出すこと、聞くことの楽しさを知った」といったご感想をいただきました。皆さんとても旺盛に参加してくださったことで、強制発想法(◯◯と□□のかけあわせ)のやり方と効果、心理的安全性の価値について、かなりご理解をいただけたのではないかと思います。
こうして未来を妄想する時間が増えていけば、きっと森林資源活用の未来は明るいはずです。ぜひ身近なシーンで、このワークショップから得た学びや気づきを活かしていただけましたら嬉しいです!
お招きいただきありがとうございました。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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