参加者がBGMに気を取られてしまうと対話が散漫になる
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私はほぼ毎週ワークショップを開催しているのですが、ほとんどのケースで何かしらの音楽を流しています。
緊張した空気をやわらげるために、ノリノリでワークに没頭していただくために、じっくり自分と向き合っていただくために、など狙いは様々ですが、音楽と場のフィット感は、ワークショップを成功させる大事な要素のうちの1つです!
そんな私ですが、7~8年前のワークショップ中、参加者からいただいたある一言が、今でも選曲の指針になっています。
「気が散るので歌詞がない曲をかけてください」というリクエストでした。
歌詞が参加者の集中を阻害する・思考を引っ張る
それまでの私は、会場のムードと曲調がハマっているかどうかを主な基準として選曲していました。そのため特に深く考えず、ワークの時間に、歌詞がついている楽曲も普通に流していました。いま振り返れば、これは配慮が足りなかったなぁ、と反省しかありません。
というのも私自身が楽曲の歌詞を楽しみたいタイプで、歌詞の世界を想像し没入するのがとても好きなんです。どんな表情なのかな、季節はいつだろう、嬉しいのかな、この先の結末は? などなど、連想は止まることを許しません。これは長年のクセになっていて、歌詞を聞くと、頭が半自動的に詩の分析へとワープしてしまいます。
ですから、もし私自身が参加者として席に座っていて、ひとたび歌詞に気を取られてしまったとしたら、思考がチラチラと移ろい続けてしまい、目の前のワークにはとても集中できそうにないと気づいたのです。これにはハッとさせられました。場にマイナスの作用を起こしてしまう可能性の高さをひしひしと感じ、すぐに歌詞がない曲へ変更したのは言うまでもありません。
また、よくよく考えてみれば、歌詞の内容に思考が引っ張られるケースも想定しておくべきでした。無意識のうちに差し込まれる言葉の中から、たまたま良いワードを拾って、場にポジティブな影響が生まれれば幸運ですが、全く逆のパターンもあり得ます。暗い歌詞や悲しい歌詞に引っ張られて、ワークショップの対話まで盛り下がっては大変です。
どのワードにどんな反応が生まれるかは、その瞬間になるまで誰にも分かりません。このような不確実性が高い要素をワークショップの場に存在させておくことは、冷静に考えてみれば、リスクでしかないように思います。
ワークショップでの選曲
こうした背景から、私はワークショップ中の選曲を丁寧に考えるようになりました。
現在は
- 歌詞がない曲
- 洋楽の曲
- 邦楽の曲
という優先順位でワーク中に流す音楽を選ぶようにしています。
歌詞がない曲というのは、カフェミュージックであったり、ピアノやギターで構成された楽曲などを指します。これらの中からアップテンポな曲、しっとりする曲などを分類していて、場の状況に応じて使い分けるようにしています。
洋楽の曲は、日本語ほど歌詞に引っ張られるリスクが高くないとの判断から、場を盛り上げたいシーンでよく選ぶようになりました。洋楽の音作りや歌い手の声質は、場を自然とアッパーにしてくれる感覚があり重宝しています。
邦楽の優先度は最下位になりましたが、これには原則と例外があります。普通の状況であれば使わないのですが、稀に「この瞬間、この場では邦楽が場にいい影響をもたらすハズ!」という感覚が湧いてくる時があるのです。
例えば合宿プログラムの後半、参加者の疲れが顕著になってきている時などは、皆で口ずさめる邦楽がかかることで、場が息を吹き返したりします。そのため、今は邦楽が必要と判断したシーンでは、意図的にその状況にフィットする曲を選択しています。
また、ワークショップ開始前のアイドリングタイムにも邦楽は効きます。緊張している方が多い時などは進んで選んでみると良いでしょう。
会場での音楽の流し方
ワークショップの会場での音楽の流し方には、主に4つの方法があると思います。
1つ目はスマートフォンやパソコンなどのデバイスから直接音楽を流す方法です。最近の電子機器はとても性能が良いので、10~15人程度の小規模な会場であれば、これで十分です。小会場ではスピーカーにつなぐと音圧が強すぎ、参加者の集中を阻害してしまうこともあります。参加者とスピーカーの距離が近すぎる場合は、特によくありません。こうした状況では、直接音楽を流してしまいましょう。
2つ目はスピーカーから音楽を流す方法です。少し広めの会議室や体育館などで開催する場合は、断然こちらのほうがいいムードを演出することができます。音の強さもさることながら、音の広がりが全く違いますので、会場全体に満遍なくBGMを届けることができます。スマフォやPCからの直接出力は、どうしても音がデバイスから直線的に飛び、かつデバイスの目の前で落ちてしまうため、会場後方へは広がりません。スピーカーはこうした音のムラを軽減してくれます。
私は50人以上の規模でワークショップを実施することもあるため、JBLの大きめなスピーカーを用意していますが、そこまででなければ小型サイズでも十分に強力です。
3つ目は会場の機材から音楽を流す方法です。イヤホンジャックやBluetoothで接続し、備え付けのスピーカーから音楽を流すことができます。100人規模の会場でワークショップを開催する時などは、この方法が最高です。ただし接続〜テストに時間がかかったり、音量調整の自由度が低かったり(会場の方に舞台袖で調整していただかないと音量を変えられないケースなど)と、少し煩わされることがあるので、自信が無い時やバタつくのを避けたい時は、上記のような大きいスピーカーでも支障ありません。
4つ目は合わせ技になるのですが、自分のデバイスから直接音楽を流し、会場のマイクで拾う方法です。やり方は簡単で、自分のスマフォなどをで音楽を流し、電源をONにしたマイクに近づけて固定します。そうすると会場のスピーカーから、マイクが拾った音が流れます。これはマイクが複数本用意されていて、それなりに大きな会議室・会場の場合に有効です。マイクの性能によってはうまく音を拾ってくれないこともあるので、実施する際は事前に試しておくと良いです。また、マイクがずれると音量がガタガタと急変するので気をつけましょう。
音楽の流し方は、ざっとこのくらいです。ぜひ、会場やその時々の運営にフィットした方法を試してみてください。ただしいずれの場合でも、参加者の対話を邪魔しない程度に、さりげない音量で流すのがマストです!
多様な価値観や意見を取り入れてこそのワークショップ
ワークショップには様々な方が参加されますから、こちらが良かれと思って準備していたことでも、その時々の参加者のコンディションや特性によって、裏目に出てしまうことも当然あります。もし予期せぬミスに直面したら、どうすれば場に集ってくださる方々が最大限に満足して帰れるかを考え、臨機応変に運営を切り替えていくことがとても大事です。自分の考えに固執すると、損失が大きくなります。
こうしたことをより強く意識するにあたって、いただいたリクエストは、私にとって大きな学びでした。
この記事を書いていて、私もまだまだ考えが至らない点がたくさんあるはずだと、改めて身が引き締まりました。参加してくださる方々のリクエストを大事に扱い、日々謙虚に改善していこうと思います。
余談ですが、最近「ワークショップ道には終わりがないなぁ」としみじみ感じています。完成・完璧という概念が絶対に存在しない道を歩けるのは、とても楽しいことですね!
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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