荒木博行さん著『独学の地図』からワークショップデザインを見つめる

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私は荒木博行さんのお話しが好きで、毎週配信を聴いています。多彩な知識を土台にして、複雑な物事を整理し、斬新な切り口や共通性を見出す目線、難解で掴みづらいテーマを軽やかに言語化する選語力、情報どうしをつないで新しい可能性を提示する発想力など、荒木さんのお話は実に鮮やか! ロールモデルのお一人として、大変尊敬しています。

そんな荒木さんの著書『独学の地図』を読んでいたら、「若い頃に研修講師を任されたが失敗した」というエピソードが目に止まりました。現在の荒木さんからは、失敗するお姿なんて全く想像ができませんので、とても驚きました。

そのうえで、荒木さんの失敗体験は、ワークショップにおいても同じことが起こる可能性が十分にある内容でしたので、ぜひブログで取り上げたいと思いました。

目次

荒木さんの講師体験から学ぶ

まず始めに荒木さんの失敗体験を引用させていただきます。任された新人研修をうまく進行することができず、その原因を振り返っているシーンです。

私が注目したのは「参加者のことをほとんど考えていなかった」という告白部分です。それから「新人たちの参加前の状態、終了時のゴールを考えていなかった」と回想が続きます。

当初、失敗の要因は、緊張して話し方がたどたどしくなってしまったから、とか、質疑応答がうまくいかずにペースを崩したから、と考えていたのですが、振り返って考えると本質はそこではありませんでした。では何かと言えば、先輩が作った資料の引力に負けて、参加者のことをほとんど考えていなかったことにあったのです。

新人たちの参加前の状態も、終了時のゴールの状態も考えていなかった。だから、配属前の実務経験のない新人に、細かい文書実務的なルールのあれこれを事細かに教えてしまったわけです。

当然、参加者の反応は鈍くなり、空気は重くなります。ここからバッドサイクルが始まっていきました。

その空気の重さに気づいて、慌てる。慌てて余計なことを言う。余計なことに予想外の質問が入る。その質問が予想外で、自分でもさらに予想外の答えをしてしまう。 自分でも話しながらその答えのおかしさに気づく。慌てる……。という負のループに入っていったのです。

このループに入ってしまったのは、喋り方が下手だとか質疑応答の対応がイケていない、ということが理由ではありません。 全ては事前に思考投入すべきところを間違っていた、ということなのです。先輩の資料を完コピして、流暢に喋る練習をしている場合ではなく、もっと参加者について想像しなければならなかったのです。

荒木博行さん著『独学の地図』

荒木さんはご自身の体験を振り返って「全ては事前に思考投入すべきところを間違っていた」と書かれていますが、私はこの一言に大きな学びが凝縮されていると感じました。なぜなら、駆け出しのワークショップデザイナーほど、同じ失敗にハマってしまう可能性が高いからです。

自分都合で作られたワークショップは機能しない

ワークショップデザイナーが優先して考えるべきは、「どのような状態の参加者が来て」、「終了時にどうなっていて欲しいか」です。このためワークショップを組み立てる際は、参加者の状態をリサーチし、Before Afterの変化をデザインしなければなりません。

ところが初心者の方ほど、自分に矢印を向けてワークショップをデザインしてしまいがちなのですよね。以前書いた「ワークショップ運営の初心者が陥りやすい7つの罠」という記事でも触れましたが、不慣れな方は、「自分が知っているワークをつなげる」という方法でワークショップをデザインする傾向が顕著です。

荒木さんは先ほどの体験から、

私は、このように報告のアウトプットを考える過程で、人前に立つ前には「資料から考えるな。参加者の終了後と開始前の差分から考えろ」という(超当たり前なのですが忘れられがちな)学びに自ら辿り着きました。

荒木博行さん著『独学の地図』

と述懐されています。

このフレーズをお借りすると、「ワークから考えるな。参加者の終了後と開始前の差分から考えろ」ということが、私のお伝えしたい論点となります。

ワークをつなげていく方法が悪いわけではありませんが、それに躍起にってしまうと「参加者にどうなって欲しいか」より、「どうワークをつなげるか」ばかりを考えてしまうのです。その結果、とても自分都合なワークショップが出来上がるケースをたくさん観測してきました。ご想像がつくと思いますが、矢印が自分に向いた状態で作られたワークショップは、やはり面白くありません。

こうした残念なワークショップの量産を避けるためには、①参加者の現在の状態を知り ②会が終わった時にどうなっていて欲しいかを考え ③そのためにコンテンツをデザインする という手順で思考していくことをクセづけることがとても重要です。機能するワークショップを作るための3つの手順! という記事で詳しく書いていますので、興味があればご一読ください。

参加者ファーストでワークを配置する

かく言う私も、お恥ずかしながら自分本位にしか物事を考えられないタイプでした。大学2年生頃までは、自分が楽しいと思った企画を押し通していた記憶があります。上手くいったプログラムもあれば、大ゴケしたこともありました。

そんな自分のワークショップデザインに一本筋が通ったのは、ネイチャゲームリーダーの資格を取った際、プログラムの作り方を学べたことがきっかけでした。ネイチャゲームはフローラーニングの理論に基づき、①熱意を呼び起こす ②感覚をとぎすます ③自然を直接体験する ④感動をわかちあう という段階を踏んで体験を深めていきます。

参加者の熱意を呼び起こすためには、自分の目線を手放し、相手の目線に立って想像力を働かせることが必要です。そうしてプログラムを作ってみたら、参加者がとてもイキイキとしていたんですよね! これまでとは全く違う手応えに興奮を覚えながら、今後は参加者の目線からプログラムをデザインしようと、私は自らのOSをアップデートしたのでした。

この体験から、思いついたワークを入れたり、自分が主張したい内容を盛り込むのではなく、参加者ファーストで必要なワークを配置できるようになることが、初心者と中級者との分水嶺であると私は考えています。

もし単発の企画を作るだけなら、ご自身の楽しさを起点にワークショップをデザインするスタイルで全く問題ないと思うのですが、中朝的にワークショップを実践していく予定がある方は、ぜひ早い段階で意識をシフトすることをオススメします。その方が、お互いの満足感につながると思うから!

今回は荒木博行さんの『独学の地図』からお言葉をお借りし、ワークショップを見つめました。本当はもう一箇所掘り下げたい部分があったのですが、長くなってしまったので、こちらは別記事で書いてみようと思います。今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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