WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日同じ会場で2日間ワークショップを開催させていただいたのですが、ファシリテーターの立ち位置によって、参加者との心の距離感が変わることを再実感しました。初日は机の後ろに立って、2日目は机の前に立ってファシリテーションをしたのですが、参加者とのコミュニケーション量は後者の方が圧倒的に多かったです。
実はファシリテーターの立ち位置によって、参加者との距離感が近くなることもあれば、遠くなることもあります。ワークショップの場が明るいムードになるか、静かなムードになるかも同様です。そのため、自分が演出したい空間のイメージに沿って適切なホームポジションを選べることは、ファシリテーターが磨くべき重要なセンスです。
ですが、まだワークショップ運営を始めたばかりの方は、PCの置き場を中心に立ち位置を決めてしまうことがほとんどだと思うのです。この1パターンだけしか選択肢がないのは、もったいないと思うんですよ。
ファシリテーターの立ち位置は影響力が強い
私は参加者との心の距離感を縮めたいワークショップや、ワイワイ盛り上がってもらうことを意図したワークショップでは、自分と参加者の間に何も隔たりを作らないような立ち位置で振る舞うことを原則としています。自分と参加者との間に長机や演台などが全くない状態の方が様々な感情の疎通が容易で、つられて自己開示も深まりやすい効果があると感じるからです。
私は、自分と参加者の間に何らかの障害物があると、自分を隠しているような感覚が湧いてくることがあります。自分を守っている、と言い換えてもいいかもしれません。参加者との間に何かが挟まれているだけで、ほんの少しのセーフティーゾーンが生まれるというか、完全に自分をさらけ出しているわけではない安心感が生まれるんです。
この心理が私自身の緊張を緩和するなど、ポジティブに作用することもあるかもしれません。
ですがワークショップは往々にして、自己開示の深さに応じて、対話の深さが規定されるものです。ファシリテーターが自分を隠している場で、参加者だけが旺盛に自己開示をするなんてことは起こり得ません。コミュニケーションには返報性の原則があり、ファシリテーターがオープンであるからこそ、参加者も安心して心を開くことができます。
一方、カチッとした場を作りたい時、自分の話を長時間聞いて欲しい時などは、演台や机を挟んで参加者と相対すると効果的です。特に演台はオフィシャル感を演出するのに適しています。演台のムードって、校長先生のお話や、社長の講和など、しっかり話を聞かなければならなかったシチュエーションの記憶と密接に結びついてるのかなと思いますね。
意図を持って立ち位置を選択する
私はつい先日こちらの会場でコミュニケーションを探究するワークショップをご提供させていただいたのですが、机の付近には立たず、スクリーンの斜め前の位置で話すことを選択しました。参加者がかなり固い雰囲気の会だったので、机の後ろに立って距離感を感じさせるのは得策ではないと感じたのです。
ちなみに、これまで私が出会ったワークショップデザイナー / ファシリテーターは、演台や机の後ろに立つことを基本とされている方が多かったです。この傾向は、特にワークショップのファシリテーションに不慣れな方ほど顕著でした。長机の後ろに立てばクリッカーを使わずとも投影資料を操作でき、投影資料も手元で見ながら話すことができるので、確かに便利なのですよね。
意図を持ってその立ち位置を選んでいるのなら別ですが、他の選択肢を知らずに漫然とこの位置に立ち続けているだけであればもったいないと思います。なぜなら空間演出の幅が狭まってしまうからです。また、立ち位置を固定するか、移動しながら進行するかもワークショップの雰囲気に関わる重要事項です。明るく動的な場にしたければ、会場を自在に移動しながらファシリテーションをするとGoodです。
もし中長期的にワークショップに専念していかれるのであれば「PCを基点に、机の後ろに立つ」だけではない立ち位置も持っておいたほうが、自分が作りたい空間づくりを後押ししてくれます。
立ち位置を自由に選ぶためには、クリッカーの存在が不可欠です。ある程度性能の良いクリッカーがあれば、会場内のどのような位置にも立つことができます。私の愛用はこちら。
また、ワークショップの構成をしっかりと理解し、投影資料の内容を頭の中に入れておくことも重要です。画面を見ながらでないと説明できない方は、不安でPCの前から離れることができませんから。私は事前に何度か資料を見返して、流れを頭にしっかりとインプットしてから場に臨むようにしています。
自分をさらけ出すのがファシリテーター1つの役割
私が好きなジャズ漫画『BLUE GIANT』では、主人公の仲間が「君はソロができないのか? 自分をさらけ出すことができないのか?」と詰問されるシーンが描かれています。核心を突き刺していて本当にキツい質問だよなぁ…、と私は毎回心がきゅっとなるのですが、実は自分をさらけ出すことができないのか? と問われているのは、ファシリテーターも同じだと思うのです。
前述したように、ファシリテーターの自己開示が参加者の心をオープンにしていきます。ファシリテーターは自分を積極的にさらけ出し、喜んでワークショップの肥やしにならなければならない存在なのです。だから自分を隠すような位置、守れるような場所に立っていたんじゃダメだよなって、私はいつも思っているんですね。
最初のうちは勇気がいるけれど、飾らない、偽りのない自己開示から場が動き出した時ほど、ファシリテーター冥利を感じる瞬間はありません。ぜひあなたにも、こうした瞬間をたくさん作り出して欲しいなと思います。
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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