WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。日曜日は家族とのんびり過ごしていました。
娘に「耳がかゆい」と言われ耳かきを担当することになったのですが、耳かきって緊張しませんか? 深くつっこみ過ぎてもダメだし、力を入れすぎてもダメ。ちょっと加減を間違えるとすぐ「痛い…!」「怖い…!」という声が上がります。
もうすぐそこに見えているのに〜〜! ともどかしい気持ちを抱えながら、慎重に耳かきを扱わせていただきました。
無事に終わってほっとしていたら、耳かき時の注意点って「自己開示の求め方」に似ているかもしれないという考えが浮かんできました。
というのは、耳かきも自己開示も相手を丁寧に扱う必要があり、かつ相手がNOと思うラインを踏み越えてはいけないからです。
ワークショップは自己開示の連続
ワークショップではほぼ全てのシーンで参加者に自己開示をしていただくことになります。
「好きな食べ物」「趣味」といったライトな開示もあれば、「業績を高めるために改善すべき問題」「原発処理水の海洋放出について思うこと」などの重めな開示もあり、実に様々です。
自己開示には「勇気」がいる という記事でも書かせていいただきましたが、もし自分のピュアな想いを誰にも受け取ってもらえなかったら、人はとても傷つきます。
そのため、まずは参加者がお互い上手にキャッチボールできるように、小さく軽い自己開示から始めて、だんだんと核心へ迫っていくようなプロセスをデザインすることが重要です。
お互いの考えをただ受け取り合える、お互いの存在を承認し合える安心安全な空間を作ることができたら、そこには良質な人間関係が築かれます。
このような状態へと場をリードすることができれば、自己開示は自然と深くなります。
越えちゃいけないラインを大切に守る
ただし、こうして丁寧にワークショップを進めても、各人の中に「これ以上は開示できない」というラインは必ず存在します。
たとえば業務のボトルネックとなっているのが直属の上司だったとしたら。本音では上司の更迭を望んでいたとしても、そんなことを公言したら逆に自分が飛ばされてしまうかもしれません。
また、現在の東北地方には、震災について語ることができるまでに気持ちの整理がついていた方もいれば、全くそうでない方もいらっしゃいます。
もっと広く目を向けて見ると、過去の失敗を笑い話として扱えるようになった方もいれば、未だに深刻な状況に直面されている方もいるでしょう。
ワークショップのファシリテーターは、こうした多様な状態の方がいることを考慮し、決して参加者に自己開示を強制してはならないと私は思っています。無理やり自己開示をさせようとすればするほど人の心は閉じていきますし、場合によっては深刻なトラウマをも生み出しかねないからです。
昔、場作りや教育を担当されている方とお話しした際、「口からぐいっと手を突っ込んで、思っていることを引きずり出しているんですよ」とガハガハ笑っておられたのですが、この方に扱われる人は可哀想だなと心から思いました。
無理やり自己開示をさせるのって、「痛い!」ってヘルプの声をあげているのに、さらに奥へ耳かきを押し込むような行為だと思うんですよね。
大事なのは「普段の自己開示」の度合いとの比較
にも関わらず強く自己開示を求めてしまうファシリテーターが存在してしまうのは、「自己開示が深くなければ、いい場にならない」ということを強く思い込みすぎて、不安に囚われているからなのではないでしょうか。
私は「自己開示が深い=いい場になる確率が高い」は正だと思います。そのためにできる限りの手は打ったほうが良いでしょう。ただし、自己開示の深さ、については何を基準に考えるかをよくよく考えておかなければならないと思っています。
結論から書くと、私は「その人の普段の自己開示」を基準にしています。ワークショップの場に来ていただいて、いつもよりもちょっと多く、ちょっと深く自己開示をしていただけたらGoodです。
これを一般的に想起される「深い自己開示」に基準を合わせてしまうと、たちまちおかしな話になるのです。大事なのは、各参加者がいつもより少しでも多く自己開示できたかどうか。壮大な自分語りなどはあまり必要ないのです。
なぜなら、皆がいつもよりもちょっとだけ自分を開くことができたら、いつもは生まれなかった対話と触発が必ず生まれますから。こういう意識を持っておくと、場作りはもっと優しくなると思うのですよね。
今日は耳かきを題材に、こんなことを考えてみました。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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