ワークショップの成果発表は「論理」と「感情」を最適な比率で配合する

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。そろそろ年末が迫ってきましたね!

2024年も様々なワークショップをご提供させていただきましたが、中でも印象的だったのが「キャトル宮古跡地」の利活用を考える全4回の取り組みでした。連続でのワークショップはドラマの宝庫。だからよーく記憶に残るんですよね。

また、学びが大きかったことも要因の一つです。「ワークショップでアイデアを発表してもらう際大切にしなければならないこと」について、この案件からさらに言語化が進みました。今日はこの点について記事を仕立ててみます。

目次

ワークショップの発表に必要な要素とは?

今回とても勉強になったなと思ったのが、ワークショップのアウトプットにおける「論理と感情」のバランスについてです。少し経緯をご説明します。

キャトル宮古の利活用を考える全4回のワークショップは、完了後に宮古市へのプレゼンテーションが予定されていました。市民の要望を具体的に伝え、実現に向けて動いていただくための大チャンスです。

そのため運営側では事前に発表フォーマットを用意することにしました。制限を設けず自由に発表いただくのも面白いのですが、せっかくの機会ですので、クオリティにバラツキが生じないように配慮したいと考えました。

また、実現不可能なアイデアをぶち上げられる事態も避けたかったのですよね。拡散のフェーズでは突拍子もないアイデアが歓迎されますが、大人たちが宮古の未来を真剣に考える場で、夢物語を披露されても困ってしまいます。ですから企画をまとめるためのフォーマットをお渡しし、アイデアが適切に収束されことを目指しました。

こちらが発表フォーマットの1ページ目です。昔お世話になった元上司が『仕事は1枚の表にまとめなさい。』という本を書かれているのですが、自分たちの企画を整えるためにも、企画を聞き手に分かりやすく伝えるためにも、1枚の概要書は本当に重要な役割を果たしてくれます。これがあるとないとでは雲泥の差です。

この他、事例写真やイラスト、グラフ等を挿入するページ、企画検討中に浮かんだアイデア一覧を記入するページなどを用意しました。イメージとしては、会社で作られている企画書から、予算や費用の積み上げなど金額に関する項目を除いたような体裁です。

こうしたパーツが揃っていれば、公の場でのプレゼンテーションにも支障がないだろうと思いました。

「論理」と「感情」の配合比率を最適化

ただ、前半2回のワークショップを通じて参加者の方々と触れ合ううち、これらの発表フォーマットだと不足があるように感じられたのです。

たとえばDay1ではキャトルの思い出トークが大変に盛り上がりました。誰にとっても青春の1ページという形容がピッタリなエモい共有が続き、この場所が市民からいかに愛されて来たのかが分かりました。Day2ではキャトル宮古跡地の活用アイデアが650個以上も誕生しました。熱量が桁外れ。もはや異常と言ってもいいくらいです。

用意していた発表フォーマットは、こうした参加者の想いをしっかり乗せることができるか?

そう改めて考えた時に、やや論理に寄りすぎた構成になってしまっているのではないか? という懸念が脳裏によぎりました。宮古市へのプレゼンテーションという機会に備え、会の目的にフィットする完成度を目指すことも大事ですが、想いをうまく込められない発表になってしまっては片手落ちです。

私は常々「ワークショップから新しいアクションが生まれたらいい」と思って場づくりを実践していますが、そのためには参加者の心が動くことが欠かせないのですよね。

このため最終的には下記の自由記述ページをフォーマットに追加し、自分たちの想いを語るための適度な余白をお渡ししました。ひとつまみの調味料が料理の仕上がりを左右することがあるように、たったこれだけのことでワークショップの成果が大きく変わった、とても大切なポイントだったと思います。

「論理」と「感情」は補完関係

私は今回のワークショップを経て、こうした参加者の想いが強い場では、論理的な発表内容を仕上げるだけに留まらず、想いを余す所なく表明できる遊びの部分まできちっとデザインする重要性を心に刻みました。

どれだけ参加者の方々が良い対話を重ねて来ていたとしても、最後に提示する発表フォーマットが場にフィットしていなければ画竜点睛を欠く。それまでの時間が台無しです。

こうしたことに考えを向けてみた際、アダム・カヘンの『POWER & LOVE』が思い出されました。邦題は『未来を変えるためにほんとうに必要なこと 最前の道を見出す技術』です。

この本の中でアダム・カヘンは「愛なき力は暴力であり、力無なき愛は無力である」というキング牧師の言葉を引用し、愛と力は相反するものどうしではなく、互いに補完関係にあることを示しています。

これが「論理」と「感情」の関係にもそのまま当てはまるのではないかと感じたのです。つまり両者を水と油の関係として対立させるのではなく、未来を変えるためにどちらも必要な要素として扱うことが、とても大切なのだと気づかされました。

ワークショップの目的達成に向けて、最後の発表では「論理」と「感情」がどれくらいずつ配合されている必要があるか、これからはより精緻にデザインしていきたいと思います。学びが増えて、幸せです。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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