WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。以前ファシリテーターが言ってはいけない「参加者の思考を止める」NGワードという記事を書きまして、ファシリテーターは「難しい」というワードを使わないようにした方が良いとご紹介しました。
難しいというワードはとてもネガティブな力を持っており、「難しいんだ」というムードが場に蔓延してしまうと大変です。本当は十分考える力を持っている人たちでも、思考が止まって何も考えられなくなってしまいます。だからファシリテーターが「難しいですよね〜」という言葉を安易に発するのは控えたほうがベターなのです。
ただ、ワークショップ中には、参加者側から「難しいねー」という声が上がることもあります。一言二言の発言なら気にかける必要はありませんが、連続して続くとか、複数のチームから発言があったら要注意。
放置しておくと、難しいウィルスが他の参加者にも感染してしまいますから、ファシリテーターは何かしらの手を打たねばなりません。
「難しい」への対処ステップ
参加者から「難しい」というワードが発せられたのをキャッチしたら、まずは自分が提供しているワークや問いの難易度をチェックしましょう。もしかしたら本当に難しい場合もあるでしょうから、その時は軌道修正をして簡易化しましょう。
ワークや問いの難易度は高くないと判断できたケースは、少し様子を観察してみます。人によっては「難しいね〜」が口癖になっていたり、周囲の参加者の心を軽くしたくてそう発言していたりすることがあります。これらはさほど場に悪影響を与えませんので、そのままで大丈夫です。
そうではなく、どんよりした空気が広がり始めたケースは、ファシリテーターが思考の切り口や、考える手順などのヒントをご提供してみることから介入を始めてみましょう。解決の糸口が見えたら、あっという間にワークに没入してくださるケースもよくあります。
それでもダメな時は、何が難しいと感じているかを尋ねてみます。そうすると頭の中でぐちゃぐちゃしている部分や、不安を感じていることなどを教えてもらえるので、それらのお気持ちに寄り添いながら、思考の絡まりをほぐしたり、励ましたりしていきます。
この際に寄せられたご意見への回答は、必要に応じて全体アナウンスすることも有効です。他のグループも同じような悩みを抱え躓いている可能性があるから!
「難しい」が発せられた真因を探る重要性
ちなみに参加者から「難しい」という声が上がる背景には、いくつかのパターンがあります。そのためファシリテーターとして介入を試みる時は、「難しい」の背景に潜む真因を探り当てて、それらを取り除けるような関わりを意図することが重要です。
まず1つ目は「なかなか答えが出ない問いに取り組むのが苦手」というパターン。哲学的な問いや、バラバラに見える事象の共通項を探すなど、探究・探索が欠かせないワークにアレルギーを感じる方、ストレス耐性が低い方は一定います。
2つ目は「組織のコンディションが悪くて正解しか言えない空気に支配されている」パターン。こういうケースでは、考えることそのものは難しくなくても、上司や特定の誰かのOKをもらえる範囲の回答を探すのが難しいな〜、と参加者が不安に感じていることがあります。
3つ目は「拡散は得意だけど収束が苦手」「拡散は苦手だけど収束は得意」というパターン。人や組織の傾向によるのですが、アイデア拡散は超得意だけれど、まとめるのは超苦手、といったように、どちらかがすごく強くて、反対が弱いケースがあるんですよ。こういう場合、アイデア出しフェーズでは大変に盛り上がって、まとめのフェーズでは静まり返ったりします。
上記の派生として、アイデアを考えるのはとても活発で(責任なし)、意思決定・アクション策定をする際は別人になる(責任あり)というパターンもあります。責任の有無によって、ワークへ向き合う態度がまるっきり変わってしまうんですね。
組織によってはこれらの複合パターンも有り得ますし、上記以外の理由から難しさを感じていることも多々あります。
ワークショップから「難しい」を遠ざける
本当はしっかりと考えられる知識や姿勢をお持ちなのに、何らかの作用で「難しい」と感じてしまい、せっかくの対話やアイデア共創が止まってしまうのって、私はすごくもったいないと思うんですよね。
上述したように、「難しい」の背景には様々な理由があります。ファシリテーターが真因を特定しつつ、適切な介入をすることができたら、場の空気はガラリと変わって意見が飛び交うようになります。
機能する対話の増加を意図して、ぜひ「難しい」をワークショップから遠ざけてみてください!
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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