初めてのワークショップのやさしい作り方

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。

もう20年以上も前のことになりますが、私は高校2年生だった17歳の時にワークショップの企画運営を始めました。当時の私はどのようにワークショップデザインを進めたらいいか全く知りませんでしたし、今と違ってインターネットが未発達な時代でしたから、気軽に調べることもできませんでした。1つのアイデアを考えるのに何日もかかって、しかもボツになる確率も高くて、(ワークショップを作るのは大変だなぁ…)と毎晩頭を抱えていたことが、とても懐かしく思い出されます。

先日ふと、当時の自分に向けてワークショップの作り方を解説するとしたら、今の自分は、どんな風に、何を書くだろう、という疑問が湧いてきました。あれこれ想像をしてみましたが、ワークショップを全く開催したことがない若者に向けて、わかりやすく、かつ実用的な記事を書くのは、とても難しい気がしました。

でも、書いてみる価値はあるかもしれない。

そこで、余計なことは削ぎ落として出来るだけシンプルに、平易な言葉で、ワークショップの大まかな設計手順を書いてみました。

これでもまだ難しいような気がしますし、文章は長いし、抽象的な点もあるので、結局は頭に汗をかいていただき、あーでもないこーでもないと試行錯誤していただくことでしか乗り越えられないカベがあるとは思うのですが、それでも「何もないよりはマシ」かなと思います。

必ずこの順番度通りに進まなければいけないわけではないので、取り掛かりやすいところから始めたり、飛ばして進めてみたり、自由に試してみてください。

ワークショップの企画運営が大好きな若者が増えることに、少しでも貢献できたら幸いです。

目次

ワークショップのねらいを考える

ワークショップを企画する時は、まず初めに、ワークショップのねらいを決めることから始めましょう。ワークショップのねらいを決めておくと、どんな内容のワークがあると良いかが考えやすくなります。

ねらいとか目的を考えるのは苦手、という方も多いと思います。私もあまり得意ではありませんでした。そうした方は、ワークショップが終わった時、参加者にどうなっていて欲しいか? という構文を使って想像してみることをおススメします。

この時、社会全体への影響だとか、誰かの人生を変えたいだとか、おおげさで立派なことは意識しすぎなくて大丈夫です。もっと前向きになってもらいたい、もっとこの問題について知ってもらいたい、いろいろな人と話すのは楽しいと思ってもらいたいなど、自分なりの言葉が見つかったら100点です。

ねらいを定めることができたら、簡単な言葉でかまわないので文章にして、いつでも見られるようにしてきましょう。こうすることで企画の内容がブレにくくなりますし、参加者をお誘いするときの宣伝文にもなり、一石二鳥です。

どんな話し合いにしたいかイメージする

ワークショップのねらいが決まったら、どんな話し合いの雰囲気にしたいかをイメージしてみましょう。ワイワイ話し合いたいとか、みんなの考えをじっくり聞きたいとか、理想の様子を思い描いてみることが大切です。

理想の様子がイメージできたら紙に「問い」を書いてみるととても良いです。

例えば、ワイワイ話し合うのが理想だとすれば、ワイワイ話し合うためにはどうしたらいいか? という問いを書く。

みんなの考えをじっくり聞くのが理想だとすれば、じっくりみんなの考えを聞くために何ができそうか? などの問いを書く、と言った具合です。

こうすると企画に筋が通りやすくなり、自然とアイデアも湧いてきます。

話す内容をしぼる

どんな雰囲気にしたいかのイメージが進んだら、次は語り合いたいテーマを考えましょう。ここでは「しぼる」という気持ちが大切です。

たとえば、話したいポイントがふんわりしているワークショップは困ってしまいます。「これから犬について話してください」と言われたらどうでしょう。犬の何について話したらいいの?? とちょっと悩んでしまいますよね。これではなかなか話が進みません。

そこで「犬の好きなところ/きらいなところ」としぼってみるといかがですか。「犬について」と比べたらかなり話しやすいでしょう?

また、話したい内容が多すぎるワークショップは疲れてしまいます。たとえば2時間のワークショップで、話題が10個も20個もあったら、いそがしくて大変です。

だから、話す内容はしぼりましょう。話しやすい話題、ちょうどいい話題数にしぼれたら、ワークショップはとても盛り上がります。

ちなみに、ここでも「問い」を作ることがとても重要です。問いは自然と答えを考えたくなるパワーを持っています。

そのため「学校の課題について話してください」と伝えるより、「学校の課題は? というテーマで話してください」と伝えたり、見せたりするほうが意見が出やすくなるのです。だまされたと思って、ぜひ試してみてください。

みんなが話しやすくなるための気配り考える

話したいポイントがしぼれたら、次はみんなが話しやすくなるための気配りを考えておきましょう。

ワークショップには緊張して参加される方がとても多いです。そのため、さいしょは緊張をほぐすために自己紹介をしあったり、アイスブレイクをして安心なムードを作ることが大切です。自己紹介アイスブレイクについては過去に書いた記事があるので、良かったら参考にしてみてください。他にも検索をすれば、たくさんの情報が手に入ると思います。

もしメインで話したいことがちょっと難しいテーマの場合は、本題に入る前に、軽い話題を用意しておきましょう。

たとえば地球温暖化の解決方法は? を話し合いたいとしたら、地球温暖化で気になっていることはある? とか、地球温暖化についてどう思う? とか、気楽に自分の意見を言えるような準備運動パートがあると良いです。

いきなり難しい話に入ってしまうと、誰も意見を言出せなくなり、そのままずっと盛り上がらないことがあるので要注意です。

感想をみんなでわかちあう時間を用意する

ここまでワークショップを設計することができたら、いよいよワークショップの終わり方をデザインしましょう。ワークショップのラストは、参加者の感想をみんなで共有する時間を用意すると良いです。

ワークショップから感じたことや発見したことは、面白いくらい人それぞれです。だから最後に「今日はどうだった?」の感想をわかちあうと、おたがいの理解が深まったり、自分ひとりだけでは気づくことができなかった大発見が生まれるものです。

ですからぜひ、ワークショップの最後は「今日の気づきや発見はなんでしたか?」とみんなに問いかける時間を持ちましょう。

感想共有のやり方は、ペアでの対話や、小グループでの共有、全体に向けてひとりひとりが話すなど複数ありますが、まずは4~5人程度のグループでの共有が良いでしょう。私は4~5人グループで感想をわかちあってもらい、全体にも伝えたいことがあれば手をあげて教えていただくというやり方を採用することが多いです。

このわかちあいの時間があるとないでは、参加者の満足度ががらりと変わります。もちろん、わかちあいの時間があるほうが、参加者の満足度は高くなります。

ワークショップに名前をつける

上記までで、ワークショップそのものの設計は完了です。ここまでの設計が無事に終わったらワークショップに名前をつけましょう。

正直に言えば、名前なんてつけなくって、ワークショップは開催できます。ですが、名前をつけることによって、このワークショップは何のために開催するワークショップなのかが、改めてハッキリするのです。開催のねらいと、ワークショップの内容、そして名前がピタっと一致していれば、そのワークショップはきっとうまくいくでしょう。

ワークショップの名前は、奇抜にしたり、オシャレにする必要はありません。無理して横文字を使ったりすると、ちょっとおかしな印象を与えてしまうこともあります。それよりも、何のワークショップなのかが正確にわかることのほうが大事なので、〇〇を考えるワークショップとか、〇〇について対話をするワークショップ、程度のネーミングで充分です。うまく思いつかない方は、ワークショップのねらいをそのまま名前にしてしまってOK。

名前があると宣伝の時にも便利ですし、ふしぎと「このワークショップを大切にしたい」という気持ちも湧いてくるものです。

内容を紙に整理する

これでワークショップが完成しました! 最後はここまでの情報を紙に書き出し、整理しましょう。もちろん、パソコンやスマートフォンでまとめても大丈夫です。

書き出す項目は下記をおさえておいてください。

  1. ワークショップの名前
  2. ワークショップのねらい
  3. 具体的な予定
  4. 備品など

頭の中ではうまくできたと思っても、書いて見るとおかしな点に気づいたり、時間に無理があるように感じたり、さまざまな発見があります。もし違和感があるポイントが見つかったら、あわてずあせらず直しましょう。

また、このように文字にしておくと、ワークショップを一緒に運営してくれる仲間との意思疎通もスムーズになります。

ワークショップは企画するほど上手になる

ここまで、ワークショップを初めて考えてみる若者を対象に、ワークショップの作り方を書いてみました。どこかひとつでも、あなたのワークショップづくりの手助けになったら嬉しいです。

ワークショップだけに限らず、なにごとも最初は勝手がわからず、うまくいかなかったり、時間がかかったりするものです。ですが、ある一定の線を超えると、これまでの苦労がまるでウソだったかのように、自動的に、スラスラとこなせるようになることが世の中にはたくさんあります。

たとえば、自転車の乗れるようになった時のことを思い出してみてください。さいしょは補助輪のない自転車でフラフラよろけながら、頭の中でバランスを取るにはどうしたらいいのかを考えに考えて、それでも転んで痛い目にあいます。

でもある瞬間、ふっと自転車に乗れるようになりましたよね。

それ以降は「私はどうやったらバランスを取れるのか」なんて頭で考えなくても、まっすぐに進めるようになっているでしょう? ワークショップの企画もこれと同じです。だからぜひ、たくさんワークショップを企画して、その先の楽しい景色を見ていただきたいなあと思います。

このブログには、ワークショップの企画運営に関する記事を多く掲載しています。初歩的なステップに慣れてきたら、ぜひ他の記事も読んでみてください。

素敵なワークショップが日本に溢れることを意図して、今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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