ワークショップデザインの閉塞感を打ち破るのは「大量のアイデア」

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日、1泊2日の合宿を運営してきました! 参加者の皆さんからは、本当に嬉しいご感想をたくさんいただき、ワークショップデザイナー冥利に尽きる時間になりました。場づくりで貢献できて幸せでした。

実はこの合宿、最後の最後までしっくりくるワークショップ構成が生まれず、当日の朝まで四苦八苦でした…。久しぶりに、かなりロープ際、KO寸前まで追い詰められました。

と言うのも、普段は1泊2日の合宿ワークショップをデザインするのに1時間もあれば充分なのですが、この会だけは、2週間経っても、3週間経っても、納得のいくクオリティにならなかったのです。端的に言えば、デザインしたどのルートにも、光を感じませんでした(泣)

それがとても面白かったので、なぜ私は今回の依頼に苦戦したのか、エッセイを書き上げる中で明らかにしたいと思いました。ワークショップ設計が行き詰まった際、何かのヒントになれば幸いです。

目次

ワークショップデザインに行き詰まった時の対処法

まず大前提なのですが、私は高校生の頃からワークショップを企画運営してきました。2018年にワークショップデザイナーとして独立してからは、毎週何かしらのワークショップをご依頼いただいています。このため、ワークショップデザインが行き詰まった時の対処方法は、自分なりに確立しています。

例えば、私はワークショップを考える際は、オープニングから着手して、次にメインワークをデザインしています。この流れでうまくいかないケースは、メインパートから固める手順に切り替えています。メインディッシュを先に考え、ぴったりな前菜とデザートを選ぶイメージです。この順番でやり直してみると、最初とは違う景色が見える時があるのです。

あるいは定番のワークからインスピレーションを得る手順も有効です。ワールドカフェや、オープンスペーステクノロジーなど、やり方主導でコンテンツを設計してみます。カチッとハマる流れが生まれればラッキーですし、そうでなかったとしても、「このワークはフィットしない」ということが明確になればOK。さっと次を考えられます。

コンセプトに立ち返って、言葉を磨き直す、大手術を行うことも重要な検討プロセスです。良いコンセプトは、良いアイデアを勝手に連れて来てくれます。アイデアが浮かばない=コンセプトが駄作と考えておいて、ほぼ間違いありません。

ところが、今回はこれらの切り替えも、ことごとく機能しませんでした。こうなると、小手先で対応できない原因があるということ。考えられる理由は2つです。

テーマに関する基礎知識やトレンドの理解不足

まず真っ先に疑うべきが、扱うテーマに関する理解不足。テーマに対する理解が浅い場合は、センスが働かず、どの案が優れいてるかを判別できません。

実際に、今回のワークショップでは若者の探究学習がメインテーマだったのですが、私は学校現場で行われている探究学習の実情や、学習指導要領においてどう扱われているか等の基礎知識、最新の情報をそう持っているわけではありません。ただし、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)に関しては数百人の高校生を見守ってきた経験があるので、一定の理解があります。

これらを足がかかりにしてワークショップをデザインできるかなと見積もっていたのですが、探究の領域に分け入って行けば行くほど、多くの差異があることに気づいてしまったのですよね。このギャップに気づくまで、やや時間がかかってしまいました。

私は自分が詳しくないテーマは「情報収集」してからワークショップを作り始めるを基本動作にしているのですが、PBLの知識・経験にすがってしまい、初動を誤った格好です。最初に2~3冊程度の本をざっと読んだり、詳しい知人からレクチャーを受けていれば、もっと早くに勝ち筋を見つけられたかもしれません。少々潔さが不足していました。

最終的には、『地味にすごい探究学習のはじめかた/すすめかた』という本と、全体へのインプットをお願いさせていただいた方の発表資料を熟読させていただき、情報を補完しました。

参加者情報の不足

次いで頭を悩まされたのが、参加者情報の不足でした。実はワークショップを設計し始めた段階では、初版はすぐに完成したんです。

というのも、最初は10年近くお付き合いしてきた方々の参加表明が多かったため、それぞれの活動や性格、体験してきたワークショップなどの情報が把握できていました。このため、ワークショップで扱ったら面白いことと、そうでないことの境目が、手に取るように分かったのです。

ところが、次第にお会いしたことのない方々の参加表明が増えて、最終的には60名の申し込みのうち、半分が新規参加者という状況に! 殆どの方が20代で、探究学習の伴走経験にもバラツキがあるようでした。

新しい方々が来て下さるのは本当に嬉しい一方で、ベテランが50%、新規の方が50%という割合がなかなかの難しさでした。70 : 30ほどの割合か、せめて60:40ほどで分かれていれば、どちらか多い方に内容を寄せていくという意思決定をしやすいのです。ちょうど半々の割合だと、軸足を定め切れず、片方を立てればもう片方が立たないという中途半端なコンテンツに陥ってしまいがちなんですよね。

今回は会の特性上、各参加者のニーズや期待を明確に確認しないまま募集を始めてしまったため、手元の判断材料も乏しい状況。せめて興味関心をアンケートで聞いておけば…、と思いましたが、後悔先に立たずでした。

こういう時は、ペルソナを考え抜く他ありません。

追い詰められたら最後は「根性」で乗り切れる(と信じる…)

テーマに関する知識が足りず、参加者のこともよく見えてない、軸足を決められない状態では、良質なヒラメキは生まれません。結局今回は最後の最後まで、直感的に「これだ!」と確信できる構成が見つかりませんでした。普段のワークショップでは、必ずどこかのタイミングで、「これがベストだ!」と思えるルートに出会えるものなのですが…。

不本意ながら、ここまで追い込まれてしまった時は「体育会系のアプローチ」がよく効きます。根性を燃やし、アイデアを大量生産することで、道を拓くのです。というか、残された手段はこれしかありません。

今回私は、合宿前日の夜22:00〜24:00と、当日の5:00~6:00を使って、トークテーマに据えるべき問いを100個量産しました。それからワークショップを3パターン作り、それぞれの投影資料を用意しました。(素晴らしい根性を発揮できたなと、我ながら褒めてあげたい)

この準備をしたうえで、本番ではパターンAで開幕したワークショップを、すぐさまパターンBへとスイッチしました。参加者の雰囲気を肌で感じて、パターンBの方が全体のフィーリングに馴染むと思ったのです。この内容変更に伴い、100個の問いは、たったのひとつも使いませんでした(笑) 見事なお蔵入りに乾杯っ!

「人事を尽くして天命を待つ」の姿勢を忘れたくない

でも私は、ワークショップデザイナーにとっての「人事を尽くして天命を待つ」って、こういうことではないかと思うのです。勝ち筋が見えない時は、最後まであがく。考えられるだけのことを、考え尽くす。

こうした作業は、一見すると無駄に見えるかもしれませんが、実施するワークショップに大きな影響力を持ちます。

まず自分のプレゼンスが高まります。中途半端な準備だと弱音や言い訳が漏れたり、他責にしたくなったりするものですが、「自分は準備をし尽くした!」と思えていたなら、胸を張って、ワークショップ中に起こる様々な事象と向き合うことができます。

また、場を感じるセンサーの精度や、対応力が向上します。これは準備の過程で、圧倒的な数のルート案を通り尽くしているためです。脳内シミュレーションでさまざまな状況を想定しておけば、実施するワークショップへの経験値が溜まります。この経験値が、場の状況をつぶさにキャッチし、応用を効かせてくれるのです。

だから、自信が持てないワークショップほど考え尽くしましょう。閉塞感に風穴を開けるのは、いつだって大量行動です!

そして、もう少し踏み込んで言うと、ワークショップの可能性を探り続けられるプロフェッショナルが、もっと日本に増えたらいいなって思います。私はそうした人たちと協働したい!

ということで、今日は私の体験談から記事を書いてみました。お読みいただきありがとうございました。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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