WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。最近複数の知人からワークショップの設計について相談をいただきました。皆それぞれにお悩みポイントは違っていましたが、大きくまとめると、ワークショップの設計を難しく考えすぎているような印象を受けました。
ワークショップは進行が多彩なだけに、どう設計したらいいのか迷ってしまいがちなものです。ましてやワークショップデザインに慣れていなければ、各ワークを並べるだけで精一杯。ワークショップを始めたばかりの頃の自分もそうだったので、よく気持ちが分かります。
実はワークショップ設計が迷宮入りしてしまいがちな人を見ていると、ワークショップを頭から考えることに固執している人がほとんどです。オープニングを考え、アイスブレイクを選び、メインのパートを設計し、といった形で、頭からお尻までを順番通りに考えていかなければならない、と無意識のうちに自分を縛っているのです。
ちなみに私は、上記の手順でワークショップデザインを進める日もあれば、いきなりメインパートから設計を始めることもあります。ゴール設定 → メインパート(体験)設計 → メインパートへのブリッジ設計という流れでワークショップデザインを進めていくのです。なぜなら、この手順で設計すると、首尾一貫したワークショップデザインが容易になるんですよ。
メインパート以外の部分は味付けであって、主食ではありません。メインパートが白米だとしたら、他の部分はふりかけや海苔です。一生懸命ふりかけについて考えていたって、美味しいご飯は炊き上がらないじゃないですか!
ですからワークショップデザインに行き詰まった時ほど、メインパートの設計に集中して資源を投下しましょう。
考えることは3つ。「参加者にどうなって欲しいか」「そのためにどんな体験(メインパート)があると良いか」「どんな準備があれば体験が盛り上がるか」の3点です。
参加者にどうなって欲しいか? を決める
ワークショップをデザインする際、まず真っ先に考えるべきは、ワークショップを通じて参加者にどうなって欲しいか? です。このゴール設定がワークショップの背骨になります。
ワークショップのデザインにおいて最も重要な『ゴール設定』という記事でも書きましたが、「誰に」「どんな状態になって欲しいか」が曖昧なワークショップは高確率で破綻します。設計も進みませんし、ワークショップ当日もグダグダになりがちです。設計に行き詰まった時は、改めてゴールは何かを思い出しましょう。場合によっては再定義も必要かもしれません。
もしワークを考えながら「このゴールの言葉、何か違うな」と感じるようなことがあれば適宜修正すればよいので、まずは恐れず決めてください。
ゴールを設定することで、ワークショップの「枠組み」が決まります。枠組みとは、どこまでの範囲を扱うかということです。ここまでは扱う、ここからは扱わないという明確な線が引かれることで、無限だったワークショップの進行が制限されます。
制限と書くとネガティブに見えますが、これがむしろワークショップを考えやすくしてくれます。なんでもやっていい状態だと、脳がどこに焦点を当てたらいいか判断できず、むしろ何も考えられなくなるものです。
何を体験してもらうと良い? を考える
ゴールを明確にできたら、「ゴールへ到達するためには、参加者に何を体験してもらうと良いか」を考えていきます。
ワークショップとは何か? 〜ワークショップの定義〜という記事でご紹介しましたが、ワークショップは参加者が自ら体験し、グループの相互作用から学びを深める、何かを創造する営みです。つまり体験が重要なのです。この点に照らしあわせて、参加者が何を体験できたらワークショップのゴールへ到達できるかを探りましょう。
ワークショップとは、講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験し、グループの相互作用の中で何かを学び合ったり創り出したりする、双方向的な学びと創造のスタイル
『ファシリテーション革命 参加型の場作りの技法』
例えば「円滑な合意形成の要点を理解する」がゴールであれば、合意形成のステップをひとつひとつ体験いただくと良いかもしれませんし、逆に全く合意形成できないもどかしさを味わっていただくことも貴重な体験になり得ます。
あるいは「地域のより良い未来を考える」がゴールであれば、理想の未来を自由にブレストする、街歩きをしてもらってハイライト/ローライトを見つけてもらう、外部地域の方と交流する、などなど様々な切り口がありそうです。
こうやって何を体験できたらワークショップの時間内でゴールへ到達できそうか複数の案を考えてみて、その中から筋の良さそうなものを選びます。導入を肉付けしたり、ワークの形式や手法を検討したり、パワフルな問いを立てたり、ディテールを整えていきましょう。
今日は思考手順について詳しく書きたいので、ちょっと大雑把な説明になりますが、これでメインパートが完成です!
メインパートを盛り上げるための下ごしらえを考える
無事にメインパートが決まったら、メインパートが盛り上がるためにはどんな下ごしらえが必要かを考えていきます。つまり、ワークショップの前半部分の設計です。この手順で考えていくと、扱うテーマに対して一致感の高い、良質なワークショップが生まれる可能性が高まります。
洋食屋でお寿司が出てきたら多くの人はびっくりすると思うのですが、同じようにワークショップのゴールと各ワークの一致感は極めて重要で、対話の質や、参加者の満足度に直結します。
たとえば私は、「地域のより良い未来を考える」という主旨のワークショップに、音楽で楽しく遊ぶアイスブレイクが用意されていたら違和感を覚えます。仙台ジャズフェスティバルなどの音楽で町おこしをしていくことを考える会でしたらこの限りではないですけれど、多くの町のより良い未来と、音楽はやや関係が遠いように思われるからです。
こうした会を開くのであれば、アイスブレイクは「この地域に来たきっかけ」「この町の中で一番好きな景色」「地域での大切な思い出」などをストーリーテリングしていただくとか、「素敵だなと思う他地域」「移住してもいいなと思う町」を共有いただくとかして、メインパートでの対話のヒントになる、あるいは参加者の気持ちがワークショップのテーマに近づくなどの効果を狙うべきです。
アイスブレイクはワークショップの本題への橋渡しという記事でも書いたのですが、アイスブレイクとワークショップ本体が分離してしまっているケースはとても多いです。これすごくもったいないですね。
アイスブレイク、導入のパートはちゃんとワークショップのテーマに沿って設計しましょう。それがワークショップの対話が盛り上がる秘訣です。
行き詰まったら思考手順を変えてみよう
冒頭にも書きましたが、ほとんどの人はワークショップを頭から順番に考えているのではないかと思います。この手順でうまく設計が進む時はまったく問題ないのですが、ひとたび行き詰まると解決の糸口が見えなくなりがちです。
そんな時は、まずメインパート)から考えて、メインを盛り上げるために必要なステップを遡って考えてみてください。こうやって思考手順を変えるだけで、急に視界が開ける時があるんですよ。腕組みしてうんうん唸っていてもなかなかブレイクスルーは生まれないので、ぜひ試してみてくださいね!
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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