ファシリテーションは準備が8割!

ファシリテーションは綿密な準備によって冴え渡る

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私は年に何度かファシリテーションの講座を開講したり、大学で非常勤講師として講義をしたりしているのですが、必ず伝えたいと思っているポイントがいくつかあります。

その1つが、この記事のタイトルの通り「ファシリテーションの成否は準備の質に左右されるということです。こうお伝えすると、講義を聞いてくださっている方の半分くらいが驚いたような顔をされます。

ファシリテーターとは、どんな話し合いが行われるか分からない場を、機転を利かせて上手に展開していく人という印象が強いのでしょう。

つまりファシリテーション=即興力だと思っている方が多く「そもそも即興になぜ準備がいるの?」「即興するのにどうやって準備をするの?」という疑問が浮かぶのだろうと思います。

様々な状況に応じて柔軟に進行を変えていける臨機応変さは、もちろんファシリテーターが磨いておくべき重要な資質です。ただ実際の現場では、それよりも遥かに大事になるのが、事前の準備からどれだけ当日の状況をシュミレートしておけるかなんですね。つまり準備力です。

そして実は即興性を発揮できるかどうかも、実は準備の量や質にかかっているのです。

今日はファシリテーションの準備についての、ごく初歩的な部分を書こうと思います。

目次

準備① 参加者情報を把握する

ファシリテーションの準備は、まず会議やワークショップの場に、どんな方々が参加されるのかをつかむことから始まります。その際、名前やご所属などの表面的な情報だけに留まらず、どのような思考や主張を持っているのか、参加者どうしの関係性、場への参加意欲などをしっかり把握しておきましょう。

会議でもワークショップでも、対話の場には何かしらの議題があります。その議題に対して、参加する各人がどのような考えを持っているのかを理解しておくことで、当日にどんな話し合いがなされるのかをある程度見通すことができるようになります。

また、場に集う人々の関係性を見ておくと、緊張感の強弱や、発言のハードルの高低などが想像できます。初対面どうしの人々が多ければ、最初は場が固くなりがちですし、部下と上司の関係が目立つようであれば、思い切った発言は生まれにくいものです。

自ら積極的に参加を希望したのか、誰かに言われてきたのか、参加マストで仕方なくいるのか、といった動機の部分も重要な情報です。意欲が高いほど発言量は増え、多少難しいテーマにも果敢に挑んでくれます。意欲が低くなるにつれて、発言は減り、困難に直面したらすぐ諦めがちです。参加者それぞれの動機が見えれば、つまずく可能性が高そうなシーンが分かってきます。

ですから参加者の特性を複合的に仕入れておけば、ファシリテーターは、どんなシーンで、どのように振る舞うことが求められるかが、自ずと見えてくるのです。会議のアジェンダ作りや、ワークショップデザインも、参加者情報を知っておけば知っておくほど精度が向上し、芯を食った設計ができるようになります。

そのため参加者情報は自ら積極的に取りに行きましょう。参加者に関しての詳しい情報は、ほとんどのケースで、こちらから聞かないと教えてもらえません。場の主催者や関係者にヒアリングをして、参加者像を具体的にしておくことをおススメします。

準備② 取り扱うテーマについて学習する

並行して、取り扱うテーマに関しての理解を深めます。

ファシリテーターは、会議やワークショップで取り扱うテーマについてしっかり理解しておくことがマストです。なぜならファシリテーターの持っている情報や知識の量が足りていなかったり、古かったり、質が悪かったら、決して議論が深まらないからです。

担当する会議やワークショップの回数が多ければ多いほど、各テーマを掘り下げる時間は限られますが、その中でできる限りの情報収集をして臨む姿勢が欠かせないと思います。

例えば私は、自分が全く知らないテーマでワークショップデザインを依頼されたり、パネルディスカッションのファシリテーターを依頼された時などは、そのテーマでNet検索した際に表示されるサイトを、10~20個程度は必ず読んでみます。

相当深く知っておいた方が良い、そうでないと太刀打ちできないと感じたテーマや依頼については、上記に加えて3~10冊程度の書籍を参照します。これは全部を精読するというよりかは、テーマを取り巻く全体感や、これまでの歴史、現在のトレンドなどをざっと把握する意図で読んでいます。(情報は知っておく必要があるが、その分野の専門家になる必要はないので、最低ラインを超えておくレベル感)

対話の相手やゲストが著名な方であれば、その方の記事やブログ、動画、本を書かれていれば最低2冊くらいは目を通しておきます。

こうした準備をしておくことで、自分なりの仮説=対話を深めるべき観点を複数持っておけるようになります。また、的外れな質問の回避や、本質的ではない議論と、価値ある議論の見極めも容易になり、参加する人々が良い対話に没頭しやすくなるよう振る舞うことができるのです。

これらは担当する会ごとに徹底する必要がありますが、最終的に物を言うのは日頃からの知識の蓄えです。ですからファシリテーターとしてのプレゼンスを発揮したいと思っている人は、情報を仕入れる習慣を身につけ、世の中の様々な動向に対して洞察を深め続けましょう。

準備③ 当日のシュミレーションをする

①と②の準備が済んだら、当日のアジェンダや進行案を決め、どんな会話がなされるのかを具体的にシュミレートします。私は当日の最初から最後までの様子が、フルカラーのイメージとして浮かび上がってくるまで、想像上の参加者との会話を繰り返します。これは30分の会議でも、2泊3日の合宿でも、必ずです。

この時、特に大事にしていることが2つあります。

1つ目は、自分自身自が全く言い澱むことがなくファシリテートできている姿を作り上げることです。これはシミュレーション中に、うまく言葉を発せなかった箇所や、自信がなくて言い切れなかった箇所などをひとつひとつ拾い、修正していく作業になります。

うまく言葉を発せなかった箇所や、自信がなくて言い切れなかった箇所は、そのまま放置しておくと、大なり小なり必ず本番でエラーを引き起こします。ですから、まずはなぜ自分が言い淀んだのか、なぜ自信を持てていないのか、原因をきっちり探し当てることが大切です。そしてその理由なりの対処をしておくこと。

2つ目は、想像上の参加者の顔が曇ったり、思考が止まったりする箇所を見つけることです。そして上記と同じように、なぜ参加者がそのようなリアクションになったのかを探るのです。

コンフォートゾーンとストレッチゾーンの境目でもがいているのか、難しすぎて思考が停止しているのか、ファシリテーションの何かに引っかかったのか、感情がついてこられないのかなど、要因は様々です。その問題の根はどこにあるのか、本当に問題なのか、何を変えるとより良い場になるのか。多角的な観点から見つめながら、最適な進行と声がけへとアップデートしていきます。

既に知っている人ならまだしも、会ったことがない参加者のことを、ましてやその人がどんな振る舞いをするかなど、どうやったら想像できるの? と疑問に感じられた方もいるだろうと思います。

こればかりはイメージトレーニングを繰り返していくしか身につけようがないので、何回もやってみていただきたいです。

イメージする → 当日にイメージとのギャップが明確になる → また次の会でイメージをする → 前回よりギャップのズレが小さくなっていく

という循環を繰り返していくうちに、かなりの解像度で想像上の参加者が動き出すようになっていきます。ファシリテーションは、ここまで準備を重ねて、ようやくスタートラインです。

余談ですが、対話の場で起こりうる最悪な状態と、その状態からのリカバーも、何ケースか事前に見ておくと自分を助けてくれます。

 ファシリテーションの秘訣は準備にある

ファシリテーションは当日の機転が予想を遥かに超える結果を生み出したりするものですが、そうした即興性を発揮するためには、地味な事前準備の積み重ねが欠かせません。

準備のないファシリテーションは、糸が切れたタコのように、場の空気に翻弄されるのみです。本当に議論を深めたかったポイントを扱えなかったり、話が大幅に逸れてしまったり、参加者の不満が爆発してしまったりと、およそファシリテーションの失敗のほとんどは準備不足から起こると言っても過言ではないように思います。

何より、準備の量と質は当日の自信に直結します。ファシリテーターがオドオドとしている場では、絶対にいい対話は生まれません。ですからファシリテーションに慣れていない方ほど、こうした準備を実践し、場に臨んでみて欲しいなあと思います。

きっと、場作りがぐっと深まりますし、ファシリテーションが楽しくて仕方なくなりますよ。今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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