「難しい」の一言が場を凍らせる
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。最近はファシリテーションについて、たびたび大学や各種セミナーで私の経験をお話しさせていただいております。「対話って面白い!」と思える場が日本中にどんどん増えるように、多くの人がファシリテーター的なマインドと振る舞いを身につけることに貢献できたら嬉しいなと思っています。
ファシリテーターのプレゼンスが場を作る
言うまでもなく、会議やワークショップにおいて、ファシリテーターの影響力は絶大です。対話の成果は、ファシリテーターの存在によってがらりと変わります。たった一言の声がけで場が急に開くこともあれば、逆もまた然りです。
そのためファシリテーターは、どのタイミングで何を発すると良い影響をもたらすことができるか、細心の注意を払いながら、常にサーチライトを光らせています。だからこそ、参加者からキャッチしたリアルな情報が結晶化し、パズルのピースがかちりとハマるように、場に変化を生み出す声がけができた瞬間の喜びは、本当に格別なんですよね。
一方で、その単語を発した途端、急速に場が凍ってしまうNGワードがあります。それが「難しい」という一言です。ありふれた普通の言葉ですが、このワードが発された途端、参加者のマインドが硬直し、諦めや無気力が全体に蔓延してしまう、本当に恐ろしい影響力を持っています。
どうしてかと言うと、ファシリテーターが「これは難しいですね」と公言してしまうと、参加者の心の中では、
(やっぱり難しいんだ。じゃあ、できなくても仕方ないよね)
と諦めの気持ちが湧いてきてしまったり、
(そんなに難しいことをさせるなんてひどい)
とファシリテーターへの信頼度が下がってしまったり、
(どうせいつもできないもんね)
とできない理由探しが始まってしまったりしてしまうものです。
そうして、場が一気に「できない」ムードに包まれていきます。この重苦しい空気感が、参加者の積極的な意欲を削ぎ、発言を後ろ向きにさせ、対話を停滞させます。
対話の場では、簡単に答えが出せなかったり、なかなか全員が納得できる合意形成に至らないこともよくあります。そうした時、参加者の心の中には当然 (難しいなあ。面倒だなあ。困ったなあ) などの後ろ向きな気持ちが芽生えているものです。そして、(誰かが解決してくれないかなあ)とも同時に思っています。
このような状況に直面した際、参加者が前を向く理由が見つけられたら、困難な壁を乗り越えようとする推進力が場にもたらされます。一方ひとたび停滞ムードが漂ってしまうと、良い空気を取り戻すのは大変困難です。場合によっては特に何の成果も見出せないまま、対話がお開きになってしまうこともあります。
そんな不毛の場を作ってしまうトリガーになってしまうのが、「難しい」というワードなんです。そのため私は、自分がファシリテーターをする時はもちろん、日常の中でも「難しい」というワードは使わないように徹底しています。
相手のコンディションに合わせた声がけが重要
ただ、(難しいなあ)と感じている参加者の気持ちに寄り添わず、極めてポジティブな声がけをしてしまうこともまた、場の空気を著しく損ねるんですよね。参加者のコンディションと著しく乖離したメッセージ伝達は、意欲を挫いたり、ストレスを増大させてしまいがちです。そのため、難しいという言葉はなるべく使わずに、参加者の状態に馴染む言葉を探さなければなりません。
だから私は、参加者が対話の難しさに困惑していると感じた時は、「これは考え甲斐があるテーマですね」「解決策を見出すには一工夫する必要がありそうですね」などの前向きな言い換えを心がけています。皆さんが感じている難しいという気持ちは理解していますというメッセージと、皆さんならきっと大丈夫ですよというメッセージを同時に発信するようにしているのです。こうすることによって参加者の思考が停止せず、むしろ積極的に動き出すようになります。
こうした背景から私は、ファシリテーションをする際は、難しいというワードは原則として使わないと決めてしまうことをオススメしています。中には「難しいですね」とファシリテーターが言い切ってしまったほうが好転するシーンもありますが、ごく稀です。
難しいという単語は、多くの人が無意識のうちに、ぽろっと言ってしまいがち。
ぜひ、余計なタイミングで使用しないよう、意識をしてみてください。
それでぐっと、場作りは深まります。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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