肩書や経験に左右されず「全員が同じ割合で発言できる場」からは高い成果が生まれる
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WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私はファシリテーションについて、大学やセミナーでたびたび講義をさせていただいています。ファシリテーションの技術や要点は多岐に渡るので、全部を話そうと思ったら3日あっても足りません! そのため毎回依頼主の希望に沿った内容にアレンジし的を絞るのですが、どの講義でも必ず伝えていることがいくつかあります。
そのうちの2つが「参加者に均等な発言機会を提供することが、ファシリテーターの大事な役割」ということと、「参加者の肩書や経験に左右されず、皆の意見を平等に扱う姿勢が重要」という点です。
心理的安全性がチームの生産性を高めるということを発見したGoogle「プロジェクトアリストテレス」の研究からは、その過程で「メンバー内の発言機会が均等で、全員がほぼ同じ割合で発言するチームは生産性が高い」という結果が得られたそうです。
これはファシリテーターの肌感覚として疑う余地がなく、ぜひ多くの組織に浸透して欲しいと願わずにはいられないポイントなのです。
全員が均等に発言できる対話の設計
ワークショップでも会議でも、対話の場ではとかく声の大きな人、あるいは権威的な人などが、あたかも発言のファーストパスを所有しているかのような空気が自然と形成されがちです。
そうしたパワーバランスのまま対話を行うと、(結局いつもの延長戦だ…)と参加者がしらけてしまい、途端にスイッチがOFFになってしまいます。そしてどんどん重苦しい空気になり、閉塞感が漂い、それを打破するように特定の個人だけが余計に鼻息を荒くして…。この先は書かなくてもいいでしょう。
ですからファシリテーターには、こうしたバッドエンディングを回避する対話をデザインする責任があります。そのための最も簡単な方法は、予め参加者全員がそれぞれ発言できる時間を盛り込んだタイムラインを作っておくことです。
このテーマについて誰か意見がある方はいますか? とオープンに問いかけることが機能する瞬間もたくさんありますが、一方で前述したような発話の偏りも起こりやすくなってしまいます。
このアンバランスさを解消するために「この時間は一人一人に意見表明をしてもらう」と事前に決めておき、参加者それぞれが感じていることを語れるパートを盛り込んでおくととても喜ばれます。これは全体の大グループでの共有でもいいですし、人数を分けて小グループでの共有でもOKです。
たったこれだけの配慮で、対話の場はダイナミックに動き出します。かかる時間は少し長くなってしまう場合がありますが、ぜひ取り入れてみていただきたいです。
立場や肩書によって「意見の扱い」を変えない
もう一つ押さえておきたいのが、ワークショップや対話の場では、お互いの肩書を外し、ひとりの人間どうしとしてフラットに関わりあうことの重要性です。
いくら「時間的に均等」な発話のデザインをしたとしても、例えば「社長の意見は大切に扱われるが、新入社員の意見は一蹴される」といったような調子で、立場の上下や肩書の有無によって意見の扱われ方に差がある場では、人は決して心を開きません。もちろん良好な相互理解や、意思決定も生まれるわけがありませんから、生産性も上がりません。
ワークショップの成否に直結する「グループ分け」の要点という記事でも取り上げさせていただきましたが、良好な対話の土台にはフラットインポータンス(重要性の平板化)が、つまりお互いの肩書を外して、対等に話し合える安心感がマストです。
そのためファシリテーターは自ら率先してスタンスを取り、場に出される意見は全て大切に扱っていくのだということを行動で示し、集っている全員に浸透させていくことが求められます。ここまでをセットで体現できると、対話はより創造的に、参加者どうしの関係はより親密に深みを増していくのです。
今日ご紹介した2つのポイントは、どちらも特別なスキルを必要としません。良い対話の場を作りたい、チームの生産性を高めたいと願っている方は、ぜひご自身のファシリテーション、対話のデザインにご活用ください。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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