WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日、東北芸術工科大学での講義で「これからアイスブレイクを始めます!」というアナウンスは絶対にしないという話をしました。
これは個人的な感覚ですが、「アイスブレイクをします!」と聞いてワクワク楽しい未来を想像できる人より、(無理やり自己開示を求められたり、体を動かしたりさせられるの嫌だな…)とネガティブな想像をする人のほうが多いように思うからです。
ワークショップの成否を左右するアイスブレイク
アイスブレイクは、メインパートの対話やワークが円滑に進めるための大切なファーストステップです。緊張した心身をときほぐし、参加者どうしの距離感を近づけることができたら、今日のワークショップは順調に進みそうと思えるものですし、大胆なファシリテーションも可能になります。
対して、アイスブレイクのパートがうまく機能しなかった日のファシリテーションは大変で、薄氷を履むかのように、慎重に慎重を期して言葉を選んでいくことになります。ですので私はいつも、アイスブレイクの失敗だけはまず避けたい…、と思い場に立っているんです。だからこそ入りの一言は極めて重要で、参加者がアイスブレイクに抵抗なく入れる声がけが求められます。
また、「アイスブレイクをします!」と告げることは、暗に、今からアイスブレイクをするので、皆さんの心の壁を取り除いてくださいね? とメッセージしているも同然だと思うのです。これはつまり、相手を操作しようという気持ちの表れと言っても過言ではありません。
ワークショップや対話の場では、無理やりの参加を強要するのはNGであるとこちらの記事でも書いたのですが、こうした (相手を操作してやろう) というファシリテーターの傲慢さが滲み出した時、参加者はそれを敏感に察知し、ファシリテーターや対話の場そのものへの警戒心を高めてしまいがちです。実際私は、めちゃくちゃ場を盛り上げてやるんだ!と意気込んで、盛大に空回りしてしまった方を何人も見てきました。その後のワークの悲惨さは、言うまでもありません。
こうしたことから、「アイスブレイク」という単語を発することで、より参加者の緊張感を高めてしまうリスクは避けるのが無難だ、というのが私の見解です。
アイスブレイクという言葉の代わりに
私はアイスブレイクという単語を使わない代わりに「まずお互いのことを知り合うことから始めましょう!」とか、「いきなり本題に入る前に、ウォーミングアップが必要ですよね」とか、参加者にとって抵抗感が湧きにくいであろうワードを選び、ファシリテーションをしています。たったこれだけで、ずいぶん開幕の空気が変わるものです。
練りに練ったアイスブレイクを準備することも大切ですが、ワークショップデザインやファシリテーションの腕前は、こうしたほんの少しの言葉遣いに意識を向けてみることからも向上すると思います。アイスブレイクをする機会がある方は、ぜひ試してみてください!
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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