WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私は妄想アイデアトレーニング「モウトレ」というアイデア発想のワークショップを、たくさんの方々にご提供しています。
モウトレでは、アイデアを出すのは苦手と思っている方々でも、30分程度のアイデア出しで、200~300個のユニークなアイデアが生まれます。アイデア出しって、コツや向き合い方を知っていれば、本来誰でもできるものなんです!
楽しいアイデア出しは「中毒性」が高い娯楽
皆でアイデアを投稿して、投稿から連想が膨らみ、さらにアイデアが増えていく一連のプロセスって、ゲーム的でとっても楽しいです。アイデアの数が増えるにつれて、もっとアイデアを出したい、もっと面白いことを考えたい、という意欲が自然と湧いてきます。
ただ、その楽しさに流されて、時に「不適切なアイデア」ばかりが発案されてしまうことがあります。目の前で共有されるアイデアに反射的に乗っかって、次々に面白いことをかぶせ合う競走が発生し始めたら、決壊の兆候です。
これを私は、アイデア出しの暴走と呼んでいます。
ひとたびアイデア出しの暴走が起こると、参加者が理性を失ってしまい、本能的にただただ楽しいアイデアだけを考えることに囚われてしまいます。無邪気な子ども心が呼び覚まされてしまって、本来の目的をいとも簡単に忘れてしまう、といった現象が起こるのです。
アイデア出しってとても中毒性が高く、オーバーヒートしがちなんです。
アイデア出しの暴走は「悪ノリ」がトリガー
実際に私が体験した事例をご紹介しますと、「リラックスできるアイテム」をお題にしていた際、「おばあちゃんが傾聴してくれる」といったアイデアが引き金となり、暴走が発生しました。
このアイデア自体には全く罪が無いのですが、会場の皆さんがおばあちゃんという要素をとても気に入ってしまったのが問題でした。それから瞬く間に、数十個の「おばあちゃんシリーズ」が投稿されたのです。
これが「リラックスできるアイテム」というお題にミートしていればまだ良いのですが、暴走中のアイデアって、ただウケを狙ったものや、ダジャレや、前のアイデアに意味なく乗っかったものばかりになってしまうんです。
おばあちゃんの掃除機! → おばあちゃんの洗濯機 ! → おばあちゃんの炊飯器!
といった具合に。
文字で読むと全く面白くないのですが、リアルタイムでこうした乗っかりの連続に遭遇すると、楽しい気分になってくるんですよね。悪ノリってやつですね。
こうなってしまうと、場が一気に崩壊してしまう危険があります。そのためファシリテーターは常にアンテナを張っておき、アイデア出しの暴走が起こらないよう、場を観察しておく必要があります。
アイデア出しの暴走が始まる3つの兆候
アイデア出しの暴走を防ぐためのチェックポイントは3つあります。多くのケースでは、この3つのパターンのいずれか、あるいは掛け合わせで、暴走がヒートアップしていきます。
流行りネタ
アイデア出しの暴走を最も誘発しやすいのが「最近の流行りネタ」です。
例えば先日、芸人のとにかく明るい安村さんが、イギリスの「ブリテンズ・ゴッド・タレント」という番組に出演されていましたよね。私は大爆笑させていただきました。大好き!
こういう皆の耳目を集めたトピックスは、けっこう注意が必要です。とにかく明るい安村さんにかけて、とにかく明るい枕! などのアイデアが共有されやすくなるためです。こういうのって、つい皆が乗っかりたくなるんですよね。
とにかく明るいメガネ! とにかく明るいシーツ! とにかく明るい時計!
といった調子で、突然「とにかく明るい〜」シリーズが始まり、皆がこのノリに感染してしまいます。
今ですと大谷翔平選手が連日大活躍しているので、大谷さんネタや、二刀流というワードなどは、よくよく目を見張っておかなければと思います。「◯◯の二刀流」って、考えるの楽しそうだし(笑)
アイデア出し中にヒットしたネタ
次いで暴走が生まれやすいのが「その日にヒットしたネタ」です。
考える価値のあるヒットネタならいいのですが、多くの場合はそうではありません。先ほどの「おばあちゃんシリーズ」が好例です。中学生の会話みたいな悪ノリになってしまって、楽しいだけで終わります。
厄介なのが、こういう類の悪ノリって、最後は下ネタに行き着きがちなんですよね…。ネタ切れと同時に下ネタめいたアイデアが発案され、瞬間の笑いを取る、といった挙動がよく起こります。
モラルに反するアイデアや下ネタは、場の空気を一気に冷やします。そのため私は、こういう挙動が起こり始めたら即介入して、違う方向にアイデアを発散していただくように促しています。
内輪ネタ
地味にアイデアの暴走を引き起こしがちなのが「内輪ネタ」です。例えば先の「リラックスできるアイテム」がお題だとしたら、
部長の悩み相談チケット → Aさんの人生相談アプリ → B子のお悩み解決Bar
といった具合に、内輪のメンバーの個性に合わせたアイデアが連鎖してしまう状況です。これはコンディションの良い組織で起こりがちです。そのため見ている分には微笑ましいのですが、本人たちが楽しいだけで、社会的には特に何の意味もないアイデアが連発されてしまいます。
こちらのパターンも即介入です。
アイデア出しは幅が大事
アイデア出しの暴走の際たる弊害は、アイデアの範囲が絞られてしまうことです。つい面白くなってアイデアの数は出るのですが、同じ枠の中でアイデアを量産しているに過ぎず、かえって思考が限定的になってしまいます。その結果、量が質に転化するといったアイデア出しの基本原理が成り立たなくなってしまうのです。
ある特定の枠の中だけで考えられたアイデアからは、発想が広がりません。意図して外れ値を出していくことから、ユニークなアイデアが生まれていきます。
そのため、アイデアを出すのって楽しいという興奮はキープしつつ、アイデアが特定の範囲に過集中しないよう、ファシリテーターが気を配ることが極めて重要になるのです。
もし特定の範囲にアイデアが集中しそうになったったら、早い段階で「他の可能性も探りましょう!」と場に注意を促すことが奏功します。悪ノリが生まれる前に対処できれば、アイデアは健全に広がっていくものです。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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