良い対話を生むチームに共通する「帰属シグナル」

WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。私は年間で50〜60件のワークショップをご提供しているのですが、一定の割合で「チームのコミュニケーション不全を改善したい」というご依頼をいただきます。

普段みんなで顔を突き合わせる機会がないだけのチームもあれば、年代や価値観が異なりすぎることで相互理解を諦めていたり、上意下達が強すぎて無気力になっていたりなど、コミュニケーション不全の原因は様々ですが、

本当にコンディションが悪いチームからは、共通して「帰属シグナル」の欠如を感じます。

目次

対話が弾む空間には欠かせない帰属シグナル

帰属シグナル(Social Signal)とは、人と人との安全なつながりを促進する態度や振る舞いのことです。とてもわかりやすいので、詳しくは斉藤徹さん著の『だから僕たちは、組織を変えていける やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』から引用をさせていただこうと思います。

帰属シグナルとは、「安全なつながりを構築するような態度」のことで、人によってさまざまなバリエーションがある。例えば、笑顔、物理的な距離の近さ、アイコンタクト、相手と同一の動作、エネルギーの交流、順番に発言、相手への気配り、ボディランゲージ、声の高さ、ぶれない価値観などだ。

熱意あるコミュニケーションが促進されるような態度をとる。特定の人だけはなく、すべてのメンバーが尊重されていることを示す。未来に向けたメッセージで場に希望をもたらす。この組み合わせを「コミュニケーションのシグナル」として発信するのだ。特に「笑顔と情熱、均等な発言機会、希望にあふれたビジョン」はとてもパワフルな帰属シグナルだ。

このご説明は本当にその通りで、コミュニケーションが機能していないチームには、こうしたポジティブな態度がほとんど見られません。

例えば私のワークショップでは参加者の均等な発言機会をとても重視していて、グループ内で、あるいは全体で個々人の考えを話していただく時間を必ず設けています。

コンディションの良い組織では、聴き手が話者の顔をしっかりと見つめて、相槌を打ったり、メモを取ったり、笑顔を見せたり、発表後には自然と拍手が起こります。こうした組織での対話は、春の公園でのんびりとくつろいでいるようなあたたかさがあり、終始和やかに進みますし、満足感もひとしおです。

対して「コミュニケーション不全なんです」とご依頼をいただくチームほど、話者の顔を一瞥もせず、下を向いたり、虚空を見つめたりしている人が大半を占めます。腕組みや貧乏ゆすり、携帯を触るなど、(あなたの話には興味がありませんよ)という暗黙のメッセージが飛び交い場合によっては途中で意見の否定まで始まってしまって、まるで針で全身を刺されているかのような緊張感が漂います。ワークショップというオフィシャル感が高い場ですらこうなってしまうのですから、よそ行きの服を脱いだ日常はどれほど辛いことか…。

ファシリテーターがすべき介入と土台作り

このように場に集う個々人の存在が蔑ろにされると、対話を通じて相互理解を目指そうとする意欲や、未来へ向かってポジティブな行動をしていこうとする意志が挫かれていくのです。その積み重ねで組織のコミュニケーションが停滞し、エネルギーは減退していきます。

そのため、コミュニケーション不全に陥っているチームの対話やワークショップをリードするファシリテーターには、帰属シグナルの発信を促進する介入や、土台となる雰囲気作りが求められます。

誰かが発表している時は集中して耳を傾け、その人が本当に伝えたいことは何かを探ってもらう。

腕組みやしかめっ面は控えるようお願いする。

発表が終わったら拍手で出迎え、勇気を出して共有してくれた相手への感謝を忘れないよう促す。

こうしたメッセージをグランドルールと照らし合わせながら根気強くお伝えし続けて、できる限り多くの帰属シグナルが交換される場を作ることが、チーム内の凝り固まったパラダイムや人間関係を氷解させる第一歩となります。

安心安全な空間で自分を持ち出し、お互いを承認しあえる体験は、大袈裟ではなく、その空間に集う人々の人生を大きく変えます。だから私は、もっともっとこうした機会を作っていきたいと思っていますし、志を同じくする仲間がたくさん増えたら嬉しいなと思うのです。

今日はここまで。

対話をもっとおもしろく。

相内 洋輔

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