WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日、自然の中で癒されてきました。ゴリゴリと仕事を進めるだけの毎日だと、ぜんぜん余白がありません。だから適度に自分を緩めてあげて、空いた余白に新しい情報や依頼が入ってこれるようデザインすることが、私にとってはかなり重要な時間になっています。
それこそ独立した当時は365日朝から晩まで働くことを頑張っていたのですけれど、視野がどんどん狭まり、ストレスも溜まり、あれをずっと続けていたらまずかったなあと思います。
さて、今日はファシリテーションで大切な「まとめのトーク」について書いていきます。ワークショップのまとめは、3つの観点からどれを使うかを選択できると、本番でのファシリテーションが自由自在になります。
以下にご紹介していきます。
一言でまとめる
まず始めに、この場を一言で集約するとしたら? という観点です。ワークショップで行われた対話がどんな成果だったのか、対話中の雰囲気はどのような様子だったのか、目的は達成できたのかなどを考慮に入れながら、場にふさわしいあざやかな一言を探しましょう。
オーソドックスなやり方は、参加者みんなが感じていることを伝えることです。たとえば、なかなか合意形成ができず険悪な時間もあったけれど、最後には皆が笑顔で納得できたような場であれば、「エキサイティングでしたね!」なんて単語でまとめてるのはどうでしょう。似たような言葉でスリリングという単語もありますが、こちらは怖さの成分が強めになってしまいます。ハラハラドキドキからのハッピーエンドを一言で切表現するなら、エキサイティングの方がフィットしそうです。
直喩や隠喩を用いて「ジェットコースターみたいなワークショップでしたね〜」「今日のワークショップはジェットコースターでした!」とやるのもいいですね。思わず参加者がニヤッとしてしまう顔が目に浮かびます。
ことわざを引用して「雨降って地固まるとはこのことですね!」とまとめてみるのも気が利いていると思います。ことわざは多くの日本人がほとんど同じイメージを共有しあえる貴重なツールです。状況にうまくハマることわざが見つかれば、電光石火で共感が広がります。
いずれにしても、参加者が再び感動を覚えたり、「本当だー!」という共感や、「やりきったー!」という達成感につながるワードをチョイスできたらベストです。逆に一言を外してしまうと取り返しがつかないので、最初のうちは冒険しすぎないことをオススメします。
3点でまとめる
次は「3点」でのまとめです。これは様々な場面で長く使われてきたので、馴染みがある方が多いと思います。
使い方は様々なパターンがあります。「今日のワークショップから私が感じたことが3つあります」と自分の感想ベースで語ることもできれば、「今日のワークショップの成果は3つに集約できそうです」とワークショップの実りをまとめることもできます。また、学生に教育的なワークショップを提供している回などであれば、「皆さんの素晴らしかったところ」なんて切り口もアリですね。
私はまず参加者のほとんどが「そうだよな」とすんなり納得できる点から話し始めるようにしています。ここで滑ってしまうと、残りの2つへの期待感、集中力が消失してしまうからです。
順番は3点目が一番盛り上がるように意識しています。「最後に3点目です。これが本当に素晴らしいと思ったのですが〜」「そして今日の最大の成果といえば〜」などの枕詞を入れて、会場の高揚感がMAXになるように雰囲気作りができるとGood。ケースによっては、一番最初に最大の盛り上がりを作ったほうが良い場もあるので、絶対ではないんですけれどね。
このまとめ方は応用が効きますし、仮に3つのうち1個をやや外してしまっても致命傷になりにくいので、始めはこちらをメインに使ってみるといいかもしれません。逆の言い方をすれば、3つのうち1つは変化球を投げてみるなど意外性を盛り込んで、参加者の驚きを作りやすいまとめ方でもあります。
「参加者が潜在的に感じていたこと」を顕在化する
3点目はやや上級者向けになります。参加者自身もまだ気がついていない思いを抽出し、提示するというまとめです。これはとてもパワフルな効果を場に生み出します。
たとえばですが、「海へ行きたい派」と「山へ行きたい派」で意見の不一致が続いたまま対話が時間切れになったとします。このままではとても雰囲気が悪いですし、なんのためにこの時間を設けたのかと、苛立ちを隠せない方もいることでしょう。
こんな時にファシリテーターが注力すべきなのは、対立を対立のままに終わらせないことです。具体的には、お互いの共通項を探して、上位概念での合意形成が得られないか模索することが求められます。
この観点から「海へ行くか、山へ行くかは決まりませんでしたが、両者のご意見を伺っていると、みなさん非日常体験を味わいたいんだなってことがよく分かりました」とファシリテーターがまだ参加者が声にできていない潜在的な思いを代弁したとしたらどうでしょう。
「そうか、私たちは非日常体験をしたいんだ!」と両派ともに同じ思いを持っているということが分かった途端、お互いの壁がさーっと消えてなくなるということは本当によくあります。一見対立しているようでも、根っこの気持ちが同じだと理解しあえれば、仲間になれるのです。
うまく対話が進んだ会でも、参加者がまだ言語化できていないことを提示できると、深い感動や納得が生まれます。例として、新商品の発売に向けて各部門間での調整を行う会議が円滑に終わった、というシチュエーションを挙げてみます。
こうした会議の終盤で、「各部門間の調整をありがとうございました。それぞれが自分たちでできる範囲を最大限に検討していただき本当に助かりました。今日の対話から私が感じたのは、これから私たちがリリースしようとしているサービスへの愛の強さです。みんな立場は違えど、このサービスにとても愛情を持っていることが感じられました。だからきっと、うまくいきます」なんて言えたらいかがでしょう。
参加者それぞれが、「そうか。私たちは、この商品にとっても愛情を注いでいるんだ」と潜在的に思っていたことを顕在化することができたら、そこから生まれるエネルギーは計り知れません。
まとめは日々の練習から!
私はワークショップのまとめ方は事前にデザインせず、当日の雰囲気を見ながら柔軟に対応するようにしています。最後のまとめ方を決めておくと、どうしても予定調和っぽく進行させてしまい、生のライブ感を楽しめなくなるからです。事前に決めておくのは、使える時間だけです。
これらのまとめは、練習すればするほどうまくなります。そのため、ワークショップの日だけこういう発想をするのではなく、ぜひ日常の会議や対話の際に、脳内練習を積んでみて欲しいのです。
いまの対話を一言でズバッと切り取るとしたら?
この成果を3点でまとめるとしたら?
いま参加者が潜在的に思っていること、まだ無自覚な気持ちってなんだろう?
と考えてみることをクセづけることで、ワークショップ本番の瞬発力が高まります。
ワークショップってどうしても本番を経験できる回数が限られてしまうので、こうして普段からワークショップにつながる思考を持っておくと地力が底上げされますよ!
過去にファシリテーションの機転を高める3つのトレーニングという記事も書いてみました。よければ合わせてご覧ください。
今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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