WORKSHOP LANDの相内洋輔(あいない ようすけ)です。先日『ワークショップ・デザイン 知をつむぐ対話の場づくり』の改訂版が出版されましたね! 私は予約注文していたので発売と同時に読了しました!
この本はワークショップデザイナーにとってのバイブル。冗談抜きに、芸工大生には卒業するまでに100回は参照して欲しいと伝えております。読むたびに新しい気づきや発見があり、こんなに実用的な本は他に知りません。
私は今回の改定を機に、久しぶりに隅々まで同書を読み直してみて、あとがきの素晴らしさを再発見しました。
私なりに要約させていただきますと、ワークショップ不信が招かれてしまっている一部の側面に対して、ワークショップデザイナーは志を高く、真摯に場作りに向き合わねばならないことを強調されているメッセージです。著者の魂のこもったお言葉に、私は心から共感しました。ぜひ原文を読んでいただきたいです!
当たり前の押し付けは嫌われる
私は、ワークショップを通じた相互理解や共創が健全に広がり、日本の良い文化として根付く世界を夢見ています。そして、そのために日々ワークショップに取り組み、情報を発信してきました。
過去に体験されたインチキワークショップが災いして、「ワークショップは大嫌いです」「あんなの意味ない」と思ってらっしゃる方は、少なくありません。
こうした思いをされる方が、少しでも減って欲しいなと思っています。
前置きが長くなりましたが、今日は『ワークショップ・デザイン 知をつむぐ対話の場づくり』のあとがきから一節を引用させていただき、ちょっと慣れてきたワークショップデザイナーに気をつけて欲しいことについて書きます。
それが、ワークショップの世界を当たり前として押し付けないこと、です。
ワークショップ慣れが強要を生みがち
早速、同書から引用させていただきます。
ワークショップに初めて接したときに、さまざまなアクティビティやお作法に、わざとらしさや気恥ずかしさを覚えた人が少なくないと思います。ところが、慣れてくるとそんなことはすっかり忘れ、「するのは当然」という態度を取りがちになります。気づかないうちにワークショップ文化に染まってしまったわけです。
こちらに書かれているように、ワークショップって、非日常的な体験をすることがよくあります。
たとえば年齢を問わずあだ名で呼び合い、敬語を使わない日があったり、コロナでだいぶ減ってしまったものの、身体的な接触を伴うチームビルディングのアクティビティがあったり、事あるごとに「今の自分の気持ち」を問われたり、気持ちをシェアしてくれた相手にメッセージカードを送りあったり etc…
基本的にワークショップは人間関係がフラットで、人との距離感も近くなりがちです。そのためこうしたアクティビティやルールに初めて触れる時、多くの人は気恥ずかしさを感じます。中には嫌悪感を覚える方もいらっしゃるでしょう。
ですが、ワークショップでの感動体験が増えるに連れて、各種のアクティビティやルールに愛着が湧いてくる、といった心象の好転が生じるケースはよくあります。
このこと自体はとても歓迎すべきことですが、こうした変化が起こった後は、少し注意が必要だなと思っています。
ワークショップが大好きになった瞬間ほど注意
どうしてかと言うと、元々嫌いだった物が好きに変わった直後って、その感動をみんなにも理解して欲しい熱が急激に高まって、ちょっと押し付け気味なコミュニケーションスタイルになってしまうことが散見されるからです。
その結果、ワークショップを自分で開催して、自分がイイと思ったアクティビティやルールを強制して、盛大に滑るという残念ケースをたびたび見てきました。
こういう失敗も大事ですが、この1回の体験で「もう絶対にワークショップには参加したくない」と思ってしまう方がいるのも事実で、それはお互いにとってもったいないことだと思うんですよね。
ですからワークショップを運営する方には、ワークショップに慣れていないと恥ずかしいことや戸惑うことが多いということを忘れずに、参加者にとって優しいデザインをしていただきたいなあと、私は思っています。
参加者を信じ、参加者に委ねる場作りを
具体的には、自己開示は参加者が「言ってもいいと思えるところまででOK」、アクティビティは参加者が「やってもいいと思えるところまででOK」というあたたかな空気感を形成することがとても重要です。
本音を言い合うのが当たり前、アクティビティは全力で参加するのが普通、となってしまうと、参加者の心は離れていきます。
このテーマについては、過去に「相手が言えること」を超えて自己開示を求めるのはNGという記事や、自己開示には「勇気」がいるという記事などを書かせていただきました。ご興味があれば、ぜひこちらもご一読ください。
まとめますと、ワークショップを運営する人には、参加者を信じ委ねるスタンスが欠かせませんです。
運営にちょっと慣れてくると、こうしたことを忘れがちになってしまい、参加者をコントロールしたい欲求が湧いてきてしまうのは自然です。ですが、その先に光はありません。
人と人がつながるために本当に必要なことは何か。
ワークショップを運営する方には、ぜひ胸に留めておいていただきたいポイントです。今日はここまで。
対話をもっとおもしろく。
相内 洋輔
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